(岸)君たち臨床医の一番の仕事は何?検査データを基にびしっと治療方針を決めることだよね?
(岸)なのに何なのかなこれは。
こういうのやめてもらいたいな。
同じ医者として恥ずかしいから。
(宮崎)私を病理に入れてください!これ貸してやるよ。
(宮崎)えっ?何の疾患か当ててみろ。
それができないようなやつはうちにはいらない。
(藤原)まるで病理の診断が100%みたいな言い方だな。
何のがんかを特定する検査をするべきだ。
もう十分だ。
患者を殺す気か?
(細木)あの人は何があっても自分の診断を譲らない。
絶対にブレない。
おそらく腹部のどこかにでかい腫瘍がある。
病理としての意見は腹部CTの検査を追加することだ。
私何も分かってませんでした。
患者さんを治療することだけが命を救うってことじゃありませんでした。
申し訳ありませんでした。
合格だ。
合格?お前がやるなら病理に入れてやる。
やります。
私を病理に入れてください。
日本の人口1,000人当たりの医師数は2.4人である
絶対的に医師が不足し医師たちは常に時間に追われている
あなたが医師に体の症状を訴えたとき実は多くの医師は最初の10秒で診断を終えている
(森井)これが病理診断報告書。
院内の各診療科から持ち込まれた組織や細胞を顕微鏡で観察し診断結果を記入します。
はい。
(森井)各診療科のドクターはこの報告を基に診断を確定させたり治療方針を決めたりします。
はい。
・
(戸の開く音)
(森井)おはようございま〜す。
あっおはようございます。
おはよう。
(森井)ありがとうございます。
森井さんすいません…。
(森井)んっ?この胃の生検なんですがグループ3でいいんでしょう…。
(森井)あ〜僕は検査技師なんで検体を機械にかけたりプレパラートを作るまではできるんですけど診断に関してはお教えできないんですよ。
僕は教えないよ。
えっ?
(佐田)おはようございます。
あっ…。
(宮崎・森井)おはようございます。
おはようございます。
(佐田)宮崎先生。
あっ。
いかがですか?病理は。
あっ…はい。
覚えることがいっぱいありますけど頑張ります。
(佐田)まあ岸先生はね病理診断の腕だけはトップクラスですから。
ねっ?岸先生。
お願いしますよ。
ほ〜い。
(佐田)いや「ほ〜い」じゃなくて。
今回はしっかり育ててもらわないと。
ねっ?えっ…。
(森井)今までは人が入ってもすぐ辞めちゃってるんで。
(佐田)岸先生の病理診断の精度が高い故に臨床医との対立も多々あるとは思いますがもめ事は…。
んっ!
(佐田)もめ事だけは起こさないよう!ほら〜。
(佐田)えっ?心掛けますよ。
(佐田)病理は利益を生みにくい部署なんです。
だからいくら腕が良くてももめ事が多かったらこれ病院も決断せざる得ませんから。
くれぐれもお願いしますよ。
宮崎先生も。
あっ…。
(佐田)お願いしますよ。
はい。
(佐田)決断させないでください。
あの病院の決断って?病理をなくすってことです。
えっ?この病理がなくなっても病理医は引く手あまただから心配ない。
まっそれなりの技量があればだけどな。
だったらちゃんと教えてくださいよ。
分かったか?あっいえ…。
ふ〜ん。
あっあのここなんですけど…。
5時に帰れなかったらたまったもんじゃないよ。
はい?教えてる間に終わる作業も終わらなくて残業になったら嫌だって意味です。
そういうことなら結構です。
自分で頑張りますから。
(細木)おはよ〜。
(宮崎・森井)おはようございます。
昨日はどうだったんですか?
(細木)外れ。
10秒で帰りたくなった。
あっ合コンです。
10秒って早過ぎませんか?
(細木)会って10秒もすればその人を好きになれるかどうかなんて分かるから。
ねっ?岸先生。
でも10秒で帰るわけにいかないじゃない?だから5分も我慢しちゃった。
えっ気まずくありません?あんた医者でしょ?はい。
病院から呼び出し来たんでって席立つだけじゃない。
あっ…。
あ〜。
あんたもう病理だもんね。
それできないか。
まあできてもしないと思いますけど。
ねえねえあんたさ何年男いないの?えっ?いや…誰がいないって言いましたっけ。
分かりやすい子。
カワイイねえ。
好きよ。
ちょっからかわないでください。
ホントに分かりやすいですね。
(細木)ハハハ。
10秒ねえ…。
(細木)うん10秒。
お先に。
(森井)お疲れさまでした〜。
あっあの私はどうすれば?仕事がなければ帰ればいい。
いやでも…。
お疲れさ〜ん。
(森井)さて今夜も長いぞ。
さてと…。
あっ森井さんこれお借りしてもいいですか?
