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ひそかブログ

アニメでするリアルの話、リアルでするアニメの話。そういうのが好きです。

僕だけがいない街 OP映像の感想 - 傍観から能動へ4章仕立てのストーリー

アニメ感想・アニメ関連の話

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アニメ「僕だけがいない街」のオープニング映像がストーリー仕立てで面白いです。絵コンテと演出を担当されたアニメ「僕街」の監督・伊藤智彦さんは、オープニングアニメーションにどんなストーリーを込めようとしたのか? 興味を惹かれたので何度か視聴しその意図を探ろうと試みました。


原作は既刊7巻のうち6巻までが既読。
以下、多少「僕街」のネタバレを含むかも……


まずは主題歌についてです。

僕街OP曲の歌詞と動画

OP曲の担当はASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)で曲名は「Re:Re:」
曲名の読み方はアールイーアールイーで意味は返信(Re:)に対する返信(Re:)ぐらいかなと思います。

「Re:Re:」はアジカン2枚目のアルバム「ソルファ」(2004)に収録されていますが、再度シングルとして3/16に発売予定になっている曲です。

僕街OP曲の歌詞と動画

(歌詞)
君を待った
僕は待った
途切れない明日も過ぎて行って
立ち止まって振り返って
とめどない今日を嘆き合った

記憶だって 永遠になんて残らないものとおもい知って
僕はずっと掻きむしって 心の隅っこで泣いた

そしてどうかなくさないでよって
高架下、過ぎる日々を
後悔してんだよって そう言い逃したあの日

繋ぎ合った時もあった
ほどけない感情持ち寄って それが僕のすべてだった
それもたった今 失くしたんだ

形だって 時が経って変わりゆくものとおもい知って
僕はずっと掻きむしって 塞がれた今日を恨んだ

そしてどうかなくさないでよって
高架下、過ぎる日々を
後悔してんだよって そう言い逃したあの日

君を待った
僕は待った
途切れない明日も過ぎて行って
僕は今日も掻きむしって 忘れない傷をつけているんだよ
君じゃないとさ

(※緑文字がOPで使われている部分)


(動画)

(動画はいずれ削除されるかも。また以降の画像はこの動画から切り出しています)



OP映像を構成する4つのシーン

僕だけがいない街のOP映像は、大きく分けて4つのシーンで構成されていると思います。ざっと、

  1. 「導入部」 主人公・藤沼悟が「傍観者」な立ち位置
  2. 「リバイバル」シーン。シルエットの人物が大人から子供へと変化
  3. 「能動」のシーン。悟が積極的に関わろうとする立ち位置へ
  4. 「タイトル」のシーン。1.と対照的に誰もいない学校と映写室でエンド

という感じ。
じゃあ画像を貼りつつ、ひとつひとつ具体的に書いてみます。

それぞれについて具体的に

シーン1. 導入部

まずはモノクロの映写室から。
ほおづえをつき、やる気無さそうにモニターを見つめる悟と、ワクワクした様子でモニターを見つめる幼少時代の悟。

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次に画面は、一瞬だけ縦に並べた映写フィルムを高速で上PANするようなカットのあと、小学校へとうつります。生徒や先生を映しつつ、学校の廊下、下駄箱、階段、校庭をとらえていきます。

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それを大人の悟は、高い位置から微笑を浮かべて見下ろしています。
悟の位置は窓を一枚隔てた奥。どこか今の悟とは無関係な、彼の傍観者の立ち位置を表わしているように思えます。

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シーン2. リバイバル

しかし窓を隔てた奥側、悟側の方に異変が発生。激流にのみ込まれていきます。リバイバル(再上演)の発生イメージ。

リバイバルを象徴する、アニメ本編でも使われる渦巻き状の映写フィルム。
これをバックに、シルエットの人物が大人から子供へと変化していきます。人物のアクションは、両腕を振り回し頭を抱えながらのでんぐり返し。さらにしゃがんだ状態から一度つまづき、再度立ち上がろうとします。

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えっと… 
てっきりここは踊っているんだと思ってました(苦笑) 「すべてがFになる」に続いて、ノイタミナOPはダンスが続くなあと。しかし実際には、踊っているんじゃなくて、子供時代へと時間を遡行する様子を描写していたんですね。



次のカットは、悟とゆかりの深い女性3人をメインに。
青を基調にしたカットでは、女性たちの顔がハッキリと映り正面を見据えていますが、悟の方はソッポを向いたような状態。女性を紹介しつつ彼女達は正面(悟のこと)を見ているのに、悟の方は向き合わない。そんなイメージかと思います。

