しつけぇんだよ!待てこらっ!クソガキッ!頼む!金は…金は必ず返すから!そんな事は聞き飽きた!ぶっ殺してやる!
(銃声)アーッ!
(悲鳴)
(穂高美子)事件の概要を説明します。
借金を踏み倒して逃げようとした男Aに元暴力団組員で闇金業の男Bが発砲。
撃たれた男Aは全治2か月の重傷を負い発砲した男Bは駆けつけた警察官に緊急逮捕された。
ではあなたは男Bをなんの罪で起訴しますか?
私穂高美子は2か月前まで東京地検の検察官として様々な事件を扱ってきましたが春の異動で司法研修所の検察教官になりました
司法研修所とは最高裁判所の付属機関で司法試験に合格した年齢も経歴も全く異なる修習生たちが裁判官検事弁護士になるために一緒になって学ぶ場所の事です
飯山くんあなたは男Bを銃刀法違反ならびに殺人未遂で起訴すると起案しましたね。
(飯山伸也)はい。
男Bは厳罰に処するべきです。
街中で発砲するなんて許されません。
(男A)金は必ず返すから!ぶっ殺してやる!
(銃声)でも戸田さんは殺人未遂ではなく傷害罪で起訴すると起案しています。
(戸田正美)はい。
白表紙の70ページによると男Bは殺意はなかったと供述しています。
傷害罪が妥当だと思います。
白表紙とは実際にあった事件を名前や地名などの具体名を伏せた形でまとめた問題集です
修習生は検事になったつもりで白表紙を読み被疑者を起訴するかどうかを議論します
しかもBが撃ったのはAの太ももです。
(銃声)アーッ!もし本気で殺すつもりなら胸か頭を狙うはずです。
では事件を目撃した女Cの証言。
BがAに…。
…と言っていたという点についてはどう考えるの?あっ…!もしその証言が本当ならBに殺意があったのは明らかです。
でもその一方でB本人は…。
…と威嚇しただけだと供述。
あっ…。
Bは「ぶっ殺してやる」と言ったかもしれないし「こらっ!」と威嚇しただけかもしれない。
この様な特殊な状況では人間には見間違いも聞き間違いもある。
目撃証言の信憑性については常に注意が必要よ。
他に意見は?何か大切な事を見落としてない?Bには傷害の前科がありました。
だからもし「こらっ」と言っていたとしても決して口先だけの威嚇とは言い切れないと思います。
そのとおりです。
前科は重要な判断材料になります。
豊岡薫さん。
意見があるならどうぞ。
(豊岡薫)前科はそんなに重要でしょうか?豊岡さんは重要じゃないとでも言うの?現在と過去の犯行は切り離して考えるべきだと思います。
何も私は前科のある人から疑ってかかれって言ってるわけじゃないの。
被疑者の人となりを見極める材料の1つになるって言ってるの。
同じ事です。
決めつけてます。
そういう考え方をする人が法律を悪用するんです。
だったら答えて。
男Bが前に捕まった傷害事件で使った凶器は何?あっ…拳銃でした。
暴力団同士の抗争で発砲して懲役三年。
(坂本健二)あっ…!坂本さんわかったようね。
みんなに説明して。
はい。
一度でも拳銃を撃った事がある人はその大きな反動を体が覚えてしまい…。
引き金を引く瞬間に自然と腕に力が入り銃口が目標より下にぶれてしまう。
(銃声)アーッ!これがガク引きと呼ばれる現象です。
実際にこの事件の裁判では証人として呼ばれた元射撃選手が典型的なガク引きだと証言。
男Bの殺意が認定されて懲役七年の有罪判決を受けました。
来週からあなたたちは日本各地にわかれて実務修習に入ります。
実際の事件や裁判を通じて貴重な経験を積み将来の法曹界を背負っていく存在になれるようより一層の奮起を期待します。
以上です。
(山根浩平)穂高先生。
教官を辞めたいというのは本当ですか?私は現場向きの人間です。
教官には向いていません。
なぜ私が指名されたのか不思議でなりません。
(山根)「ぜひ君を…」と検事長に頼んだのは私です。
この目に狂いはないと思ったんですが…。
所長が?今の修習生たちはこれから1年の実務修習に出てそれが終わるとまたここで2か月の後期修習です。
現場に戻るかどうかは彼らが修了するのを待ってあげてからでもいいでしょう。
所長!しばし休廷。
おなかがすきました。
(小宮譲)お昼ご飯ですか?僕もご一緒しますよ。
今年来る検察教官が40近くて結婚できない堅物の女検事って聞いていたんでものすごいおばさんが来るのかと覚悟していたら穂高先生みたいな美人でびっくりしたんですよ。
とにかく先生辞めちゃだめですよ。
小宮先生その言い方は侮辱罪すれすれですよ。
私は弁護士所長は裁判官そして穂高先生は検事。
いつも裁判で争っている3人がこうやって腹を割って話せる場所なんて司法研修所しかないんですよ。
