思わず「うまい!」と言われること
そして「何だ?これは」と驚いてもらうこと
例えば八寸の1つかにの茶碗蒸しにも料理人の独創性がのぞいていた
河田康雄は料理をエンターテインメントと心得ているのかもしれない
(河田)これは煮切りみりんです手前のほうが同じくアルコール飛ばしたみりんです
3年前サウナでふとひらめいたアイデアが今や自慢料理の1つに化けてしまった
かに味噌にみりんとしょうゆを加えて味を調えシャーベット状に凍らせたものを熱々の茶碗蒸しにのせていく
…っていう人がいたら「いよいよこれはホンマもんか」って自分でも思いますこんだけ喜んでいただけるんならいよいよ…
古都・金沢で名を馳せる懐石料理の店・つる幸
その2代目として18年前に厨房を預かった
飲食店情報サイトが発表するベストレストランでは石川県で3年連続第1位
料理ばかりでなくふだん着も意表を突いていた
49歳にして映画やアニメを偏愛している
あと…ほらみんなから…FBI…インターポールのあの上役から偽札の証拠持ってくるのにこれ以上もう捜査したらダメだって言われるんですよもう打ち切れって言われるんやけどルパン逮捕に鎌かけてすっとぼけてカメラの前でやるのがあそこが大好きです青のりちょっとだけのせえ…で俺今手がしけてるからほいで糸花とめてそれでいっとけ
自他共に認めるオタクぶりは料理に対しても発揮され常連たちを喜ばせていた
金沢駅なんかそんなとこがあるんですけど
自分が好きなものを出すのが河田流
大の肉好きは地元の能登牛にも工夫を凝らす
厚みのある切り身をすき焼き風に調理し肉によく合うという柿の器に盛りつけた
山椒と西洋わさびがアクセント
好きが高じて作り上げたカレーは雑誌主催のお取り寄せランキングでカレー部門のグランプリも獲得している
それはとことん料理を愛し楽しむ者だけがたどりつく境地だろうか
北陸新幹線の開業で金沢はグンと近くなった
北陸の小京都には今かつてないほどの観光客が押し寄せている
だが暖簾を守る2代目の日常は変わらない
毎朝7時過ぎには市場に向かい食材の仕入れ
おはよう
(魚屋)おはようっす今日はどうや?近江産ええのあるかい
(魚屋)地元のやつ…ああこれも元気やこれでええ今日は…うんうんこれもらうよだからどちらかというと…紫のカリフラワーちょうだいありがとうございます
和食ではあまり使われない素材も気に入れば料理に取り入れてきた
市場から戻ると早速一日の段取りを組み立てる
仕入れしだいで微妙に変化する料理
本人にしか読めそうにないメモにコースの流れが記されていった
新幹線の影響で県外からのお客も増え予約は一層取りにくくなったという
板場には若い職人が5人
朝から繊細な仕事に励んでいた
彼らの手元には絶えず河田の視線が注がれている
この日もナマコの下処理を任せた若者に思わず眉をひそめた
分かるやろお前こんなもん
(店員)すみませんすんませんじゃないよ理由を言えいやそんな問題じゃないよもういい仕事したないんやったら辞めろお前もうそんなもんお前そんな横着するんやったらあぁ?
