年明け早々に大きな話題となったSMAP騒動ですが、1月18日に放送されたSMAPXSMAPにおけるSMAPメンバーの謝罪によって、グループとして存続していく方向が確定的となり、事態は収束しつつあるようです。
事の是非はどうあれ、この騒動からジャニーズ事務所のような同族会社にネガティブな印象を持った人も多いのかもしれません。同族会社をめぐるトラブルとしては、昨年、大塚家具の創業者大塚勝久氏と大塚久美子氏による経営権を巡る騒動が大々的に報道されたことも、記憶に新しいところです。
■同族会社の割合は?
このように何かと話題を集めがちな同族会社ですが、日本にはどのぐらい存在するのでしょう?
国税庁が毎年実施している「会社標本調査」では、同族会社と非同族会社数が資本金別に分けて調査されています。最新の調査結果である平成25年度の調査から、その割合を見てみることにしましょう。
資本金 同族会社 非同族会社 同族会社割合
〜100万以下 225,533 14,736 93.9%
〜1億円以下 2,241,698 80,938 96.5%
〜100億円以下 15,512 4,822 76.3%
100億円超〜 528 573 48.0%
計 2,483,271 101,069 96.1%
この表における同族会社とは、特定同族会社と同族会社の数を合算したものです。特定同族会社については、数も少ないため説明を省きますが、同族会社の定義は税法上定められており、特殊な関係にある会社の株主上位3グループの株式や出資金の合計が全体の50%を超えている会社となります。特殊な関係とは主に親族か、もしくは、それに類する関係です。
この定義における同族会社は、実際に取締役として経営していない場合も考えられるため、ジャニーズ事務所のように創業者やその一族が株式を十分に所有し、かつ、経営も行うオーナー会社と完全に同義ではありませんが、株主総会決議によって取締役を解任することが可能であることから、少数の人間に会社の方向性を左右される状況であることに変わりはないともいえるでしょう。
上記の前提を踏まえた上で表を確認してみると、資本金の増加に比例して割合は減少していますが、全体における同族会社の割合は96.1%と、圧倒的に同族会社の割合が多いことが分かります。資本金が少ない会社は、家族経営の会社も多く、同族会社が圧倒的多数を占めることに対する納得感はありますが、資本金が100億円を超えるような会社であっても、48.0%と過半数近くは同族会社であることに驚いた方もいるのではないでしょうか?
■同族会社に勤務する人数を推測してみると?
では、同族会社に勤務する人はどれぐらいいるのでしょうか?
総務省が実施している「労働力調査」によると、2014年度における15歳以上の労働力人口の年平均は、約6593万人です。その内、正規の職員・従業員として働く人は約3297万人となっており、ここから約300万人といわれる国家公務員、及び地方公務員の数を引いた人数を民間企業に勤務する人数と想定すると、同族企業に勤務する人数は、(3297万人-300万人)÷0.961=約2880万人と推測されます。この人数は労働力人口の約44%にあたります。
つまり労働者の内、ほぼ二人に一人は、同族会社に勤務していると考えられる訳です。
■問題は同族か否かではない
さて、これほどの人数の労働者に影響をもたらす同族会社ですが、同族会社という理由で問題が起こりやすいとは一概にはいえないかもしれません。
昨年起きた東芝における不正会計問題では、経営者に逆らえない風土が不正の温床になったとの指摘がなされていますし、2011年に発覚したオリンパスによる粉飾決算問題においても、経営陣の先送り体質が原因であったともいわれています。そして、どちらの会社も同族会社ではありません。
同族会社か否かが問題であるのではなく、適切な経営がなされているか、経営者をチェックすることが出来ているか否か、それが問題の本質なのかもしれません。
《参考記事》
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。 村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.ht
この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2016年1月21日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。