私は小宮先生に腹を割りたくなんてありません。
それに私は結婚できないんじゃなくてしないんです。
そんな怒った先生の顔も素敵って言ってくれる人が早く現れるといいですね。
小宮先生それ以上おっしゃるとセクハラになりますよ。
日本におけるセクハラ訴訟原告の勝訴率は9割です。
小宮先生どうやら和解に持ち込むのは難しそうですね。
いただきます。
これだから検事は融通が利かないって言われるんだよなぁ…。
なんですって?噂ですけどね先生の講義がきつすぎて修習生たちの中で検察志望者が減ってきているらしいんです。
まあ弁護士をスカウトしなきゃいけない私にすれば大助かりですけどね。
異議あり。
ある弁護士が講義中に修習生を無理やり勧誘しているのを見た事があります。
ああああ…よくできた!感動した!どうだい?僕の事務所に就職しないかい?私検事志望なんですけど…。
やめておきなよ検事なんて堅苦しい。
どっかの誰かさんみたいになっちゃうよ〜!なあ?アハハハハハッ!アーハハハハハハッ!私たち検事にしてみれば弁護士はいい加減すぎるんです。
小宮先生私の話聞いています?そんな事より先生の生姜焼き1枚頂けませんか?嫌ですよ。
でも先生のおぼんテーブルの私の境界を侵食しています。
侵食した分として1枚だけ…。
この定食は食券を購入して私のおぼんにのった時から完全に私の所有物です。
よって私はおぼんを動かします。
ならばわたくしは先ほどまで侵食されていた分の補償として生姜焼きを1枚欲しいと裁判所に請求します。
棄却されます。
受忍限度の範囲内です。
私だって小宮先生のさばの味噌煮が食べたいのを我慢してるんです。
裁判長。
静粛に。
穂高先生は小宮先生に生姜焼きを1枚。
小宮先生はさばの一切れを穂高先生に。
小宮先生は公判の準備と講義で疲れきっています。
ビタミンB1の豊富な生姜焼きを選択すべきでした。
穂高先生は肌荒れで困っています。
さばの味噌煮はB2が豊富です。
最初からそっちを選ぶべきでしたね。
これにて閉廷。
さすが山根名裁判長。
同じお皿でいいですか?あ…ご飯の上にお願いします。
じゃあ僕もお願いします。
豊岡さんあなたの実務修習はどこに決まったの?甲府です。
最初は甲府地検で次は弁護修習。
それから甲府地裁が半年かな。
そういえばあなたのご実家も甲府だったわね。
よかったじゃない。
別に行きたくて行くわけじゃありません。
まあそう言わずに頑張ってこいよ。
豊岡は最初から弁護士志望でね。
将来が楽しみなんですよ。
な!大丈夫です先生。
私弁護士以外になるつもりありませんから。
誰が検事なんて…。
穂高先生。
あいつに恨まれるような事何かしました?いいえ…。
キャー!1年間の実務修習を終えたあなた方は今日から2か月間の後期修習を経て卒業となります。
最後まで気を引き締めて頑張りましょう。
先生ちょっと…。
豊岡が殺人容疑で逮捕されました。
豊岡さんが…!?わかりました。
豊岡くんなんですが実務修習先の甲府で元恋人をナイフで刺し現行犯逮捕されました。
そんな…。
今のところ豊岡くんは完全黙秘だそうです。
かなり厳しい状況なんですかね?穂高先生甲府へ行ってきて頂けませんか?女性同士なら何かと話しやすいかもしれません。
わかりました。
豊岡さんあなた本当に…。
そう…私にも黙秘するのね。
私の事は村西先生に聞いてください。
村西先生?実務研修でお世話になった弁護士の村西先生です。
先生に全てお任せしてあります。
(津山猛夫)まさか現役の司法修習生が殺人を犯すとは…。
驚きましたよ。
現行犯逮捕だったそうですね?ええ。
昨夜11時30分被害者の佐久間登が胸から血を流して倒れてるそばで豊岡薫は凶器のナイフを手に震えていました。
被害者と豊岡さんが以前付き合っていたというのは本当なんでしょうか?はい。
2人は高校生の時付き合っていたそうで…こんな写真まで撮っていました。
佐久間の部屋にありました。
おそらくこの写真の事で佐久間にゆすられ殺害に至ったものと見ています。
これが豊岡さん…?被害者の佐久間登は高校卒業後東京で就職しましたが7年前にケンカ騒ぎを起こしてクビになってます。
それからは職を転々とし2年前から甲府の保険代理店に就職しましたが今年になって辞めてます。
ここのところ無職でしたがそのくせギャンブルにはまっていたようです。
豊岡が実務修習で甲府に戻ってると知った佐久間はこの写真をネタに100万円を要求。
2人が揉めている様子を喫茶店の店員が目撃しています。
ゆするつもり?