(森井)あっいいですけど…。
岸先生の診断書と照らし合わせたいので。
よいしょ…。
勉強ですか。
今日一日何もしてないようなものですから。
頑張ります。
焦らなくていいんじゃないですか?えっ?僕が言うのも何ですけどまあ当面の目標は病理診断専門医の認定試験ですね。
受験するには4年間の病理診断の経験が必要なんでまあその間に勉強すればいいですよ。
専門医の認定取れば病理はまず一生食いっぱぐれません。
はい。
あっ知ってます?その認定試験って6割点数取れば合格なんですよ。
えっ4割も間違えていいんですか?現場なら誤診じゃないですか。
医師国家試験だって満点で合格したわけじゃないですよね?ああ…8割取れました。
2割誤診したって胸張られても。
えっ…えっ?冗談ですよ。
頑張ってください。
はい。
ありがとうございます。
(ハト時計の時報)
(大塚)うっうっ…。
(大塚)あっ!
(大塚)あ〜!
(医師)DC持ってきて!
(看護師)今行きます!
(看護師)先生お願いします!
(救急隊員)大塚洋治さん50歳男性。
自宅で意識消失してるところを奥さんが発見。
(倉木)酒か。
どのくらい飲んだ?
(佐知代)あっすみません分からなくて。
(倉木)急性アルコール中毒でしょう。
・倉木先生こっちお願いします。
(倉木)あっ今行く。
(佐知代)まさかお酒飲んでたなんて思ってもなくて。
もうお酒なかったはずですし自由に買えないようにしてたし…。
あっ外でお待ちください。
ライン2本とって。
血算生化出しといて。
(看護師)はい。
(倉木)頭のCTもやっとこうか。
(看護師・医師)はい。
(倉木)あっ血尿か。
念のため病理にも回して。
(医師)はい。
あの…。
(看護師)倉木先生!
(倉木)はい。
やっといて。
(医師)はい。
(倉木)はいはいはい。
どうしよう…。
いや…。
(森井)宮崎先生何分で戻ると思います?5分もあれば十分だろ。
(医師)早くレントゲン連れてけ!もうすぐ来るぞ!
(看護師)すいません今…。
(医師)もたもたしてんじゃねえよ!
(看護師)すいません!
(医師)早く開けて!
(森井)宮崎先生には難易度高いと思いますよ。
紙切れ1枚渡すだけだ。
がきの使いより簡単だろ。
ハァ…こんなのどうやって渡せっていうのよ。
あっあの…。
あっ倉木先生はどちらに…。
倉木先生こっちお願いします!
(倉木)はいはい。
誰か手伝って。
(看護師)はい。
あっすみません病理の宮崎です。
(倉木)病理?はい。
あの岸先生から大塚さんの診察についてちょっとありまして…。
(倉木)僕に?あっはい。
(倉木)何か質問?いや質問というかその…。
(倉木)誰だって?あの…ゆうべの大塚さんです。
急性アルコール中毒との診断でしたがその…。
(倉木)2分でよろしく。
えっ2分?
(倉木)手を洗ってる間だけ聞くから。
あっいやそのあの…。
(倉木)ほらあと1分50秒。
えっ?あっ…あっはい。
(森井)岸先生にあんなお使い頼まれて宮崎先生もとんだ災難ですね。
災難なのは患者だろ。
(森井)もちろんそうですけど。
患者を10秒で判断した典型的なケースだ。
昨日病理で受けた血尿ですが病理としてはあれだけの検査では診断書を書くには十分とは言えなくてですね…。
(倉木)アルコール中毒で問題ない。
あっアルコールだけじゃなくて他にも原因があるはずなんです。
(倉木)他に身体所見ないだろ?ですが乳酸値とか動脈血ガスのペーハーがですね…。
病理は患者を診ないから。
いやでも…。
(森井)原因が普通のアルコール中毒だけなら乳酸値がもっと高いはずですからね。
検査値と病名がまったく結び付かないのにどうして自信満々にただのアル中だなんて言えるんだろうな。
まあ仕方ありませんよ救命も忙しいですし。
ふ〜ん。
うちも忙しいよね?誰かさんのせいですけどね。
僕かな?
(倉木)大塚さん入りますね。
(看護師)先生お願いします。
(倉木)はい。
あ〜。
大塚さんゆうべお酒どのくらい飲んだの?
