月曜ゴールデン 映画「のぼうの城」野村萬斎・主演 突飛な奇策に驚き、笑う! 2016.01.18



(兵)遅れるでないぞ!・
(兵)急げ〜急げ!遅れるでないぞ
(三成)殿殿!危のうございまする・
(家臣)お待ち下され殿殿本陣にてご覧になられませ危のうござる!
(秀吉)堅いな佐吉は崩れるかな紀之介
(吉継)万一崩れることあらば某が命に代えても殿の命はお守りいたしまする!どうじゃ正家は
(正家)案ずるには及びませぬ永楽銭にて八千貫文投じたこの築堤は微動だにせぬかとそれじゃこの世で不動の力を発揮するのは銭と見よおのれらにこれからそれを見せてやる決壊させよ!・
(兵達)オーッ!どうじゃ〜アッハッハッハ…佐吉佐吉しかと見よ!アッハッハッハッハ佐吉紀之介よこれだ俺もこんな戦がしたい俺はこんな壮大かつ豪気な戦がしてみたい
石田三成は
織田信長の死後
秀吉と共に天下統一への道を突き進んだ
そして秀吉の統一事業は
完成を迎えようとしていた
秀吉は関東一円を支配する
最後の敵対勢力
小田原北条氏の攻略に着手した
関東平野には
そしてその周りには
二十にも及ぶ
守りを固めていた
関白家は天下安寧のため三月一日をもって北条家討伐の軍を発するくれぐれも遅参なきようおうおうははッおう
(長政)殿下三成殿はまた後方にござりまするか?佐吉には一手の大将を任せる佐吉は二万の兵をもって北条の支城を攻めるよいかおのれらはわしと小田原まで行きこの上州・館林城に攻め入りこれを落とせ落とせば次に武州・忍城を攻めこれを叩き潰せしかし館林城は二千騎忍城に至ってはわずか一千騎の…佐吉よ石田三成に武勇ありと世間に示せさすれば連中も佐吉を重んじ豊臣家も一つにまとまる御意案ずるな所詮は田舎城よ二万の軍勢を見ただけで腰を抜かすわいハハッ忍城とは珍妙な城じゃ湖に城が浮かんでおる
(秀吉)浮き城とも言うそうなまこと水に浮くか試してみるか
こうして武州北部
現在の埼玉県に位置する
北条方の支城・忍城も
秀吉の攻撃目標に定められた
(丹波)あの馬鹿者どこ行きおったハッ!長親は通らなかったか?
(新助)のぼう様?この佐間口はお通りになっておられませぬがあの馬鹿見かけたらすぐに本丸に知らせよ長野口の者ども苦労正木丹波通るぞ
(門番)丹波様が通られるぞ
(子供達)うわッ・
(和尚)いい加減にせい何遍言うたら分かるんじゃ和尚和尚おう丹波長親知らぬか?のぼうか知らんなそれより丹波高僧に向かって馬上よりものを言うとは何事じゃのぼうと一緒に柿を盗んでおった頃のようにほうきで頭ぶっ叩いてやろうか口ではかなわんなハッ!今日は下忍村総出でたへえ爺の麦踏みじゃそこじゃろ麦ゃ可愛いやのぉなぜ踏みなさる麦こさ踏まねば萎れて育たん踏んじゃれ踏んじゃれ…
(たへえ)ちよ決してのぼう様と目を合わしてはならんぞ・
(ちよ)分かっております去年長野村が田植えを手伝われ三日かけて植え直したのを知っておろうああッ
(ちよ)ちどり
(ちどり)おい侍やることがないなら座ってないで手伝えう〜ん
(長親)そうかそう言われるとな手伝わないとなああ…じゃ頼んだぞおうやっとやっとせえのうわッ
(たへえ)のぼう様!痛たたた…少々ぬかるんでおった
(ちどり)しょうがないないや〜全く面目ない長親!どうッどうした丹波手伝うか?馬鹿者小田原北条家より使者が参っておる乗れ何しに来た小田原は?何を申しておる北条家に加勢するよう御屋形様に迫りに来おったのだ丹波様だ本丸の者ども苦労苦労長親
(靱負)長親殿どいてえいッあ痛ッあッすまんおおお見事正木様お見事よう避けられたやかましいぞ!靱負おのれこの火急の時に何を遊んでおるのだ隙あらば襲えと言ったのは正木の爺様の方じゃありませんか長親殿もこの程度のこと避けてくれなきゃ困りますよいや全く面目ない
(足軽)のぼう様忍城にも来ますかね関白の軍勢は来るさかつて上杉謙信が攻めた以上の軍勢でな大丈夫ですよ毘沙門天の化身にして戦の天才酒巻靱負がついてますから戦にも出たことねえくせしやがって・
(門番)通られるぞあッ
(和泉)よう丹波和泉どうだ皆朱の槍はよこす気になったか敵味方ともにぬしが武功一等だと認めればいつでもくれてやるくだらんことを何だと!え〜奥方はまた泣いて止められましたかないかにも女房の奴泣いて止めたが一喝すればおとなしゅうなり申したわ血と硝煙の渦巻くところこの柴崎和泉守は必ずや姿を現すでござろう
(氏長)うむ我ら北条家は関白と手切れと相成ったついては古法にのっとり支城の城主は早々に兵を率い小田原に入城されよとのお達しにござる承った我が成田家も用意整い次第入城致す御屋形様ちょっといいかな何じゃ北条家にも関白にもつかず今までと同じに皆暮らすことはできぬのかな何ッ!