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一方、赤を基調にしたカットでは女性3人が暗く描かれ、奥の男性が帽子に手を当て、背中越しにこちらを凝視しています。赤のカットの男は第1話にも出てきた男。このカットのイメージするところは、
「男はいつも見てるぞ」
ぐらいじゃないでしょうか。

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赤と青、女性の明と暗、同じポーズの悟と男。それぞれ両者を対比した描き方になっていて面白いカットですね。


シーン.3 能動

陸橋の下、しゃがみこんで頭をかきむしる悟。
ここでは映像が歌詞とリンクしてます。歌詞の「僕は今日も掻きむしって」の部分。

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続いて刑務所と10個の静止時計がうつったあと、映像は悟のアクションシーンへと移行していきます。彼が傍観者から能動者へと変貌してゆく瞬間。

ここで描かれたカットをそれぞれ順番に列挙していくと……

―  陸橋の下、悟が頭をかきむしる、刑務所、静止した時計、女性と流血(太ももにアザ)、静止した時計、女性と流血(左腕に怪我)、ドクロと流血、女性と流血(まなじりに涙)、静止した時計、背中向けの悟が立ちあがる、時計が回り出す、逆風の雪を力強く進む、窓ガラスが爆発し炎上する、吹雪のなか雛月加代が遠ざかる、空にシャウトする子供の悟、弾丸のアップ、時計のアップ、屋上を背走する悟、ふり返りメガネの破片が飛ぶ、地上の駐車場へと落下する……

そして最後に。
画面がホワイトアウトし、3.が終わって4.へと移行していきます。

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ここで面白いのは時計の使い方かな。
ちょっとしたサブリミナル効果のように合計4回映る時計。静止静止静止ときて最後に回転し、さらに激しく回転するという時計のアクションがこちらの気持ちを昂らせてくれます。

OP映像を起承転結でいうと「転」にあたる、ターニングポイントのような一連のカットですね。猫背の悟が立ちあがり、時計が激しく回転し、吹雪を風上に力強く歩き、背中を向けた加代が去っていき、悟が空に向かってシャウトする。OPのクライマックスにあたる部分だと思います。


シーン4. タイトル

雪の降る街をバックに「僕だけがいない街」のタイトルがイン。

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ちなみに「僕だけがいない街」のフォントは「僕」から「街」に向けて変わっています。「僕」と「街」の文字を比較するとその差は歴然なんですけど、そこに込められた意図は何でしょうね? 謎だ…… 


最後は1.とは対照的に。
無人の小学校が3ヶ所映り、映写フィルムを今度は高速下PANしたカットが入り、モノクロ無人の映写室でジエンド。

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え~と……
映写フィルムがリバイバルで、最後に無人になる映写室は客席で傍観者だった悟が画面に入り込んだあとのイメージだと思うんですけど、無人の小学校は何のイメージなんでしょうね。「僕だけがいない街」じゃなくて「皆もいない小学校」みたいな。OPでまだよくわからない部分のひとつです。


傍観から能動へ4章仕立てのストーリー

原作マンガの「僕街」を読んで印象的だったのは、悟が傍観から能動へと変わっていったところです。
周囲に積極的に関わろうとしない、踏み込まないようにしていた傍観者の彼が、リバイバルを機に周囲に関わらざるを得ない当事者になり、自分の意思でこうしたいと能動的に動くようになっていくところでした。

OP映像の印象的なポイントも同じ。

- 傍観から能動へ -

そんな原作と同じイメージを、時計が動き出す前後のカットを核にし、起承転結で構成された4章仕立てのストーリーへと組み立てたところが面白いと感じました。導入部の傍観からリバイバル、能動からタイトルのエンディングへと。


伊藤智彦さんのインタビューによれば、この方はすでに2巻の発売後から、
「こんな面白いマンガがあるからアニメ化しませんか」
と動いていたようです。



僕街のオープニングアニメーションを見ていると、原作に深い愛着のある人がつくっているなあと感じます。とても趣向を凝らした映像ですね。


最後におまけ画像

OPでちょっと笑っちゃうのが、目元を黒く塗りつぶされた主要人物たち。
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何で黒塗りなんだろ…… よく分かんないけどニヤッときました。


OPでよく分からないところも多いですのが、そのうちのひとつが下のカット
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ドクロとその背後の流血はいったい何のイメージだろう…… 


コマ送りで見てたら、悟の割れたレンズに人が映っていました。
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スーツを着て銃を構えているように見えます。
芸が細かいなー (o ̄▽ ̄ φ)




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