(佐知代)もうバレてるのよお酒飲んだこと。
(大塚)ちょっとだよ。
(倉木)救急車で運ばれたときすんごいお酒のにおいしたよ。
(大塚)だからちょっとだって。
みんなそう言うんだよね。
ちゃんと話して。
前にも体壊してるしあれだけ飲むなって言ったじゃない。
細かい仕事してると飲みたくなるんだよ。
ずっと隠れて飲んでたってこと?何やってんのよ情けない。
(倉木)それで倒れるまで飲むんじゃもう精神科の領域だからそっちに移ってもらうね。
(佐知代)えっ精神科?あっあの大塚さんいつもと違うことありませんでしたか?知らねえよ。
何か飲んでる薬とかありませんか?だから知らねえって。
(佐知代)ちゃんと答えて。
先生に失礼でしょ?
(倉木)ちょっと。
あっすみません。
あっ倉木先生ちょっとあっ…。
おっ…。
見たでしょ?典型的なアルコール中毒だよ。
いやでも乳酸値が高くないアシドーシスは普通のアルコール中毒だけでは考えにくいんです。
ですから病理としては…。
いいねえ病理は。
いつまでもこういう所でサボれて。
サボれて?はい?あっ。
あっそれは…岸先生があの…。
めんどくさい。
これなかったことにしよう。
あっ…ちょっと!
(倉木)ここはもっと危ない患者がいるんだ。
いやでも…。
こっちは毎日ぎりぎりなんだよ!もう頭きました!私のことサボってるだなんて。
乳酸値のことを言ってもごみ箱に丸めて捨てるし!酒臭いから原因はアルコール。
何なんですかいったい!そんな乱暴な診断がまかり通っちゃうんだよ。
怖いよね。
先生顔がにやついてますよ。
だって面白いんだもんすっごい怒ってるから。
何も面白くありません!でどうすんだよ今回の件。
頃合いを見てもう一度倉木先生に…。
私も冷静にならないといけないですし。
バカか?はい?バカなんですか?時間置いたら診断を変えるようなやつなのかよ。
救命ですからね…。
もう精神科に回しちゃってますし次から次へと患者来ますし。
じゃあどうすればいいんですか?ちょっと森井君教えてあげてくんない?病理の仕事が何なのかをさ。
病気の原因の解明そして診断の確定です。
そのくらい分かってます。
だったら証拠を探すだけだ。
倒れた原因がアルコールだけじゃないっていう証拠を。
証拠?そう。
ぐうの音も出ない証拠をな。
まっお前には無理かもしんないけどさ。
分かりました。
証拠探してきます!2時間ほど空けます。
どこ行くんですか?
(戸の開閉音)岸先生たきつけてどうするんですか?絶対患者さんの所ですよね?そんなの病理の仕事じゃないですよね?いいんじゃない?あいつ患者と向き合うの好きだし。
すみません突然。
壮望会第一総合病院病理診断科の宮崎と申します。
(佐知代)あっ…。
病理診断科?はい。
組織や細胞などの検査を主にやってる医師です。
あっ先ほどの。
あのもう一度倒れられたときの状況を伺いたいんです。
もしかしたらアルコール以外にも倒れた原因があるかもしれないことがそっその…あっあっ新たに分かったので。
新たに?そうですか。
ホントにわざわざすみません。
あっいえ。
(佐知代)ここに倒れてました。
お酒の量は分からないんですよね?はい。
もうずっとお酒が手放せない状態で勝手に買えないようにしてて家にあるお酒は全て飲みきったと思ってたんですけどお酒がここに。
ご主人倒れたときのこと何かおっしゃってました?あっ何か変な幻覚を見たって。
幻覚?
(佐知代)仕事をしていたら急に棚がゆがんで…。
・
(物音)
(大塚)《うっうっ…》・
(物音)
(大塚)《あっ!》・
(物音)
(佐知代)それから大きな時計が天井に現れたって。
《あ〜!》幻覚?森井君幻覚だなんて救命からの依頼書に書いてなかったよね?はい。
フッ。
どうせ救命は把握してないんだろ。
はい。
伝わってません。
急性アル中だって言われたし担当医も忙しそうだったので特に伝えなかったそうです。
まるで診断が変わるな。
まず何かの中毒症。
中心は薬物だ。
はい。
抗うつ剤や向精神薬トルエン危険ドラッグ農薬次に生化学の結果と幻覚が両立する疾患。
尿毒症先天性代謝障害などそれらが複合する場合もある。
はい。
原因を特定して治療しないと臓器障害から死に至る可能性もある。
えっ?あっすぐに調べます。
どうやって?あっあの…大塚さんが倒れた場所に薬を飲んだ形跡がないかをです。
お前は刑事か?証拠を探せとおっしゃったのは岸先生ですよ。
患者に会わないのが病理の特権なのにな〜。
会ってるのは患者さんのご家族です。
へ理屈だけは一人前だな。
ありがとうございます。
いきなり病理医なんて世間に認知されてない者が押し掛けて家族を混乱さしてないだろうねえ?患者さんやご家族の対応なら私大丈夫です。
元臨床医ですから。
まあ何があっても僕は責任取らないからね〜。
んっ…あ〜ぐうの音も出ないような証拠必ず見つけて帰ります。
失礼します。
ぐうの音も出ないような証拠必ず見つけて帰ってくるそうだよ森井君。
またたきつけましたね?何のこと?あの…ご主人が何か薬を飲まれた形跡がないかを探させていただきたいんです。
(佐知代)薬?はい。
医薬品か薬物か何かは分かりません。
それを突き止めるためにも薬が入っていたと考えられそうな空き瓶や小分け用の袋などがないかを調べさしてください。
もしかして主人が言いたがらないのは違法薬物だからなんじゃ…。
とにかく今はご主人の体を第一に考えませんか?そのためにも原因を突き止める必要があります。
はい。
今日のところは特に見つかりませんでした。
今日のところは…。
あしたもう一度行って検証してきます。
あしたは見つけられんだろうな?もっもちろんです。
(中熊)森井ちゃん。
(森井)中熊教授。
(中熊)ザッキーの歓迎会いつにする?