(泰季)長親!この大たわけめ成田家が先君・長泰公以来存続できたのは誰のおかげか!詫びよ北条家の侍衆に詫びよ詫びぬか長親きえ〜い!申し訳ござりませぬこれは我が愚息にござりましてこの父に免じて平にご容赦をうむ兵数は古法により兵力の半数・五百騎を当主・氏長自ら率いて入城致す期日は本日よう申された早速小田原に知らせに参る御免!関白と戦かおのれら何を沈んでおる戦ぞ!関白は必ずやこの忍城にも兵を発する堀を深くし矢来を…うッ…うッ泰季殿泰季殿ご家老父上!
(口々に)泰季殿!父上父上ッどうしよう丹波父上父上ッ長親落ち着け父上〜いい加減にせんかうるさい長親父上あら泰季殿お迎えはまだでしたか?これ!母上・
(泰季)ああ御台かこの分では当分この奥に居座るおつもりですね幾多の戦場で数えきれぬほどの首を挙げた泰季殿が畳の上で往生するなど虫がよいというものですよハッハッハ…御屋形様早う出陣の支度をなされい我が兄・長泰公でもそうなされますぞ父上の話など聞きとうない御屋形様・
(家臣達)御屋形様御屋形様!
(甲斐)長親大丈夫だしっかりせいどうした?・
(靱負)あれは…惚れるんじゃねえぞ家臣の分際でああ見えてとんでもない武辺者だ一昨年の話よおのれは酒巻家の部屋住みだったゆえ知らねえだろうが姫はよ百姓の女房を手ごめにした家臣を討ち取った相手も家中に響いた手だれだったが一刀のもとに斬り伏せた《ヤアーッ!》
(靱負)百姓のために家臣を?討たれた家臣の一族は収まらねえ姫を討とうと息巻きやがったそれをどうやったか知らねえが黙らせたのがあの長親殿よそれ以来姫は長親殿に惚れぬいてらあ
(和泉)御屋形!
(靱負)御屋形様!御屋形なぜじゃなぜ我らが城に残らねばならぬ何とぞ靱負を陣にお加え下され考えあってのことじゃわしは関白に内通する御屋形様!うろたえるな小田原に入り次第わしは連歌の友山中長俊殿を通じ関白に内通の意を知らせるおのれらは関白の軍勢が攻め入れば速やかに城を開けよ一戦も交えず開城せよとの仰せにござるか左様じゃならば初めから関白には下ると決しておればよかったものを小田原に入城せずして天下の大名が納得するか北条家の庇護のもとにあった我らが義理を果たさず関白に下るなど誰が承知する一矢も報いず開城などできるか!そんなことゆえおのれらは連れてゆけんのだ勝てるのか?北条は天下の兵を敵に回すのだぞ忍城の兵・五百騎でそれを迎え撃つというのか構えてこのことは家中に漏らすな叔父上にも内密にせよ承知
(泰高)小田原の使者が開戦を伝えに再び必ず来るゆえ籠城の備えだけはやっておけよいな関白の兵の一人たりとも殺すでないぞ・御屋形様のお出まし〜・
(兵達)オーッ!