厳しい叱責は日常茶飯事だ
バカなやつホント
どんな細部もおろそかにはしない
その丁寧な仕事から意外性に満ちた極上の味が生まれている
宴会の準備を進めているさなかのことだった
(仲居)福の間今日…何のお祝いかちゃんと聞かんとダメよこれ聞いた者は何やってんだ結納?…結納町田…はい今出してます
結納と分かれば飾りつけもメニューも変わってくる
せめて福の間が何のお祝いかぐらい結納とかそんなん外しちゃいかんやんちゃんと聞かんとバカ野郎だなホント
八寸の器を急きょおしどりに変更
仲むつまじくという思いを込めた
え〜っとほんなら…
(店員)紅白は用意してないです用意してない?いっかまぁまぁスッポンもカメだからなお祝いはお祝いだけれどもう〜ん何やったろうかな
紅白とは大根とにんじんを使う椀物を指す
だがあいにく準備はない
メークイン今…おいメークイン出して
とっさに献立を組み替えた
お客に合わせてメニューをアレンジするのも河田の気配り
揚げ物のえびは衣にじゃがいもを使って華やかさを演出する
結納の席にふさわしい紅白の水引も用意した
焼き物には加賀の宴席に欠かせない伝統料理うの花を甘鯛で包んだけんちん焼き
鯛は「めでたい」に通じる
えびに託したのは腰が曲がるまでという長寿の祈りだった
お願いしま〜す
(仲居)は〜い
お客たちも頬を緩めるに違いない
もてなしの神髄
加賀料理の正統に加えるひと手間ひと手間
王道を踏まえてこその傾奇が心地よい衝撃を呼ぶ
そのスタイルは先代である父親譲りかもしれない
引退はしたが84歳の今も厨房をのぞくのが日課だった
うん見とればね
(三朗さん)僕はどう評価されてんやろと…
河田には父・三朗さんの味を真似ようとしてもがき苦しんだ時代がある
三朗さんはかつて京都の名だたる料亭から弟子の指導を任されたほどの料理人
自身も京都で修業を重ね超一流の腕を手に入れた
金沢に暖簾を構えて天才とも革新派とも呼ばれてきた人物だ
10年前河田は父を真似ることをやめ基本のだしから見直したという
するとなぜか…
先代の料理に似てきたと言われ始めた
ハハハハ…うんそんな感じやと思う何かお決まりごと…そんなもんちゃいます?
臆さずに西洋料理の食材を取り入れるのはなにも奇を衒ってのことではない
トリュフを魚のすり身と合わせて揚げれば日本料理に新たな香気が加わる
それを発見したからだ
和食の可能性を広げたい
赤飯にのせるキャビアはもち米の味を引き立たせるという
周囲を驚かせたのがたっぷり4日を費やして作り上げるお取り寄せのカレーだった
1日かけて取った鶏ガラと野菜のだし汁に伊勢えびを丸1日煮込んだスープを加える
だしの取り方ひとつにもこだわりがあった
だが…
何でもそうやけれどもこんなもんでもそうやしあれでもそうやけれども必ず「はいこれで決まり」って言って決めるやろ俺そこに置いといたやろうが一瞬ちょっと自宅に行ってきただけやろなぁ?ほんならお前いくら後で漉しといて言われたって味も…これで決まったぞのひと言もないのに勝手に決めて勝手に漉すやつあるかいお前アホかお前は
河田のチェックなしにだし汁を漉してしまったのでやり直し
カレー作り3日目は場所も変わってなぜか外へ
(スタッフ)何で厨房でやらないんですか?
作業は向かいのビルで続くらしい
(スタッフ)ここはどういう場所ですか?ここは従業員の社宅寮になります
研究を重ねて編み出した比率で2種類のカレー粉をブレンド
30分ほど炒めるとえも言われぬ香りが立ち上ってきた
レシピを確立するまでにほぼ3年
もちろんこのカレーも日本料理の基本を踏まえて味に深い奥行きを持たせていた
さあいくかほんならちょっとこの辺取ってちょっと脂肪の塊の…
素材のうまみを宿しただしに赤味噌を溶き入れれば味は和食の精妙をまとい出す
高級料亭がなぜカレーか?…と初めは批判もあったそうだ
だが河田は信念を曲げなかった
つる幸の2代目として絶対の自信があったから
完成すれば全員総出で袋詰めに取りかかる
一度に作れるのは100食分まで
今や出せばたちまち完売の人気商品だ
次男坊です
店に遊びに来ていたのは…
「おはようございます」は?昌輝「おはようございます」は?ここから…ここまで
(スタッフ)誰の?すんませんあんまり片づける時間なかったし
自宅の部屋もまたオタク魂にあふれていた
(スタッフ)特に何のフィギュアが多いんですか?「ONEPIECE」かな?これ永井豪さんがうちに…フードピアでお呼びした時にサイン入れてもらったんです永井豪さんに
