地球ドラマチック「解明!ネコの不思議」 2016.01.18


わがままでちょっとクールで愛らしい。
人に飼われていてもネコには大昔の野生の名残があります。
人には理解できない奇妙な行動もその一つ。
ネコは楽しみを見つけるのが上手なんです。
愛嬌を振りまく一方時には野生的なハンターになります。
鋭い爪で獲物の急所を狙います。
謎だらけのネコの行動の秘密に迫ります。
家では飼い主よりもネコが王様の場合もあるようです。
ネコは時に私たちを試すような行動をします。
まるで私たちがネコを知っているよりもネコの方が私たちをよく知っているかのように。
困った行動ですが特に悪意があるわけではありません。
「悪いネコ」なんて存在しません。
飼い猫が家の中でする事には全てネコなりの動機があります。
部屋のカーテンをよじ登るのも家具で爪を研ぐのも野生動物としての名残です。
爪研ぎや縄張りのマーキングには目的があるんです。
たとえ家の中でも縄張りをおろそかにはしません。
ネコはひっかく生き物なので高級家具志向の家には向きません。
ネコは足の裏の臭腺から臭いを出し自分がここに来た事を伝えます。
更に尿も自分の名刺代わりです。
自分の臭いをまき散らすのがネコ本来の習性です。
自然界での流儀を律儀に守り続けるネコ。
ネコのDNAに組み込まれた野生の本能によるものです。
野生の本能が飼い猫をやっかいな行動に駆り立てます。
(鳴き声)気位の高いネコリリー。
常に攻撃的で飼い主も少々手を焼いています。
こんにちは。
いい子ね。
不安なの?大丈夫よ。
口をなめて尻尾をパタパタしていますね。
人に囲まれて安心できないからです。
リリーは尾で何を語っているのでしょうか。
トラは尾を振って相手に警告を発します。
「我慢の限界だぞ」という意味です。
(うなり声)
(ミシェル)恐怖のスイッチが入り攻撃性をむき出しにしています。
今にも飛びかかりそうですがこれは自分の身を守ろうとしているだけです。
リリーは悪いネコではありません。
子ネコの頃仲間に接する事が少なく社会性を身につけられなかったネコがこうなりがちです。
野生のネコ科動物のように神経質で警戒心が強いんです。
ネコがなでられるのを嫌がる時のサインがあります。
(威嚇する声)シャーッと威嚇しヒゲが広がっていたら要注意。
固まったように緊張しているネコをなでるのは逆効果です。
なでるのをやめてみて。
(うなり声)このうなり声は警告です。
近くにネコが寄ってきた時などに発します。
「近寄るな」って?ええ「構わないで」って言ってるの。
そろそろ限界みたいね。
(鳴き声)大丈夫よ。
ああ逃げちゃった。
一旦恐怖のスイッチが入ると落ち着くまでに時間がかかります。
鳴き声ヒゲや尾の動きは全てネコにとって言葉に代わるコミュニケーションの道具なのです。
ネコは好奇心の強い動物です。
いろんなものに首を突っ込みたくてたまりません。
自分では抜け出せなくなる事もあります。
冒険に失敗は付き物です。
ネコ科の動物にしては珍しく水で遊ぶ事があります。
(ミシェル)特に蛇口から流れるキラキラ光る水などは気になるようです。
ネコは本能的にきれいな水場を探しているのです。
野生のネコ科動物は獲物の死体のそばで水を飲みません。
恐らく衛生的ではないからでしょう。
飼いネコも実は食べ物から離れた場所で水を飲むのが好きなんですよ。
ネコは身の回りにある物の調査を怠りません。
獲物を探し仲間と敵を識別するためです。
しかし十分にエサをもらっている飼いネコは本来獲物であるものに食欲を感じなくなっている場合もあります。
ネコの行動は本能によるものばかりではありません。
何を敵と思うかは母親から教わる事なのです。
生後間もなく子ネコを母親から引き離すと怖いもの知らずになる事もあります。
ネコの行動には人間を困惑させるものもあります。
イジーはベテランの母ネコ。
3度目のお産を終えたばかりです。
子ネコが産まれるとイジーはすぐに胎盤を食べ始めました。
(ミシェル)メスネコが出産後すぐに胎盤を食べてしまうのは胎盤の臭いをかぎつけて捕食動物が子ネコを襲うのを避けるためなんです。
母親がいなければ生まれたばかりの子ネコは生きていけません。
