「離反」は台湾だけではない
台湾総統選で民進党の蔡英文主席が当選した。
中国と距離を置く蔡政権の誕生は、中国にとって親中国路線を軌道修正しつつある韓国、核実験を強行した北朝鮮に続いて大きな打撃である。中国周辺国の相次ぐ離反は、ソ連崩壊の引き金になったバルト三国のソ連離反を思い出させる。
民進党の勝利は、まさに「圧勝」という表現がぴったりだった。
蔡主席は投票数の56.1%を獲得し、与党・国民党の朱立倫主席を大きく引き離した。同時に行われた立法院(国会に相当)選挙でも、民進党は過半数を上回り、選挙協力をした新しい政党「時代力量」と合わせると、獲得議席は113議席中の73議席と過半数を大きく超えた。
蔡主席は選挙中、中国との関係について「独立でも(中国との)統一でもない現状維持」を訴えた。穏健な主張に聞こえるが、台湾は事実上、中国の統治が及ばない独立国家として存在しているのだから「現状維持」は、すなわち中国からの「独立維持」路線を意味している。
中国は1992年の中台交渉で、台湾も「1つの中国」の考え方を認めている、と主張している。だが、蔡主席が率いる民進党は「92年合意」そのものの存在を認めていない。この点からも、これまで馬英九政権が進めてきた親中国路線からの決別は明白である。
加えて、見逃せないのは「時代力量」の躍進だ。この政党は中国とのサービス貿易協定に反対して2014年、国会を占拠したヒマワリ学生運動の流れを受け継いでいる。もちろん台湾と中国の一体化には反対だ。わずか5議席とはいえ、時代力量の存在は若い世代を中心にした嫌中論の高まりを象徴している。
さて、ここからが本題だ。
日本のマスコミは以上のような今回の台湾総統選を、ほとんど中台関係だけに絞って報じ、論評した。だが、中国を取り巻く環境をみれば、中国から離反しつつあるのは台湾だけではない。まったく事情は異なるが、つい先日、核実験をした北朝鮮や韓国、さらには香港も同じなのだ。周辺国が中国に距離を置く動きが時を同じくして相次いでいる。
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