(氏長)出陣!オーッ!
(僧の読経)馬鹿らしい今更どうなされようというのだ何があった?
(文次)和泉様が兵糧米など入れずともよいと百姓に命じましたが酒巻様がならんと…それでこのざまか抜かぬなら作業に戻れ断るおい心配なかろう和泉に任せておけ
(和泉)それで戦の天才か笑わせるな武技のことなど話しておらぬ軍略の才じゃ!戦もせぬのに兵糧米を積みこむのがおのれの軍略か!戦をせぬじゃと?
(ざわめく一同)御屋形様は死んだぞ!たった今おのれらが亡き者にした今聞いたこと他言すれば命はなきものと心得よ
(ざわめく一同)隠せば噂は広がる全て話せばみんな分かってくれるさ甘い平気さ
(文一)戦がないとはまことにござるか?あのねえ…待て待て待てわしから話す御屋形様は小田原城に籠もられたが関白に内通する腹だ成田家は関白と戦はせぬただしそのことが北条家に露見すれば御屋形様の命はないそれゆえ皆籠城の支度を続けよよしいくぞおい作業に戻れ戻れ痛かったかな?わしは戦に出たこともないわしに場を与えよ天才の働きを見せてやるわ
(女達の悲鳴)
(秀吉)うむ有馬の湯に勝るとも劣らぬいずれ繁盛しよるぞここは御免御免・
(秀吉)佐吉お前も入るか遠慮致しまする正家兵糧米に滞りないか兵糧米でござりまするな兵糧米は二十万石ほど江尻清水の港にて各将に受け渡し済みにござりまする小田原城の阿呆どもは三月もすればわしが陣を引き払うと思うとる湯女物売りどもも住まわせ生涯城を囲み続けても飽きぬほどの陣に育て上げるおお目が洗われるようじゃ
(秀吉)佐吉よはッ今しがた合力の将どもの軍勢が着任したそれでは…
(秀吉)奴らを連れ館林忍に向かい出陣せよ御意はーきたこらやーとこせーよーやなーのありゃりゃい植えてしゃれ植えてしゃれ
(たへえ)のぼう様のぼう様手伝うか?いやいや関白に下ればのぼう様はどうなるのじゃ?さあなあッ百姓でもやるか
(すが)のぼう様そりゃ無理ですよせいぜい袴でもはいてうろうろするぐらいが能ですものちよそうなんだよなあ
(権平)り吉レロレロレロヤのぼう様じゃぞヒョロロンヒョロロンレロレロレロヤヒョロロンヒョロロンレロレロレロヤヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンまたこのようなとこで遊んでおったのか!どどどうした?「どうした?」ではない!館林城より使者が参った関白の軍勢が館林に入ったもはや忍城まで三里に迫っておる
(泣き叫ぶ赤ん坊)・
(源助)開けい!
(源助)注進!申し上げます我が先鋒が到着するや館林城は城を開けたとのことにございまする
(どよめく兵達)・
(兵)腰抜けが!和戦を問うまでもなく落城とは無理もないこの数で攻められるとなればな刑部よ人とはこんなものなのか銭と武力で圧倒すればこれほど簡単に性根を失うものなのか浮世を…
(靱負)敵が迫ってるというのに酒をかっくらってるとはね長親殿ひとえに酒の徳とかや〜長親殿!下るがそんなに愉快ですか?じたばたしても仕方がないおとなしく下ればお猿さんも悪いようにはしないよひょうたんつるいておもしろや〜うッ!ううッ無念なのはおのれだけと思うな!
(遠くから響く太鼓と兵達の声)
(太鼓と兵達の声)見てみろ二万はいるぞ五百に二万かこの山いにしえの貴人の墓じゃそうな上杉謙信も忍城攻めの際この丸墓山に登ったというぞ正家を呼べ軍使に立てるはッ待て正家を軍使に遣わすのかああそうじゃなぜお前ほどの知恵者が人選を誤る?正家は殿下の威を借る男だわしのようにか?違う弱き者には強く強き者には弱く出るそういう男だと申しておるのだその手でいくんだよ・
(甲斐)丹波猿めの使者が入城したぞ広間にて待たせるよう伝えおけはッ御屋形様は関白に下るおつもりじゃなよいのじゃ城を開けい!関白に臣従を誓い所領の安堵を願い出よ苦労をかけたなわしが頑固なばかりにのうううッ!申し訳次第もござりませぬ!