生後3週間は目が見えず母親に頼りきりです。
イジーは外に飛び出した子供を巣に戻します。
子ネコは体温調節ができないため外気にさらされると命を落とす危険性があります。
しかし数匹でまとまっていれば温まる事ができます。
5週間たつと子ネコはもうじっとしていません。
全てのネコ科動物に見られるこうした遊びには重要な目的があります。
(ミシェル)遊びは狩りの腕を磨くよい機会です。
獲物に忍び寄り気付かれずに後を追ったり飛びかかってかみついたり…。
いろんな技を仲間との遊びの中で何度も繰り返し練習しているんです。
ライオンやトラのようにネコも肉食動物です。
獲物を取る必要がなくなっても狩りに必要な武器はネコの体に備わっています。
ネコの鋭い聴力はネズミなどの高周波の鳴き声を聞き分けます。
自在に動く耳は音の方角を突き止める事ができます。
ヒゲは空気の流れを察知し獲物の位置を探る働きをします。
暗闇に強い目。
ネコの眼球内には反射板のような組織があり網膜に当たる光の量を増幅させる事ができます。
そのため真っ暗闇でもネコにとっては薄暗い程度です。
そして優れたジャンプ力。
体長の6倍の距離を跳ぶ事ができます。
ネコが誤って落下する事はほとんどありません。
塀の上では尾で巧みにバランスを取って歩きます。
しかしたまには足を踏み外します。
そのような場合も瞬時に体を回転させて常に足から着地します。
背骨がヘビのようにくねっています。
柔らかな肉球としなやかな関節がクッションのように衝撃を吸収します。
ビルの20階から落ちて無傷だったネコもいるほどです。
これら全ての能力が強い捕食動物を生んだのです。
ネコは捕食動物の武器を全て持っています。
鋭い爪で獲物を押さえつけ牙で相手の首にとどめを刺します。
科学者によればアメリカではネコが一年間にしとめる鳥や小型哺乳動物の数は10億を超えるといわれます。
家に居てもネコは狩りへの衝動を失っていません。
ネコが窓の向こうに鳥を見つけ興奮して口を動かし音を立てる事があります。
獲物をかみ殺す動作の代わりです。
鳥を食べようとして無意識にかむ動作をしているのです。
必要がなくても獲物を見れば追いかけ回します。
獲物を追う衝動はネコにしみついた本能です。
例えば庭で一羽の鳥を捕まえた直後別の鳥が現れたとします。
するとネコは飛んでいる鳥をまた追い始めます。
狩りが済むまで食事は後回しです。
動く物は何でも獲物。
昆虫リスそしておもちゃまで。
しかしネコにとっては遊びではありません。
狩りは常に危険と隣り合わせ。
息絶える寸前の獲物が最後の攻撃を仕掛けてくるかもしれません。
そのためネコは獲物を弄び弱らせてからとどめを刺します。
最近では家の中だけで飼われているネコも多くいます。
しかし自由に外に出られるネコは家の中とは別の顔を見せます。
一体どこで何をしているのでしょうか。
イギリスのある町で飼いネコの行動追跡調査が行われました。
飼い主も知らないネコの空白の時間が明かされます。
首輪にGPS発信機付きカメラを取り付けました。
さあ行っといで。
カメラが映し出すのはネコの目線での景色です。
ネコが出はいりしそうな場所には暗視カメラを設置し夜中の撮影も可能です。
この日は2匹のきょうだいにカメラをつけました。
1匹目がネコ用のドアを華麗にくぐり抜けて出発。
2匹目は…くぐり抜けるのがあまり得意ではありません。
自然界の仲間と同様にネコは夜行性のハンターです。
おなかがすいていなくても辺りにいる動物を常に探ります。
夜遅くまで外をさまよっていると時には危険な相手に遭遇する事もあります。
獲物を狩る習性を持つネコがなぜ人間に飼われるようになったのでしょうか。
私たちの身近にいるネコはイエネコと呼ばれます。
イエネコのDNAを調べれば進化の道筋をたどる事ができます。
私たちは中東アジアアフリカなど世界各地に出向きネコのDNAサンプルを採取しました。
そしてDNAの特徴を分類した結果イエネコの祖先を特定したのです。
研究によって全てのイエネコの祖先は「リビアネコ」と呼ばれるヤマネコの一種である事が分かりました。
およそ1万年前ヤマネコの一部が人間のそばで暮らし始めイエネコの祖先となりました。