(森井)ザッキーというのは宮崎先生のことで間違いないでしょうか?私?そうだよ。
えっ?おっあっ…。
いつにする?酒が飲みたいだけだろ?歓迎会にかこつけて。
(中熊)お前さ病理医がこの日本に何人いるか分かってるよな?全ての医者の0.7%。
あ〜たったの2,230人。
しかも平均年齢52.4歳。
この現状ってのは俺たち病理医絶滅の危機だぞ。
それを阻止するためにいかに若い病理医が必要か。
ねえザッキー。
あっ…あっはい。
歓迎会今夜はどう?ああ…。
(細木)私はOK。
(中熊)え〜お前来るの?いいおっさんがうちの若い者にセクハラしないようにね。
相変わらず愛嬌がねえな。
いやこいつもさザッキーぐらいのころには愛嬌があったんだよ。
どうしてこうなっちゃうのかな〜。
(森井)僕も今夜は大丈夫です。
ザッキーは?あっはい。
大丈夫です。
(森井)あっ佐田部長にも声掛けた方が…。
彼はいいんじゃないの?よし歓迎会は今夜に決定。
(佐田)ん〜何会?あっあの何の会でしょうか?じゃ僕はこれで。
お疲れさまでした。
えっ?あっだって今夜は…。
(佐田)えっ今夜?
(森井)お疲れさまでした。
(佐田)あっいやだから今夜は何の会です?これ。
・
(中熊)おい。
あんまり暴れるなよ。
何のことですか?やり過ぎると俺もお前をかばいきれなくなる。
頼んでませんよ。
理事長によろしく。
倉木先生いらっしゃいますか?
(看護師)ちょっと後にしてもらっていいですか?倉木先生いらっしゃいますか?・倉木先生ちょっとよろしいでしょうか?起こすな。
昨日運ばれた大塚さんの件でよろしいでしょうか?起こすなって言ってんだろ。
何だよ!病理の岸です。
大塚さんの件ですが倒れる前に幻覚を見たそうだ。
大塚さん?あっ彼なら精神科に回した。
そっちに行ってくれませんか?他の科に回した患者には興味なしか。
あっ?救命は一刻を争う患者が次から次へと来るとこなんです。
そっちでやってください。
だからといって診断を怠っていいわけがない。
やってるよ精いっぱい!もう3日も寝てないんだ。
定時で帰れる病理と一緒にすんな!岸先生ホントに帰っちゃったんですか?
(森井)そうですよ。
気にしない方がいいですよ。
いつものことですから。
はい。
(森井)まっああいう人ですからね。
森井さんってすごいですよね。
(森井)えっ?岸先生にちゃんとついていけて。
(森井)時間かかりましたけど。
あっ細木先生から聞きましたよ。
森井さんってスーパー技師って呼ばれてるそうですね。
あっいやそんなことないですよ。
森井さんみたいな技師さんだと医者も助かりますよね。
あ〜。
ザッキーいいね〜。
あの…いつなんでしょうか?私が一人前の病理医になれるのは。
(中熊)真面目だなザッキー。
(佐田)まあまあまあ教授どうぞ。
気が利かないな相変わらず。
あっあっ申し訳ございません。
ほら宮崎先生おつぎして。
何やってんの。
とにかく疾患とその特徴を覚えなきゃ診断なんてできないのにん〜覚えることが多過ぎて。
さあんっ。
んっ。
神経内科で扱う疾患ってせいぜい20種類くらいなんです。
うんと…え〜脳腫瘍脳動脈瘤脳梗塞多発性硬化症パーキンソン認知症。
でも病理は全身が領域。
だから数十倍もの疾患を扱わなくちゃいけないからもう大変で。
でもそれが医者の仕事ですよね?ああ…森井君怒ってるんだ。
あいつにこき使われ過ぎて医者を恨んでる。
あっいやいや…そんなんじゃなくて宮崎先生なら大丈夫だって意味ですよ。
岸先生の所に自ら飛び込んでくるようなドクターなんですからそんなの簡単に乗り越えられますって。
(中熊)まっ確かに全身を診なきゃならないが病理の主戦場はがんだからな。
ですよね。
あっ。
まっ宮崎先生なら何とかなりますよ。
はい。
で何で神経内科から病理なの?あ〜。
たぶん嘘をつくのが嫌になったんだと思います。
嘘?誰にですか?全部です。
んっ…。
(中熊)お〜。
(佐田)あっ。
あっあっあっ…あ〜あららら。
ん〜だからん〜岸先生の所に…。
病理じゃなくてあいつだから入ったんだ。
悔しい?