(悔し泣きする一同)
(足音)遅い!殿下の使いを供応するでもなく広間にただ待たせるとは何事じゃいやいや田舎者とおぼし召し至らぬところはご容赦下され城代は病身ゆえ床を離れられませぬによって事の次第を伝えるに少々時を食い申した失礼つかまつったお前は誰じゃはッ某は成田家一の家臣を務めまする正木丹波守利英と申す者にござりまするこれに控えるは成田家一門にて城代・成田泰季が嫡子成田長親にございまする長束大蔵大輔正家じゃそれにしてもこの大事に寝ておるなどのんきな城代もあったもんじゃのうこんな野郎が軍使かい
(正家)和戦いずれかを聞こう下るなら城所領ともに安堵して遣わすが小田原攻めに兵を差し出せ戦と申すなら我ら二万の兵がもみ潰す・
(正家)当方としてはどちらでも構わぬが腹は決めていよう早う返答せい!わしは朝飯を食うておらぬああそれと成田家には甲斐とか申す姫がおるなそれを殿下に差し出すよう腹は決めておらなんだが今決めたなら早う言え戦いまする今何と申した?戦場にて相まみえると申した!
(正家)それが成田家の返答じゃな?長親暫時!暫時暫時暫時!長親ちょっと来い!カーッ靱負!・
(靱負)はい乱心したか!?
(一同)長親殿!嫌になった嫌になった?何がだ?下るのがだよ!今更何を申しておる!?さんざに義を尽くしたではないか関白にはかなわぬそれゆえ下るとおぬしも承知したではないかだから嫌になったんだって!餓鬼かてめえは!二万の大軍でさんざ脅しをかけたあげく和戦いずれかを問うなどと申すそしてその実下るに決まっているとたかをくくっておるそんなものに下るのは嫌じゃ我慢しろ今下れば所領も城も安堵される我慢するのだ嫌なものは嫌なのじゃ!武ある者が武なき者を足蹴にし才ある者が才なき者の鼻っ面をいいように引き回すこれが人の世か?ならばわしは嫌じゃわしだけは嫌じゃ!これが世の習いと申すならわしは許さんヘッヘッヘッヘッやろうぜ酒巻家も乗りますよおのれらは戦がしたいだけだろうが!別府家も乗ったぞ!本庄家も乗った!
(一同)当方もじゃ!待て落ち着け!早まるな強い者に服するは世の習いだろうがお前はどうすんだ?丹波!本当にやるのか長親?やっちまうかやろうやろうぜ!やろうぜやりましょう!やろう!おう!
(ふすまが開く)どうじゃその者は了見したか?左様重臣一同いさめ申したがこの者存外頑固者にござりましてな一向に言うことを聞きませぬ何!?さればこの者の申すとおり我ら戦に決した二万の軍勢を相手に戦すると申すか!坂東武者の槍の味存分に味わわれよヘッヘッヘッヘッヘッそうか戦うと申すかおのおの方麓の本陣にて早速軍議じゃ!おう!これよこうでなければならぬ!これが人というものよわしは人というものにたかをくくってしまうところだったぞ試したのか?正家を軍使に遣わしたも忍城の者どもの性根を試さんがための企てか!皆ここで城代に誓え
(靱負)何をです?これより長親を城代と仰ぎ我らが軍勢の総大将とすることをじゃいいですよ
(和泉)承知
(重臣達)おう!御屋形の言いつけには背くんじゃが…・
(甲斐)長親あッのぼうだ成田長親じゃー!父・泰季は開城せよと最期の言葉を残したじゃがわしが無理言うて戦にしてしもうた!みんなごめーん!兵の士気が下がる何を言うのだ!?父上…のぼうが泣いてる泣いてるよ・
(ちよ)お父が死んだのあの人の父上!のぼう…長親長親立て長親殿長親!
(藤次郎)みんな鬨の声でもつくれ!エイカエイカッ…おーい!みんな声を出すんじゃ!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!エイカエイカオー!ハッハッハッハッ…さあ天下人の戦をしようこれが…天下の兵か・
(家臣)先手は鉄砲衆にござる始めるぞはッかかれ!