イエネコの祖先は現在のイラクトルコシリアの辺りにいたヤマネコでした。
「肥沃な三角地帯」と呼ばれ人類が早くから農耕を始めた地域です。
農作物を貯蔵し始めると家の周りにネズミが増えます。
恐らくネコは獲物であるネズミを求めて近づいてきたのでしょう。
そのうちに誰かの膝にひょいっと飛び乗ったのかもしれません。
(ライアンズ)ネコが他の家畜と違うのは自ら人間に近づき共に暮らし始めた点です。
ネコの方が人間をしつけ自分たちの世話をさせているのかもしれません。
自然界の捕食動物でこれほど人間と親しくなったものはほとんどいません。
ネコには優れた適応力が備わっているのです。
狩りの本能を持ちながら人からエサをもらう事に慣れ人との接触や自然界とは異なる騒音にも適応しています。
とても柔軟な適応力です。
すばらしい。
ネコは人間に適応したばかりでなく人間のそばにいるのを好んでいるようです。
仲良くね。
野生のネコは少しずつ人間と打ち解け自然界にいた時とは異なる環境や役割に適応してきました。
私たち人間はネコとの出会いによって何を得たのでしょうか。
あるキャットショーの会場です。
大型のネコのメイン・クーンです。
見て!小さな尻尾。
200匹以上のさまざまな品種のネコが参加しています。
しま模様と額にアルファベットの「M」のような模様があるの。
この品種の中では毛が長いですね。
人がネコに惹かれる理由はさまざまです。
この子はメイン・クーンです。
イヌみたいなところが好きなの。
まるでネコの毛皮を着たイヌね。
どこかにチャックがあるんじゃない?どこなの?人間の好みによって改良を重ねられてきた現代のイエネコは姿ばかりでなく性格もさまざまです私にべったりです。
寝るのも一緒。
かわいくてたまりませんね。
この子は賢くて人間が大好き。
私が部屋に入って座るとすぐに膝に乗ります。
ネコを喜ばせる事に夢中の人々。
ところでネコの方も驚くべき方法で私たちを喜ばせようとする事があります。
マイロはとてもハンサムなオスネコです。
この子には他のきょうだいにはない優しいところがあるんですよ。
マイロは家族に贈り物をします。
(飼い主)マイロだけの独特の習慣ですね。
外に出ると必ず長い葉っぱを持ち帰るんです。
そして私たちに見せようとして大声で知らせます。
飼い主にお土産を持ち帰るネコは少なくありません。
うわぁ…大きなヘビね。
すごく立派ね。
これはネコの愛情表現なのでしょうか?実はネコのこうした習慣は野生時代の名残にすぎません。
取った獲物を人に見せるためではなく自分の巣に持ち帰っているんです。
自然界のネコ科動物が食べ物を仲間に持ち帰るのと同じです。
イエネコの誕生からおよそ1万年。
その間ネコは人とのつきあい方を学び続けてきました。
人との絆を築く学習は生まれた瞬間から始めなくてはなりません。
(ミシェル)生後数週間の時期に人と触れ合ったかどうかがネコのその後を左右します。
あまり人に接しなかったネコの中には問題行動を起こすものもいます。
小さいうちに人に慣れていなかった事が原因です。
ママを呼んでる。
よしよし。
早いうちに人と触れ合う事が人とネコの関係を築く鍵ですが子ネコは最初から人間を好きなわけではありません。
一見人間に懐いているような行動もその理由はちょっと違うようです。
ネコが人の膝の上に座るのは子ネコ時代に戻る一種の退行です。
母ネコに体を温めてもらっていた時のように人の膝で暖をとっているのです。
一種の退行と見られるネコの行動は他にもあります。
ネコがあなたの体をこのようにもむのはあなたを母ネコのように思っているからです。
お乳を飲む際前足でもんで母乳を出そうとした時の名残なのです。
なでられるのが好きなのも幼い頃に関係があります。
ネコは人間になでられると母ネコの舌でなめられているように感じるようです。
子ネコの頃に感じた母ネコの舌の感触がよみがえるのでしょう。
喉をゴロゴロ鳴らす理由は?ネコが喉を鳴らすのは本来母ネコと子ネコの間だけの事です。
それ以外で行うのはやはり一種の退行です。
子ネコは母ネコだけに聞こえる音でコミュニケーションを取る必要があります。
他の動物に音が聞こえたら襲われますからね。
