IQOSなど”ヒートノットバーン技術”か、電子タバコか…?

昨年9月に売り出されてから、専門店などもちょくちょく目にするようになったフィリップモリス社のアイコス(IQOS)ですが、今年その安全性に関するレポートが提出される予定で、今後に影響を与えそうです。また電子タバコに注力するメーカーからは批判も。

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IQOSと、電子タバコの違い

IQOS(アイコス)は、フィリップモリスインターナショナル本社:スイス。以下PMI)が、昨年9月1日に発売しました。

従来の紙巻タバコや電子タバコとは違い、PMIの売上No.1銘柄『マールボロ(marlboro)』のヒートスティック™を、着火せず加熱することによって「灰も出ず、においも少ない、本物のたばこの味わい」を楽しむことができる”ヒートノットバーン(heat-not-burn)技術”により、健康リスクが大幅に低減されるだけでなく煙が出ず、灰が出ず、紙巻たばこ の煙に比べてにおいも少なくなっています」

電子タバコあるいはヴェイプも、専用のカートリッジに入れた液状の物質を加熱して気化させて吸引→蒸気(vapor)を吐き出す、という点では似ていますが、PMIによりますと、IQOSのスティックから排出される蒸気には環境への悪影響がないと謳っています。

これらはPMIが「喫煙関連疾病を発症するリスクを低減する可能性のある製品(Reduced Risk Products,RRPs)」の開発と、紙巻たばこと比較したリスク低減能力の科学的実証のために 20億ドルを投資して行ってきた研究開発及び、昨年8月のIQOS展開を発表するプレスリリースまでに行われた「日本とイタリアでの臨床テスト」における国際的な基準に照らし合わせた結果、発表されたものです。

浮かんだ疑問

PMIは、プレスリリースにおいて「有害および有害性成分の量は、紙巻たばこの煙に含まれる量に比べて大幅に削減されています」と豪語しています。

ただしニコチンは 低減の計算から除外しました」と注意書きがあります。

また、PMIが使っているリスク低減可能性を持つ商品の指標であるRRPsとは、現在「開発の様々な段階にあり、紙巻たばこの喫煙に比較して、煙の中にある有害性 成分への曝露が減り、最終的には疾患のリスクを低減するという訴求(claim)ができるかどうかを検証するため広範かつ十分な科学的な調査を 実施しています」とあります通り、いまだ実験段階であり「リスクの低減を実証するかどうかの検証が必要」ということ。

さらに検証結果を訴求する場合は、米国食品医薬品局(FDA)など当局による承認を必要とすることも併せて記載されています。

IQOSが2016年現在販売されているのは日本、イタリア、スイスのみ。ということは…?日本がPMIの安全性における”実験場”のひとつにされているとも言えますよね。

多くがヒートノットバーン技術に傾く中、電子タバコに固執するメーカーも

英国のタバコメーカーであるインペリアルタバコ(Imperial Tobacco Group plc.本社:英ブリストル)の研究者が昨年、このIQOSを試してみたところ、タバコに着火した時に起きる幾つかのプロセスが発生したことを確認したと発表。
IQOS使用後のスティックには、黒い沈殿物がたくさん付着しており、ゴミ箱のような臭いがした」と、インペリアルタバコの科学規制関連業務主任Steve Stotesbury氏。

この世から喫煙者を一掃するべく、ますます過激さを増す「反喫煙活動家」からの攻撃や、 公的健康機関による各種規制からタバコ産業の先細りを守りたい!という願いで利害が一致しているタバコメーカー間で、このような言葉狩りが行われることはごく稀なことなのですが…

現在、世界のタバコメーカーの多くが、ヒートノットバーン技術に移行しています。
例えば日本たばこ産業(JT)の子会社である
子会社の Japan Tobacco International(本社:ジュネーブ)は、2013年12月から、タバコの葉が詰まった専用の「たばこポッド」を電気加熱型のスティックで加熱して楽しむという、IQOSと同じような製品『Ploom(プルーム)』を販売しています。

そんななかにあって、インペリアルタバコは、このヒートノットバーン技術を注力しないことに決めた唯一のタバコメーカーでして、同社は電子タバコに望みを託しているのです。

例えば、IQOSが10の要素で危険性を軽減することができる」とすると、電子タバコは危険性自体を完全に排除することができる」と、インペリアルタバコ側は主張しています。
同社はダビドフ社同様、英国でPuritane”というブランド名のもと、電子タバコを販売しています。

しかしPMIは、「IQOSはあらゆる電子タバコよりも売り上げを上げる」という明確な自信があるようで、その理由として、IQOSがあらゆる電子タバコと比較して、通常のタバコを吸う感覚にかなり近いことを挙げています。
そして「インペリアルタバコが、IQOSのようなヒートノットバーン技術のリスク低減可能性を認識してくれてとても嬉しい。でも、自社の事業ポートフォリオにないからといって、この技術を甘く見ているのがとても残念」と反論しました。

ある経済アナリストは、今後5年間でIQOSは年13億ドルの利益を産み続けると予想しています。

PMIは今年、FDAにレポート提出の予定

PMIは、2008年から2014年にかけて行われてきた8つの決定的研究結果を、今年FDAに提出予定です。
PMIの研究者;Moira Gilchristは、350人以上のiQOS喫煙者において、IQOSがすばやく、決定的なリスク低減の事実を示した、と昨年ボローニャで行われた会議で報告しました。

電子タバコについては、米食品医薬品局(FDA)が2014年に電子タバコの18歳未満への販売を禁止するとともに、局による承認取得をメーカーに義務付けるなどの初の規制に踏み切ったこともあり、2015年度の売り上げが米国において急減しましたが、
今年提出される予定のレポートをFDAがどう判断するか?各国の製薬メーカーや、政府の指針にも多大な影響を及ぼすとされるFDAの判断がどう出るか。

今年、IQOSは大きな正念場を迎えることとなりそうです。

この動画について:IQOSはまだヨーロッパやアメリカでは売られていませんので、この方のように、日本で売られているIQOSを購入するようです。
見ていると、煙は普通に出ていますが…これが単なる蒸気なのかどうか…非喫煙者の私には判断できかねます。
この方はコメントの「普通のマルボロとのちがいは?」という質問に答えて、『IQOSは従来のマルボロに匹敵するくらいのニコチンレベルを保っている点が良い』とリプライ。
ただし、自分はリスクを引き受けた上で吸っていることを強調されています。(7:44)

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《参照》

  • 新時代、始まる。 革新的な加熱式たばこ「iQOS(アイコス)」順次全国展開-フィリップ モリス ジャパン株式会社(PDF・プレスリリース)
  • The case for RRPs-pmiscience.com
  • Philip Morris Device Criticized by Imperial Researcher-bloomberg.com
  • Phillip Morris (Marlboro) iQOS a flop?-dominantvapor.com
  • 「プルーム」「たばこポッド」(7銘柄)、2013年12月12日新発売(プレスリリース)-jti.co.jp
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