(中熊)悔しい。
(森井)あ〜あ寝ちゃいましたね。
(細木)うん。
(佐田)ちょっ…。
みっ宮崎先生ちょっと駄目…駄目ですよ。
教授…。
(中熊)寝かしときなさい。
寝かしときなさいって言ってる…。
(細木)よく寝てるわ。
(森井)ちょっちょっと…。
あっすいません。
あっあ〜。
あっハハ…。
宮崎先生。
えっ?ああ…フフフフ。
大丈夫です。
いやホントに大丈夫ですから。
あした遅刻しないでくださいよ?はい。
フフ…おやすみなさい。
お疲れさまでした。
あっスーパー検査技師あしたもよろしくお願いします。
(中熊)かわい子ちゃんは寝顔もカワイイね。
(細木)彼女どのぐらい持つと思います?
(中熊)さあな。
(中熊)岸んとこ辞めたら俺んとこ呼んじゃおうっと。
(細木)ホントは辞めないって思ってるくせに。
(中熊)お前だって。
何か分かる気がするな。
あいつが彼女を病理に入れたの。
ああ。
(中熊)フッ。
まっカワイイからな。
(細木)フフ…。
あの…すみません。
昨日私…。
結構飲んでましたよ。
ですよね。
いや…あのよく覚えてなくて。
途中寝てましたからね。
えっ?寝てた?えっ?どんな感じですか?あっ。
あっ口開け…口開いてたりとか?開けてませんよ。
よだれとか?垂れてませんよ。
あっ。
何か変なこと言ったりしませんでした?《嘘をつくのが嫌になったんだと思います》《ん〜だからん〜岸先生の所に…》えっやっぱり言いました?いいえ。
大丈夫ですよ。
あの今度からは絶対に起こしてくださいね。
分かりました。
あっすいません。
おはようございます。
あっおはようございます。
おはよう。
よいしょ…。
じゃあ私行きますね。
朝から騒々しいな。
はい。
ありがとうございます。
(佐田)おはようございます。
(森井)おはようございます。
(佐田)ちょっとコーヒー頂きますよ。
(森井)どうぞ。
もしかして二日酔いですか?
(佐田)えっ?ん〜いや…。
(森井)昨日あの後1人で飲みに行かれてましたよね?
(佐田)うっ。
何でそれ…。
いやいや…まっとにかくいい歓迎会でしたね昨日はね。
ハハハハ…。
岸先生ああいう場には来るべきですよ。
少しは回りとなじもうとしてみたらどうですか?その方が波風も立たないわけだし。
(佐田のげっぷ)
(佐田)まっそれはそうと救命部長にちくりと言われましたよ。
貴重な睡眠時間を奪わないでもらいたいもんですねっつって。
とにかく病理は病理の範疇で行動してくださいよ。
宮崎先生なんかにとっちゃ岸先生は病理医の基準になってるわけなんですから。
あれ?そういえば宮崎先生は…。
森井君宮崎先生だって。
いや。
はい。
何か見つかったか?いえ。
ホントにちゃんと探してんのかな〜?探してます。
面会に行ってる奥さんにももう一度ご主人に聞くよう頼んでますから。
じゃあお前そこに1人なのか?はい。
(大塚)うっ…。
あなたどう?具合は。
絶対に怒らないから正直に教えてほしいんだけどねえ何か薬飲んでなかった?ホントに怒らないから隠してることがあったら話して。
あなたの体のためなんだから。
ねっ?ねえ。
ねえ。
ねえ…。
(大塚)あっ!ちょっと…。
話してよ。
お願いだから!ふざけないで。
あなたのためにやってるの。
ねえ。
ちゃんと言わないなら離婚する。
それでもいいの?ちょっと!聞こえてるの?ねえもう!いいかげんにしてよ!