あなたのネコが喉をゴロゴロ鳴らしているとしたらそれは母ネコと一緒の気分に浸っているしるしです。
私たちはネコの相手をしながら知らず知らず飼い猫を子ネコに引き戻しているのです。
(鳴き声)飼いネコはよく鳴きます。
飼い主に対して20種類以上の鳴き声を使い分けている事もあります。
ネコが鳴くのは仲間同士より人間といる時の方が多いんです。
実際ネコは人間に呼びかけるために鳴くようになりました。
人間の反応を引き出そうとしているんです。
ネコにとって人の家は騒がしい場所です。
ネコは人間がおしゃべりな動物だと認識しています。
人の家で暮らすネコは何かを主張するには叫ばなくてはいけないと知りニャーという鳴き声の音量を上げます。
ニャーという声で注意を引き「エサをくれ!」と叫ぶのです。
鳴いても効き目がない場合更なる行動に出るネコもいます。
子供の頃はイヌを飼っていましたが何を考えているのか分からない事が多かったんです。
でもこのシャムネコの場合は何を考えているのか見れば大概分かりますね。
(飼い主)サミュエル。
(鳴き声)なに?
(鳴き声)どうしたいの?ネコと人間はある種のコミュニケーションを取れるようになりました。
よくネコ同士が尻尾をピンと立てて挨拶していますがこれと似たような事を人間もネコとしています。
私たちがネコの目線に合わせて体を下げると下ろした腕がちょうど挨拶の尻尾の代わりになります。
このようなちょっとしたしぐさでネコは人間からの挨拶を理解しているのです。
ネコもまた人間に体でさまざまな事を伝えています。
行動のパターンやサインを知る事は大事です。
目や耳の動き尾の振り方など全てです。
このトラは小さい時にペットとして売られました。
ある男性がトラの爪を全部抜き取ってしまえば自宅でも飼えると思って購入したのです。
でも大きくなるにつれて手に負えなくなってきました。
不安になった飼い主は手放そうとして処分先に困り私たちに委ねたのです。
この施設にはトラの他にも保護されたライオンやピューマボブキャットヒョウなどがいます。
飼いネコと野生のネコ科動物はよく似ています。
私たちにとってネコは小さなトラです。
体重270kgのトラも行動の原則はネコと変わらないようです。
ボールや箱で遊ぶのは大好きですね。
ネコは中に入ったりひっかいたりして遊びますがトラの場合は一撃で破壊します。
音を立てずに後をつけたり獲物を追う様子もそっくりです。
ただしかまれたら飼いネコとは訳が違います。
この子たちにかまれたら腕や命を失う事さえあります。
家でトラは飼えません。
しかしネコがいれば小さなトラと毎日つきあうようなものかもしれません。
イギリスのある町で行われた飼いネコの行動追跡調査。
GPS発信機付きカメラでネコの行き先を詳しく調べました。
ほらここまで移動している。
パッチは13歳のメスネコ。
人間でいえばおばあさんですがまだまだ活発に外を歩きます。
仲間と秘密の集会でも開いてるんじゃないかしら。
自然界では縄張りを歩いて自分の臭いを残す事が欠かせません。
食糧を確保し子孫を残すための重要な行動です。
十分な食糧と安全な住みかを与えられた飼いネコも縄張りに対する意識を本能的に持っています。
パッチの縄張りは自宅の裏口から最長で90mほどの小さな一帯である事が分かりました。
パッチは臭いづけをしたりひっかいたりしてここが自分の縄張りである事を主張します。
他のネコの結果も重ねると付近の飼いネコの勢力図が浮かび上がります。
どの縄張りも飼われている家が中心です。
最も驚きの結果を示したのは長い葉っぱを持ち帰るオスのマイロでした。
(テイバー)すごいな。
これを見て。
マイロが世界制覇を狙っています。
マイロの縄張りは大通りをいくつかまたぎ家40軒分の広大なものでした。
メスのパッチの縄張りと比べると20倍もの広さがありました。
標準的な飼いネコに比べてマイロの縄張りは広大です。
これはある意味ストレスを感じているせいなんです。
個体数が多い事によって生じるストレスです。
(テイバー)付近にネコが多いと遠くまで行ってストレスを解消しようとするんです。
一人になるため?ええ。
ネコ同士の緊張からしばらく逃れたいと思うんでしょうね。