(帯刀)トリャーサイ!前へ!おう!おのれら種子島を持ったまま騎馬組と相乗りせよ急げ!早う乗れ門を開けい!・
(門番)かしこまった!トリャー!
(帯刀)引きつけられよまだ撃たせてはなりませぬ!撃ってこい放て!ハッハッハッウオー!何と!だから申したのだ!ウオー!まさか騎馬鉄砲じゃああ…放て!我が鉄砲衆は何をしておる!?放て!正家総大将に申し上げまする!先ほど正木様守将の佐間口にて戦が始まったとのことにござりまする!はい総大将に申し上げまする!下忍口・本庄越前守殿長野口・柴崎和泉守殿が開戦した模様にござりまする!はいもうどこか危ないのでは?まだ始まったばかりにござる!構え!放て!下がっとけ!頃はよーし!門を打ち破れ!
(一同)オー!
(前野)行けー!かかれーセイヤー!セイヤー!
(前野)セイヤー!来やがった!かんぬきが細うはござりませぬか!細うしたのよ!セイヤー!総大将!総大将に申し上げまする長野口長野口が劣勢!一の門が破られ二の門も…はい…・
(靱負)待ってました!たく和泉殿は口ばっかりなんだから総大将行ってきます!前野与左衛門一番乗り!ソーリャー!全軍突出首は討ち捨てい!討ち捨てじゃー!討ち捨てじゃ討ち捨てじゃ!討ち捨てじゃー!討ち捨てじゃー!ダー!
(服部)押せー!和泉殿!そろそろ音を上げますか?うるせえまだまだ!たく強情なんだから引けー!引け!引け!石はじきじゃ!打ち込め!ウリャ!・
(兵)よし運べ早うせい!
(かん)お下がりなされ危のうござる!ウーッ靱負おのれの軍略を見せやがれ!分かりました!和泉殿!和泉殿!今ぞ期を逃すなつけ入れ!・
(吉継軍)オーッ!ワーッ!・
(靱負)今じゃ!アッハッワーッハッハッ!こりゃあ何じゃー!?油にござりまする!しまった敵に兵書読みがおる注進致す注進致す!城内の者がこれを放ったと!「此度の火攻めの大将は酒巻靱負」緒戦は負けだ退くぞはッ退くか!ならば戦記に記せ!忍城総大将は成田長親この長野口の大将は武功一等柴崎和泉守じゃ!ハッハッハッ剛の者とはいつもこれじゃ大谷吉継じゃ承った!火攻めの大将・酒巻靱負殿共々名を記す!丹波よう全ての守り口で我が方が勝ったぞ全勝じゃ!ハッハッハッ…姫御台様にもお知らせを丹波苦労丹波すまんがちょっと横になる・
(重臣)仕方のない大将じゃのう・
(佐竹)まるで野伏どもの戦じゃ何をしでかすか分からん長野口の大将が総大将は成田長親じゃと申しておったあれほどの侍大将を縦横に使いこなす総大将とはいかなる男かとても優れた将とは見えなんだがならばかような者にふさわしき軍略があるではないかおのおの方!三成は水攻めに決しましたぞ
(佐竹)何じゃと!?ついては水攻めの縄張りを示す水攻めならばお味方の勝利間違いござらんな?
(国綱)ならばはじめからそうなさればよかったのだ!御免!御免!御免!御免!水攻めなど他の将が手柄を立てる機会がなくなる総大将が将の心を得ずして何とする!?この城は水攻めで落とす水攻めで勝つ
石田三成は水攻めにあたり
忍城の南北に位置する利根川と荒川に着目
二つの大河に挟まれたこの城を
堤で囲むよう命じた
昼夜を徹して普請された堤の長さは
全長28キロにも及んだ
死力を尽くして戦う敵に圧倒的な武力と銭で臨むそれが我が戦よ勝手にせい治部少よ望みを果たせ決壊させよ!
(太鼓を鳴らす)オーッ!
(地響き)何の音じゃ?どうしたんじゃ?うん?逃げろ!早う逃げろ早う!
(ちどり)早く!
(ちよ)ちどり!
(ちどり)おっ母水じゃワー!本丸の方が地勢が高い!館でも上がって構わん逃げよ!天雲の流れ消えゆく行き水の…靱負どうした!