(佐知代)情けない。
どこまで情けないのよ。
自業自得だからね。
でホントにまだ何も見つかんないんだ?はい。
薬らしき物は何にも。
あっ目薬ならありましたけど…。
目薬?アトロピンです。
何本ある?えっ?1本です。
ホントに1本なのか?ん〜ない。
あっ!あっ。
アトロピンが20本?はい。
製造年月日が近いので幾つもの眼科を回ったんだと思います。
それだけ大量に使えば副作用が出てもおかしくないな。
原因はアトロピンだったんですね。
証拠見つかりましたね。
それはアニオンギャップをつくるのかな?えっ?いやそれは…。
つくるわけがない。
えっそうなんですか?乳酸値を下げる効果があるのかな?えっと…。
あるわけがない。
えっ?あっ…。
説明つかないだろうが!あ痛っ!あっ岸先生。
あっ…えっえっ?あっどうして?あの先生…。
あっそれを飲み過ぎたみたいで。
えっ飲むんですか?
(舌打ち)あっいえ私は…。
嗅げ。
これって…。
これで全て辻褄が合う。
これが元凶だ。
はい。
ウイスキーの瓶に入っているのはウイスキーではなくアルコールランプの燃料用アルコール。
工業用メチルアルコールとエチルアルコールの混合液でした。
アルコールランプ?はい。
作業で使われていた物じゃないでしょうか?1リットル400円くらいで安いんです。
戦後お酒の買えない時代に飲んじゃう人がいて…。
飲めば酔います。
薬っぽいにおいなんですけど。
雰囲気だけ楽しもうとしたんじゃないでしょうか?それでご主人はアルコールランプの燃料用アルコールをウイスキーの瓶に移し替えたんだと思います。
これなら飲用のお酒に比べて乳酸値は上がりません。
これで症状の説明がつきます。
メチルアルコールとアトロピンの複合中毒です。
メチルアルコールの代表的な副作用はギ酸による目へのダメージ。
これで目を悪くしてアトロピン点眼薬でごまかし続けた結果ついに症状が出た。
このままだと失明する危険もあり大変なことになってました。
原因が分かってよかった…。
えっ?そんなものまで飲むなんて…。
私が自由にお酒を買えなくしたから?あっいえ…。
あの人の好きなウイスキーににおいが似てる。
前は私も一緒によく飲んでて…。
これじゃあ全部私のせいじゃないの。
あ〜。
(森井)そんなんじゃいつまでたっても終わりませんからね。
それは困るよ森井君。
しょうがないですよ。
病理医が2人ともいなくなっちゃったんですから。
あっ分かってます?これもですからね。
あれ?これさっきより増えてない?フフ。
そりゃ増えますよ。
次から次へと依頼来るんですから。
まっ残業決定です。
嫌だよ。
「嫌だよ」じゃありません!嫌だ。
嫌です。
ちょっ…。
あっ宮崎先生ようやくお戻りで〜す。
バカでした。
本当の原因が分かってそのことだけに気を取られて奥さんの気持ちよく考えなくて…。
最低です。
正しい診断は患者を救うだけじゃない。
傷つけたりどん底に突き落とすこともある。
今日は残業だな。
えっ?
(医師)あ〜疲れた〜。
(医師)スギノ休憩入れろ。
(医師)あっはい。
(医師)大変だぞ。
(医師)はい。
(医師)誰?
(医師)さあ。
(医師)病理だよ。
(医師)あ〜。
いつもカンファ荒らし回ってるっていう?
(部長)え〜お疲れさま。
ゆうべ搬送された60歳の男性術後の循環動態も安定してるそうで無事でよかった。
え〜次に…。
(部長)岸先生時間ないんで後で紙に書いて回してください。
皆さんすでにお忘れかと思いますがおととい運ばれてきた大塚さんの件で話があって参りました。
誰?
(医師)そんな昔の話いまさら何だよ。
救命で急性アルコール中毒と診断されましたが病理ではメチルアルコールとアトロピンの複合中毒と診断しました。
(医師)病理と救命じゃ違うんだよ!
(医師)そんなのとっくに終わった話だろ。
(医師)いいよな病理は文句言ってるだけで。
(医師)それで勝ったつもりか?皆さんにお願いがあります。
(部長)岸先生うちは本当に時間ないんで…。
先生方は30秒ルールってご存じでしょ?患者や家族への問診テクニックの基礎。
最初の30秒医者は口を挟まずに耳目を配れってやつですよ。
ところが多くの医者はそれをしない。
なぜか。
忙しいからだ。
実際30秒ってのは意外に長く感じるものです。
しかも多くの医者が最初の10秒でもう頭の中で診断を思い起こしている。
だから患者の言葉を遮って自説を確かめるための質問を始める。
するとどうなるか。
患者は口を閉ざす。
発症時の様子事の背景違和感言葉にできない切迫度たたずまい。
それこそが発病のメカニズムを説明するためのヒントになる。
たった20秒ですよ。
10秒聞くか30秒聞くかで大きく違ってくるんです。
あやふやな問診を基礎に的外れな検査。
それで病理に何をしろって?一発当てゲームやってんじゃないんだからさ。
(医師)正しい診断なんて救命6割その他は8割。
それくらい出せれば合格ですよ。
6割?