孤独を愛するマイロは途中出くわしたネコに「向こうへ行け」と主張しそれでも動かない相手を実力で追い払っていました。
(ネコ同士の争う声)ネコ科の野生動物のオスはできるだけ多くのメスと交尾しようとします。
飼いネコも同じで時には争いになります。
縄張りの広さに関係なくネコの城は飼い主の家。
ここを守る事が一番重要です。
しかしもし家の中に複数のネコが居たら?この家では2匹の若いオスが常に交戦状態にあります。
相手より優位に立とうとして常に競い合っています。
家が狭いため2匹が顔を合わせずにいる事は困難です。
多くの家はネコの縄張り意識にあまり配慮していません。
飼いネコ同士がうまくいっていない場合水飲み場やエサ置き場トイレの場所などで縄張り意識が表面化し争いになりがちです。
(飼い主)こら!いいかげんにしなさい。
よく起きるのは部屋の中で一番高い場所の取り合いです。
高い場所を陣取ったネコは他のネコより強い立場に立てます。
相手に上から飛びかかる事ができますしより遠くまで見渡す事もできます。
相手を見下ろし自分の方が優勢だと主張するんです。
相手より有利な陣地を得る事が必勝の戦略。
一方群れで生きる事を余儀なくされたネコもいます。
イエネコでも人に飼われていないネコがいます。
野良ネコです。
ローマには30万匹の野良ネコがいるといわれます。
限られた面積に密集していると常に居場所をめぐる小競り合いが起きます。
完全な野生でもなく人に慣らされてもいない野良ネコは二重性をもつ動物です。
人が住む社会の片隅に独自のやり方で縄張りを築いています。
およそ1万年前野生のネコの一部は人間と共に生きる道を選びました。
しかし野良ネコは少し違う生き方をしています。
人に飼われていたネコでも必要に迫られれば野生を取り戻します。
すぐに野良ネコとして生きていけるようになるんです。
これはネコ独特の能力ですね。
野良ネコの祖先は何らかの事情で人間のそばを離れた元飼いネコなのでしょう。
野良ネコの行動は数千年前人間社会の周辺にいたネコを彷彿とさせます。
ある場所で野良ネコに定期的にエサを与えている女性がいます。
ネコの方もエサの時間をよく心得ています。
しかし飼いネコとはどこか様子が違います。
(鳴き声)おなかすいた?
(鳴き声)野良ネコはエサをもらう時に鳴きません。
飼いネコのように人間との絆を持たないため鳴き声で訴えかける事をしないのです。
おなかをすかせた他の捕食動物に感づかれないためにも静かに食べるのが野良ネコのしきたりです。
集団で暮らすネコは群れのライオンのように集団への帰属意識を持っています。
互いになめ合い毛づくろいするのは同じ臭いを共有する事で仲間意識を保つためです。
飼いネコも同じ行動をします。
(ミシェル)ネコはよく互いをなめ合います。
相手との関係を近づけ絆を築き集団の臭いを形成するためです。
嗅覚に優れたネコは同じ臭いの者を嗅ぎ分けて仲間意識や親愛の情を確かめ合うのです。
飼いネコに体をなめられたらそれは同じ仲間として認められたしるしかもしれません。
ネコの社会では臭いは行動の道しるべ。
ネコは毎日いい臭いと悪い臭いをかぎ分けながら暮らしています。
メスが発情した時の臭い。
これはいい臭いです。
同じ集団の臭い。
これもいい臭いです。
しかしトイレのふん尿の臭いは極力隠そうとします。
トイレで砂をかける行動は本能的なものでふん尿の臭いが敵などに気付かれないようにしているのです。
このようにネコには残したくない臭いもあります。
現代の飼いネコは安全と寝床と食事を得る代わりに自然とは程遠い暮らしに適応する事を求められています。
野良ネコとマンションの最上階に住むペルシャネコの暮らしは全く違います。
生まれてから外に一度も出た事がないネコもいるでしょうね。
完全に室内で飼われているネコはネコらしい行動を学ぶ機会が限られています。
飼いネコにどんな暮らしをしたいかと尋ねたら何て答えるでしょうね。
少なくともネコは人と暮らすために相当妥協しています。
ネコの暮らしぶりの変化は健康状態にも表れています。
現代のネコは栄養や手入れが行き届き以前より長生きになりました。
そのかわり年齢に応じた病気が増えています。