(スタッフ)すごい…絵が入ってる
次々に現れるスカジャンが50着近く
趣味も仕事も半端ではない
「エヴァ」これ「ガンダム」です
1966年金沢に生まれ厨房に立つ父の背中を見て育った
長男にとって店を継ぐことは半ば宿命だったのだろう
アントニオ猪木に憧れ一時はプロレスラーを夢みたこともあったそうだ
包丁さえ握ったことがなかった青年は17歳で大阪の名店に弟子入り
自分なりの献立を夢想する日々だった
大阪で修業してる時一日一日献立書いてた自分でだから変な献立いっぱいありますけどそれってものすごく今役に立ってますねおぼろげに独創力のある料理人になりたいなって多分思ったんやと思うんですよね
河田のオリジナリティーはコースを締めくくるデザートにまで光っている
12月の終わり
暖簾を下ろした店で大掃除が始まっていた
長く働いている仲居さんたちが言う…
何でもないことが
ネット社会ではいやおうなく匿名の評価にさらされる
でもだからこそ…と2代目は背筋を伸ばしていた
年末恒例のお節作り
一点一画を忽せにしない料理を詰め込んで一年は暮れていった
まだまだにぎわいを増し続ける金沢
夏にはあの「ミシュラン」から北陸版が出るのだという
そう聞けば河田の血が騒ぐ
新年早々新作に取り組んでいた
猪木さんの延髄斬りみたいにお決まりみたいなのもちょっとよくないんで8時45分になったら延髄斬りが出て「水戸黄門」の印籠じゃないから…っていうような技じゃなくて何か一撃必殺みたいなあれがもうちょっと欲しいですね何やろ?それこそルー・テーズのバックドロップみたいな技が欲しいです
あわびを使った新作に取り組んで河田康雄はひとり何やらほくそ笑んでいた
傑作誕生の予感があるらしい
まずはあわびの切り身をソテー
加賀の名産・肉厚なしいたけにあわびの肝のソースを塗った
そこにたまねぎを敷き先ほどのあわびそしてえびをのせる
パイ生地に包んでオーブンへ
無論「ミシュラン」を意識していた
よう分からんけど要はあんまり…何なんやろ?
焼き上がったパイに添えるのは能登牛のローストビーフ
河田流にいえばこれはもう卍固めだろうか
どないしよう…めっちゃうまいどうする?改善する必要もない
どんな相手もギブアップだ
辞めてほしくて雇ってんじゃねえよ
星が人生を変えた
世界一のラーメンは…
つまんないんすよ
どこへ行く?
2016/01/17(日) 23:15〜23:45
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【河田康雄/金沢に旨いものあり!“オタク料理人”が追求する日本料理!】
料理人/ 河田康雄▽「食べログベストレストラン1位」に3年連続で選ばれた、業界でその名を知らぬ者はいない金沢の懐石「つる幸」店主の豪華な新作料理誕生の瞬間に迫る!
詳細情報
番組内容
河田の料理は「伝統が息づく中に、サプライズの味わいがある」と評され食通たちを虜にしている。日本料理にフォアグラやトリュフを取り入れたり、カニ味噌をシャーベット状にして温かい茶碗蒸しと組み合わせるなどの斬新なアイデアで日本料理に新風を吹き込んでいる。そんな河田はアニメやフィギュアを愛する、好きな事はとことん突き詰める“オタク”でもある。今年「必殺技にしたい料理」と力を込める新作料理誕生の瞬間に迫る。
プロフィール
河田 康雄/料理人
1966年石川県出身の49歳。
「つる幸」創業者の父・河田三朗は京都の有名料亭などの名料理人を育てた鬼才。
幼少より父の姿を見て育ち、高校卒業後大阪の「味吉兆」で7年間修行。
1994年若干28歳でTV番組「料理の鉄人」に出場し鉄人・道場六三郎との“あんこう対決”で話題に。
1999年父の後を継いで料理長に就任。
2012年から3年連続「食べログ」の石川ベストレストラン1位に。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】オルタスジャパン
関連公式URL
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おことわり
番組の内容と放送時間は、変更になる場合があります。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – グルメ・料理
福祉 – 文字(字幕)
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