(靱負)本丸が満杯なんですよ!館に上がれば何とか三千は収まるだろ!丹波丹波!二の丸が沈むぞ!皆上がれ!百姓だろうと構わん!遠慮致すな!なぜ上がらんのじゃ!?やあやあやあ!皆皆皆
(一同)のぼう様のぼう様じゃ…どうしたどうしたえッ?それ!姫あッハハハハハッハハハハハッ…
(一同が笑う)よーし皆土足でなわしら二人だけ土足ではまた丹波に叱られるでなハハハそれ!さあどう出る?忍ぶの城のつわものどもよ
(赤ん坊が泣いている)まずいな田ですよ田田んぼを沈められた怒りが我らに向いているんですよ水かさが今も増してる明日には本丸が危ねえぞ・
(兵)申し上げます!本丸門前に死骸が流れ着いてござりまするこの小太刀ぬしの脇差しだなおぬしが与えたのか?り吉…下るというのでわしが渡したみすみす城外へ逃がしたのか!赤ん坊がわしの顔を気に入ってな泣きやまぬと言うてはよう来ておったレロレロレロヤヒョロロンヒョロロン・
(和泉)野郎ども下った百姓を女を餓鬼まで斬りやがんのか!ヒョロロンヒョロロン水攻めを破ろうあ?わしは決めた水攻めを破るだからどうやってやるというのだわしは悪人になる何事じゃ治部少あれを見ろ
(鈴の音)何じゃあれはバアー!さあ上方勢の皆々様これよりお見せするは忍城下に保元・平治のころより伝わる田楽踊りじゃのぼう様じゃほんとじゃのぼう様じゃ水攻め戦のつれづれにおのおの存分にお楽しみあれ…おッ…
(笑いだす)ヨォー夕べは酒を飲みすぎて夕べは酒を飲みすぎてわしゃしとねに寝小便寝小便寝小便カカに隠れて干そうとしたら西のお猿が大放尿西のお猿が大放尿おっとっと西の猿じゃと関白殿下のことじゃ何とふざけおっておっとととっととっとと
(大笑いしている)何かと思えば踊りですかわしゃびっくりちびちびちびりおっとっとおっとっとおっとととっととっととおっとっとおっとっと姫様姫どちらへ・
(侍女)姫様姫様!姫!
(吉継)何をしようというのだこれはますます面白き奴らよ水攻めなど平気だと申したいのじゃ田楽踊りで景気づけなんざ城代らしいや水おしろいでどう白い水おしろいでどう白い合点か合点合点合点じゃ合点か合点じゃ合点合点合点じゃあの男何者か誰ぞ城下の百姓でもつかまえて聞いて参れ・
(家臣)はッ合点合点合点じゃ合点か…百姓など連れてくる必要はないうん?・
(正家)田楽を踊るあの男こそ成田家総大将成田長親じゃ合点合点合点じゃあきれたね敵味方を瞬時にまとめちゃったよ姫正木の爺様に叱られても知りませんからねあいつ死ぬ気だ死ぬ気なんだレロレロレロヤレロレロレロヤヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロン三成様関白殿下より知らせが参ってござりまするこれを殿下がいらせられる何?水攻め見物にお出ましになる殿下余計なことを雑賀の鉄砲上手がおったなあれを呼べ待てそれはならんあの者を討っては駄目だ何を申す総大将を討ち取れば戦は終わりではないか戦を知らぬおのれは黙っておれ!見ろ兵どもを見ろ敵も味方もあの者に魅せられておる明らかに将器じゃレロレロレロヤレロレロレロヤヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンレロレロレロヤ弔い合戦に持ち込む腹だおのれが撃たれ死ぬことによって兵どもの士気を取り戻すつもりだ皆好いておるのだあの馬鹿をそれを承知であの馬鹿はあれほどの悪人おらんぞあいつを止める舟を出せ幕を上げい!雑賀衆をこれにあの者を討ち取れ御意考え直せ分からんのか下手に手を出せば窮地に追い込まれるは我らの方じゃぞ丹波!姫来てはなりませぬ長親…ヒョロロンヒョロロン…まだか!ヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロンヒョロロン待てやめろ何をする刑部を押さえろはッ御免おやめなされ刑部殿御免離せ離さんか聞け治部少成田家は既に下っておる・まことか!?・何と…忍城主・成田氏長は山中長俊を通じ殿下に内通の意を示してきておるのだ貴様は戦わなくともいずれ勝てるエーイソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレソーレ撃て
(水夫)ご城代…ご城代!誰が放った長親長親!靱負姫を止め置け長親離せ離せ!のぼう様のぼう様が…待って下さい待って下さいのぼう様が撃たれたのじゃぞ弔い合戦じゃオーッ!待って下さい長親長親殿
(くしゃみをする)イテテテ…アイタ〜城の皆は無事か?そのままにしておれ馬鹿者が兵も百姓も関白討つべしと騒いでおるわおのれの狙いどおりにないやあアイタタ…何がいやあじゃこの馬鹿者痛い!勝手にお前は…姫姫!馬鹿者馬鹿者姫イタタ…このたわけ!