かつてネコの医療は子ネコの診察避妊や予防接種が中心でした。
しかし今は糖尿病や心臓疾患腎不全など高齢による疾患が多く特に肥満は大きな問題です。
ネコはそもそも人間のように頻繁に食事をする必要はありません。
しかし飼い主はついつい自分が食べるからネコにも与えようとしてしまうのです。
そういう飼い主自身太りすぎの事も多いですね。
現代のネコの健康を左右するのはライフスタイルばかりではありません。
人間は理想のネコを求めるあまり遺伝子を操作してネコの身体的特徴を変化させるようになりました。
新しい品種が次々と誕生しています。
(ケビン)鼻がチャームポイントですね。
(飼い主)ええそうなの。
しかし愛くるしい特徴が問題の原因となる事もあります。
美しい毛並みや見た目ばかりを重視して交配すると生まれた子ネコに健康上の問題が生じる場合があります。
顔が平べったい品種のネコは目や呼吸器に問題を抱えがちです。
鼻が極端に低くされているからです。
ボタンのような鼻は自然界には存在しません。
人間に作られた品種の中には自然界に決して戻る事のできないものもいます。
(アーギン)100%デザインされたネコを作っています。
100年前のネコからは想像もつかない品種です。
体毛がなく足が短い奇抜な風貌のネコ。
バンビーノという品種です。
(アーギン)やりすぎだと言う人もいるでしょうね。
異なる品種を交配させ遺伝子の突然変異によって作られた品種です。
しかしこの奇妙なネコには熱烈なファンもいます。
この子が妊娠している姿は最高にかわいかったわ。
足が短いのでおなかが床をこするようになりセーターを着せてやりました。
おなかが冷たい床に触れたらいけないと思って。
(ケビン)極端に変わった風貌の品種を生み出す場合ある特徴にねらいを定め選択的に交配を行います。
しかしその過程で招かれざる客を呼び込む可能性もあります。
有害な遺伝子が伝わってしまう事があるのです。
バンビーノの繁殖にもそうした危険は付きまといます。
オスは全てバンビーノですが交配に用いるメスはスフィンクスという外見は似ていますが長い足の品種です。
というのもバンビーノだけを交配させた場合子ネコに重大な健康障害が生じる事が分かっているからです。
そうした危険は避けています。
注意深く繁殖され育てられるバンビーノはもはや人間に完全に依存しています。
野生のネコとは似ても似つかない存在に見えます。
本来ネコは狩りをして生きる動物です。
しかし人間が与えたエサを食べるという柔軟な適応力を発揮する事で繁栄してきたのです。
本物の狩りはしなくなってもネコ本来の性質は内側に秘められています。
ネコは小さなライオンです。
必要に迫られれば人間に頼らなくても生きていける能力を持っています。
たとえ家で寝そべっていてもネコは野生の本能を失ってはいないのです。
2016/01/18(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「解明!ネコの不思議」[二][字][再]

家具を傷つけたり、興奮してカーテンをかけのぼったり、時に飼い主を困らせる行動をとるネコ。実は野生のハンターの本能がそうさせているという。ネコの行動の秘密に迫る。

詳細情報
番組内容
1万年前から人間と暮らし始めたとされるネコ。研究者によるとネコは“小さなライオン”で、野生のハンターだった時代の本能を残しているという。狩りに備えて爪を研ぎ、攻撃前に尻尾を上げて左右に動かす。人間と暮らす中で、母猫にとる行動を飼い主にもとるようになり、今では20種類もの鳴き声を人に対して使い分けているという。ネコの夜のはいかいにも密着。なぜはいかいするのか、秘密に迫る。(2012年イギリス)再放送
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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2/0モード(ステレオ)
英語
サンプリングレート : 48kHz

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