(医師)じゅうぶん合格だろ。
(医師)そうだそうだ!
(医師)患者は次から次へと来るんだから!
(医師)時間勝負でやってんだよ!それでも医者か。
6割の分際で今後病理の診断書にケチをつけないでいただきたい。
6割の分際ってあんた…。
6割の分際に患者が命を預けられると思いますか?
(医師)人間がやってるんだミスだってあるだろ。
あんためちゃくちゃだ!6割の分際に自分の家族の命を預けられますか?
(医師)じゃあ現場やってみろよ!6割の分際で救える命を救えたと胸を張って言えますか?6割の分際で医者だと名乗らないでいただきたい。
うちは10割出しますよ。
君たちが医者でいるかぎり…。
僕の言葉は絶対だ。
神経内科だったとき専門は脳腫瘍でした。
でも外来に出たら他の脳神経疾患の患者さんも診なきゃ駄目で血管障害とかパーキンソンとか私全然勉強足りてなくてなんて言えないし専門の脳腫瘍だって目の前でショックを受けてる患者さんに本当のことが言えなくてちゃんと治療すれば5年生きた人もいますとか何回も言いました。
自分をごまかして患者さんに嘘もついて…。
私なんかでごめんねってずっとそう思ってた気がします。
もう二度とそんなふうに思いたくなくて病理に来たんです。
逃げてきたんです。
でも100%の診断を出すことはすごく大変で診断を出せてもそれが患者さんを傷つけるかもしれないし…。
病理の仕事がどれだけ覚悟のいることか分かれば分かるほど怖くて。
怖いですけど私もう嘘もつきたくないし逃げたくありません。
さっき回ってきた43歳男性。
これを鑑別してみろ。
はい。
何が見える?全体にやや過形成。
異型骨髄球の異常な増生巣。
小型裸核や過分葉を示す巨核球。
ITPは否定的で急性白血病か骨髄異形成症候群。
これは赤芽球島はありませんが大小不同のある赤芽球が見られます。
造血細胞3系統全てに異常あり。
確定だな。
骨髄異形成症候群。
ストリッヒの所見による細分類は?芽球の割合は7%。
RAEB−1タイプ。
他の臨床データや主訴とも矛盾がないと思います。
お前が書け。
えっ?白血病への移行は20から30%。
おそらく免疫抑制剤とDNA阻害剤。
可能なら骨髄や臍帯血の移植だが適合者がいなければ…あとどれぐらい生きられる?1年半です。
だからこそこの紙には絶対嘘を書くなよ?はい。
(佐知代)私ががみがみ言ったせいよね。
(佐知代)ごめんなさい。
(大塚)謝るなよ悪いのは俺なんだから。
(佐知代)ううん。
ごめんなさい。
大丈夫?やっぱりお前の言うことちゃんと聞いときゃよかった。
(救急車のサイレン)
(男性)しっかりしろ。
(看護師)先生お願いします!
(男性)病院だぞ。
分かるか?
(救急隊員)ヤナギサワアイコさん30歳…。
(倉木)自分の名前言えますか?
(男性)亜衣子!
(倉木)旦那さん?
(男性)そうです。
(医師)軽度の発熱と右下腹部痛。
急性虫垂炎か。
中のベッドへ。
(救急隊員)はい。
(医師)あとはそちらでお待ちください。
頭返すよ。
(一同)はい。
旦那さんどういう状況だったかもっと詳しく教えてください。
はい。
(細木)おはよ〜。
(宮崎・森井)おはようございます。
(森井)昨日の合コンはどうでした?また行ったんですか?合コンにね30秒ルールを取り入れてみたの。
(森井)はあ。
10秒で切っちゃわないで30秒は相手のいいところ見つけようと努力する。
(森井)どうでした?
(細木)ハァ…。
男に30秒ルールは使えない。
10秒で駄目って思ったらやっぱり駄目ね。
(森井)ふ〜ん。
へ〜。
(森井)まともに受け取らなくていいですからね?おはよう。
(細木)おはよう。
(宮崎・森井)おはようございます。
(森井)ありがとうございます。
んっ。
んっ?えっ?
