東日本大震災で壊れた高速道路の復旧工事の入札で談合があったとして、東京地検特捜部と公正取引委員会が強制捜査に乗り出した。

 5年前の光景を思い出そう。あの巨大な揺れや津波で無残にねじ曲がり、崩れた道路が、少しずつ工事で形を取り戻していく。多くの国民が復興への希望を見いだしたはずだ。

 その「震災復興」という大義に隠れて、業界が結託して不正を働いたなら、被災地への背信行為だ。被災者の足元で営業を続けながら、業者は自らの利益を優先していたことになる。

 捜査当局は全容解明に力を尽くしてほしい。

 問題となっているのは、東日本高速道路(NEXCO東日本)東北支社が発注した12件の舗装工事だ。総額176億円。予定価格に落札額が占める割合(落札率)は、約95%だった。

 旧道路公団が約10年前に民営化されて以来、高速道路の工事は利用料を財源としている。だが、今回問題となった工費のほとんどは国の復興予算でまかなわれた。支えているのは所得増税などの措置だ。国民の負担が一部業者の不当な利益につながったならば、許しがたい。

 「原材料費が高く、高値で受注したかった」というのが業者の言い分だ。アスファルト合材が固まりやすいという特殊な事情もあり、受注地域を割り振ったとも供述しているという。しかし高値落札の出来レースを正当化する理由にはならない。

 同工異曲の図が、何度繰り返されてきただろう。

 業者の中には、十数年前にも、舗装工事の談合で公取委から排除勧告などを受けたところがある。東北を舞台にしたゼネコン談合事件もあった。95年の阪神大震災では、当時の建設相が談合防止を業界に求めた。業界自身に自浄力がないのか、疑われても仕方ないだろう。

 今回は発注者がチェックできなかったのかも疑問だ。

 入札前には、談合を告げる匿名情報がNEXCOにあったという。誓約書を書かせて入札をおこなったが、落札率は10年度より10ポイント超も高かった。

 被災地では、人件費の高騰などのために、工事の受注を希望する業者があらわれない「入札不調」が珍しくない。手続きを急ぎたいという心理が、発注者側になかっただろうか。

 震災から、近く丸5年を迎える。インフラ整備に巨額の税金が落ちる一方で、本当に地元の役に立つ使われ方をしているのか。今回だけでなく、政府はしっかりと監視する必要がある。