甘利経済再生相に、現金のやりとりがからむ重大な疑惑が浮上した。

 甘利氏はきのうの参院決算委員会での野党の追及に、「調査して、説明責任を果たしていきたい」と答えた。当然である。事実関係を徹底的に調べ、包み隠さず説明する責任が、甘利氏にはある。

 週刊文春が報じた疑惑は、甘利氏と衆院神奈川13区の地元事務所の秘書が、千葉県の建設会社側から総額1200万円の現金や飲食接待を受けていた疑いがあるというものだ。

 建設会社の総務担当者は、社の隣接地の道路建設をめぐる独立行政法人都市再生機構(UR)との補償交渉にあたり、甘利事務所に口利きを依頼。現金や接待は、その見返りだとするコメントを出した。

 報道によれば、会社側は大臣室と地元事務所で現金50万円ずつ計100万円を甘利氏に直接手渡したという。

 甘利氏はきのうの答弁で、建設会社の社長らに会ったことは認めたが、現金のやりとりなどについては「そこで何の話をされて、どういうことをされたのか、いま事実関係は記憶をたどっているところだ」と、あいまいな説明を繰り返した。

 それ以外の報道内容については「初めて知った」「半信半疑で、ウソじゃないかと思った」などというばかりだ。

 事実であれば、国会で野党議員が指摘したように、政治資金規正法だけでなく、あっせん利得処罰法に反する疑いがある重大な事案である。

 甘利氏は第三者を交えて調査するというが、ごまかしは決して許されない。

 安倍政権では、小渕優子氏や松島みどり氏らが「政治とカネ」の疑惑で相次いで閣僚を辞任した。いまの内閣でも高木復興相の選挙区内での香典支出問題がくすぶっている。

 甘利氏は、2006年以来、安倍内閣で経済関係の閣僚を歴任し、いまは成長戦略や環太平洋経済連携協定(TPP)を担当している。安倍内閣の経済政策の要であり、首相の側近中の側近と言っていい。

 首相は甘利氏の疑惑について、きのうの国会で「政治家として説明責任を果たしていくと確信している」と語った。

 事実関係を明らかにするのは一義的には甘利氏の責任であるとしても、週刊文春の記事にはURを所管する国土交通省の局長についての記述も出てくる。

 政権の姿勢が問われる事態だ。首相は内閣を挙げて全容解明の努力をする必要がある。