(森井)歓迎。
病理診断科へようこそって意味です。
あっ…。
ありがたく頂きます。
フフ…。
いただきます。
いただきます。
ん〜おいしい!
(細木)私のは?ねえちょっとだけ食べさして。
んっ?んっ…。
(細木)えっ何味?ものすごいおいしい。
んっ?
(細木)照り焼き?おいしそうだな。
ちょっとちょうだい。
お願い。
(中西)仲良くさせてください。
いくらでもお付き合いしますよ。
中西先生は消化器内科のエースで人格者らしいですからね。
また確定できなかったんですか?まだ検査が必要だ。
(佐田)短期間にこんなに内視鏡検査した例なんてありませんよ。
(中西)ちょっと待ってください。
今の段階では診断を確定できません。
無駄な検査になりかねません。
無駄?
(中西)これではいつまでたっても患者さんの治療なんてできません。
ありゃ駄目だな。
中西先生は患者さんを思ってるだけで…。
森井君IGRAすぐ頼めるか?
(森井)はい。
でもそれって…。
その1%の可能性をつぶすための検査に医者なら心を折らないでいただきたい。
君が医者でいるかぎり僕の言葉は絶対だ。
岸先生ひどいじゃないですか!いったい何考えてるんですか?先生僕の診断…。
僕の診断を否定しろ。
否定はできない。
私は100%の治療法を提案するわ。
僕と君を一緒にしないでくれるかな?どういう意味?臨床医が聞いてあきれんな。
生死に関わる話なんです!辞めたいんだったら辞めてもいいんだぞ。
ちゃんと診るんだな患者を殺したくないんだったら。
指導医代えてください!
(森井)宮崎先生あの…今夜空いてます?えっ?
(火箱)私にできることがあったら何でも言ってくださいね。
私帰りますねやっぱり。
いいんです。
いてください。
岸先生は何で病理医になったんですか?
(細木)あいつもともと臨床医よ。
(中熊)あんなふうに育てた覚えないんだけどね。
標本の方がよっぽどいいぞ。
嘘はつかないし感情をむき出しにもしない。
面倒くさくない。
患者に興味ないふりしてるだけでしょ?カッコつけんじゃないわよ!お前は嘘をつきたくなくて病理に来たんじゃないのか?2016/01/20(水) 22:00〜23:09
関西テレビ1
フラジャイル #02[字][デ]【長瀬智也主演!僕の言葉は絶対だ!!】
10秒で診断が決まってしまう救命救急の現場と100%の診断を求める岸が激突!患者の命を救うために、幻覚を見る原因不明の病気を突き止めなくてはならない!
詳細情報
番組内容
岸京一郎(長瀬智也)に認められ、宮崎智尋(武井咲)は病理診断科で働くことになった。しかし、岸は宮崎に何かを教えようとするそぶりはまったくない。また、宮崎は森井久志(野村周平)からも「自分は技師だから助言はしない」と言われてしまう。そんな職場ということで、今までに来た医師はすぐに辞めていた。部長の佐田直人(津田寛治)は「こんな状態だと病理診断科の存在がなくなる」と岸を諭すが、岸は別の病院へ
番組内容2
行くだけだと意に介さない。
病理診断科に細木まどか(小雪)が現れた。昨日のコンパの成果を聞く森井に、細木は「10秒で帰りたくなったが5分我慢した」と答える。岸は細木の10秒という言葉に何かを思う。
岸は宮崎を救命救急へ遣いに出す。昨日搬送された患者、大塚洋治(林和義)についての岸の判断だ。救命医の倉木浩介(藤本隆宏)は急性アルコール中毒と診ていたが、病理診断科に伺いを立てたのだ。宮崎は倉木に
番組内容3
要件を伝える。岸は詳しい診察が必要だと促していたが、倉木は自分の診断を曲げようとしない。挙げ句、倉木は岸からの書類をゴミ箱に捨ててしまった。
岸は宮崎に「倉木が考えを変えるような医師ではない」と断言。戸惑う宮崎に、岸は「決定的証拠を突きつけなければいけない」と告げる。
すると宮崎は「席を空ける」と言って飛び出してしまった。宮崎は大塚が営む時計店に、彼の妻、佐知代(宮地雅子)を訪ねると…。
出演者
長瀬智也
武井咲
野村周平
津田寛治
・
小雪
・
北大路欣也
他
スタッフ
【原作】
「フラジャイル」原作・草水敏 漫画・恵 三朗(講談社「アフタヌーン」連載)
【脚本】
橋部敦子
【音楽】
林ゆうき
橘麻美
【主題歌】
TOKIO「fragile」(ジェイ・ストーム)
【編成企画】
成河広明
池田拓也
【プロデュース】
小林宙
【演出】
石川淳一
城宝秀則
【制作】
フジテレビ
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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