(留)おいおい!何じゃ下忍村のかぞうか
(かぞう)持田村の留か何しに来た決まってんだろこいつをぶっ壊しに来たんだよあの野郎どものぼう様に手出しやがって…佐間村からも城にこもらんかった者どもが来ておるぞうん手伝えああッ
(悲鳴)うん?うわ〜水じゃおい逃げろ!おい水が引いていくぞほんとか?ああみんな早う・引いていくぞ水が引いておる・水が引いてくぞ!水が引いていくぞ!助かった助かった城外の百姓も皆我らの味方さおおッ…堤を自ら壊して水を抜いてやがる攻めてくるぞ皆水が引き守り口があらわになり次第持ち場に戻れ
(一同)おう戻れ土俵で田んぼを埋め尽くすつもりか深田の壁がなければこの数では到底防ぎきれませぬぞもはやこれまでじゃ打って出ましょうぞオーッ!百姓どもは持田口より落ちよ侍どもは命に代えても百姓どもを守れ今更何を言うのじゃ戦なんぞで命を落としてはならん長親に心を酔わせ命をかけるなど馬鹿者のすることじゃ早う行けならば何故正木様は敵に向かわれるのじゃわしか!わしはその馬鹿者だからよハッ正木様!出たぞ単騎じゃ・
(鉄砲頭)構え!・
(鉄砲頭)火蓋を切れ待て出るでない!・待たれい待たれい!待たれよ!待たれい待たれい双方待たれい待たれいこの先の戦は無用小田原城は昨日落城し申した忍城は速やかに開城せよとの仰せでござる落城した?もはや是非もない開城だな
(正家)感心せんな開城に決したとはいえ敵の城に総大将自ら乗り込むなどわしは感心せんぞわしは会いたいのだ二万の軍勢を見事退けた敵の総大将に取りこめられて殺されるぞ・
(忍城兵)開門・御使者このような様で面目ござらん忍城城代・成田長親でござる総大将・石田治部少輔三成にござる何?ほういい度胸してやがるぜ早速じゃが開城の条件を示す一両日以内に士分百姓町人のことごとくは城を退去し百姓は村に必ず戻すこと士分は所領を去られよただし武士をやめる者についてはその限りではない承ったそんだけでござるかな?左様まだある士分は一切の家財を置き捨て所領を出よ城の兵糧武器刀槍の類いも例外ではない何とそのような開城の条件は聞き及んだことがござらぬ天下は改まった新たな習わしは関白殿下がおつくりになるてめえ城の中の者は飢え死にしろってのか!正家どういうことじゃ戦利品もなければ殿下に顔向けできぬ少し黙っててくんないかなならば城代も何とか言うたらどうじゃこれから言うところなんだってならさっさと言わんかおぬしがもじもじしておるから言ってやっておるのであろうがまあまあお二人とも何か申されるというんですから黙ってましょうよまだ戦が終わっておらんとでも言おうってかあッそれえッ?それよそれ石田殿よ当主氏長が命で開城を承知し申したが城の財米の持ち出しを禁じるとあれば兵領民ともに飢えるほかありませんならば我らは城を枕にことごとく討ち死に致す幸い当方には武辺確かな家臣どもがいまだ壮健にござるこの上まだ戦がし足りぬと申されるのであれば存分にお相手致すゆえ軍勢を差し向けられよ!よう言うて下さったおのれが引き起こしたことじゃおのれが収めよ忍城および所領の財は持ち出し勝手とするいや当方は既に戦に決した勝手と申してるではないかそう申されるな城の財ほしくば腕ずくでアイテテ…取られるがよい成田殿そういじめんで下され殿下の仰せは開城のことのみにござればほかのことは無用かと存じまする左様かなら当方から開城の条件を二つほど敗軍の将が条件をつけるかあの二度目の戦でまき散らした土俵ですなあれを片付けていってもらいたいんじゃ百姓の皆が田植えができぬでな
(家臣達が笑う)心得た二つ目は?貴殿の軍勢には下った百姓を斬った者がおるその者の首を何と…許しがたいなどの家中だろうが必ず見つけ出して首をはねる承った例の件をそうか一つ条件が残っておった成田氏長殿の娘甲斐姫を殿下のおそばに置かれるよう承知したこれで全てにござるしからばこれにて成田殿うん?その腕は戦の手傷にござるか?いやいやわしゃ矢弾が苦手でな丹波の奴が戦に出してくれませぬせめて家臣どもの慰みにと田楽踊りなどしておったらやられてしもうた成田殿田楽踊りとは策でありましたなまさかではこれにて石田殿北条方の城はいかほどが残られたご存じなかったかこの城だけだ落ちなかったのは
(家臣達)おお…この忍城攻め当方には甚だ迷惑ながら坂東武者の武辺を物語るものとして百年の後も語り継がれるであろうよき戦にござったおう!先に行くハッハッハッハッ…ハッハッハッハッ…負けた負けた完敗じゃわしには軍略の才がないと分かったならば今後は理財に生きるかねいやいずれ我が所領の半分を割いてでも天下一の武辺者を家臣の列に加え天下一の大戦を指揮してみせる
成田長親はその後家臣の仕官先斡旋に努めた
徳川家康が高禄をもってその多くを召し抱えたという
晩年は尾張に住み67歳で死んだ
忍城はその後何度か主を変え
松平氏の時に明治維新を迎えた
現在では城は取り壊され湖も埋められ
三成の造った人工堤の一部が
石田堤として現存するのみである
2016/01/18(月) 21:00〜22:54
MBS毎日放送
月曜ゴールデン 映画「のぼうの城」野村萬斎・主演 突飛な奇策に驚き、笑う![字]

実現まで8年以上を要した史上最大級の戦国エンタテインメント超大作。主演は狂言界の至宝、野村萬斎。130万部突破の大ベストセラーの映画化。

詳細情報
みどころ
天下の豊臣軍にケンカを売った、でくのぼう!
戦乱に埋もれた驚きの実話を、犬童一心×樋口真嗣の異例なダブル監督で映画化!日本映画の歴史を塗り替える壮大なスケールで描かれる合戦や、圧倒的勢力の三成が田舎城を相手に仕掛ける驚天動地の戦術、そして両軍の愛すべきキャラクターたちが織りなす人間ドラマなど見どころ満載。さらに、野村萬斎、榮倉奈々、佐藤浩市、上地雄輔など豪華キャストたちも魅力の超大作!
番組内容
天下統一目前の豊臣秀吉は唯一残された敵、北条勢を攻めようとしていた。周囲を湖で囲まれた「浮き城」の異名をもつ「忍城」もその一つ。その忍城を治めるのは、不思議な人柄から“のぼう様(でくのぼうの意)”と呼ばれる成田長親。一方、天下軍を指揮する石田三成は忍城に降伏を迫る。しかし、多勢に無勢となめきった態度に、長親はなんと戦う事を決意。とんでもない秘策で2万の天下軍にたった500の兵で挑むことになった!
出演者
野村萬斎
佐藤浩市
榮倉奈々
成宮寛貴
山口智充
上地雄輔
山田孝之
平 岳大
市村正親
西村雅彦
平泉成
夏八木勲
中原丈雄
鈴木保奈美
前田吟
中尾明慶
尾野真千子
芦田愛菜
ほか
スタッフ
【監督】
犬童一心/樋口真嗣
【脚本】
和田竜(小学館「のぼうの城」)
【音楽】
上野耕路
 
制作
【製作】映画「のぼうの城」フィルムパートナーズ
 
おことわり
番組の内容と放送時間は変更になる場合があります。

ジャンル :
映画 – 邦画
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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