(佐久間登)いずれ検事か弁護士になるっていうのにこんな写真ばらまかれちゃまずいよなあ?何すんだよお前!もう顔も見たくない。
今度私の前に現れたら訴えるわ。
脅迫罪は2年以下の懲役または30万の罰金だから。
おい!豊岡さんはなぜもう一度会ったりしたんでしょう?佐久間からまた電話があったそうです。
金の入るあてができたから写真を返してやると。
それで写真を取り返しに行って事件が起きた。
ところが豊岡のやつここまで追及したところで急に黙秘ですよ。
今じゃ修習先の村西弁護士としか話をしません。
困ったもんです。
(村西壮吉)こんな形で穂高検事と再会するとは…。
あれからもう10年ぐらいになりますかね?あの公判ではいろいろとお世話になりました。
豊岡くんの弁護引き受ける事にしましたよ。
彼女は無実です。
弁護士になろうって必死になって勉強してる彼女が殺人なんて犯すはずがない。
さあどうぞ。
でもなぜ豊岡さんは殺人現場で凶器のナイフを手にしていたのでしょうか?それは彼女が死体に驚いて倒れた時にそばにあったナイフをつかんでしまった。
そこをたまたま通りかかった女性に目撃された。
ただそれだけの事ですよ。
偶然が重なったという事ですか?それだけじゃないんです。
その時彼女は佐久間を殺した真犯人を見てるんですよ。
真犯人を?
(村西)ええ。
彼女は現場から慌てた様子で立ち去ろうとする男の顔をはっきりと覚えていたんです。
これがねその時彼女が見たっていう男の似顔絵なんですよ。
これはうーん…彼女が言うにはやけどの跡じゃないかって。
この男さえ見つかれば豊川くんの無実は証明できるんです。
よろしくお願いします。
(村西)はい。
(ノック)失礼します。
(豊岡里子)先生…どうも。
(村西)お母さん。
あのこれつまらないものなんですけど…。
(村西)いや〜そんないつもほんとにもう…。
先生…薫の事お願いします。
はい。
豊岡くんのお母さんとお嬢さんです。
(里子)おいで。
(里子)こんにちは。
(豊岡恵理)こんにちは。
こんにちは。
豊岡くんに7歳の娘が!?それでご主人は?8年前に亡くなられたそうです。
そうですか。
で穂高先生の心証はどうなんですか?状況証拠は全て彼女の犯行を示しています。
私が捜査検事なら起訴状の下書きを始めていますね。
しかしその似顔絵の男の件も含めて今後新しい証拠が出てくれば…話は別という事ですね。
はい。
まずは村西弁護士を信じて待ちたいと思います。
判決を下すのはまだ早いのかもしれません。
疑わしきは罰せず。
当法廷は推定無罪の原則を守りましょう。
(村西)知ってる?この人知ってるんですか?ああ。
でも気の毒な事になったよな。
どういう事です?それ。
こいつは白木っていう市内で呉服屋をやってた男なんだけどこの間谷川岳で死んじまったんだよ。
死んだ!?穂高先生村西弁護士が豊岡くんの弁護を降りたそうです。
村西先生が降りた…!?先生なぜたった3日で弁護を降りたんですか?彼女には失望しました。
あぁ…あんな嘘をつくとは思いませんでしたよ。
嘘?この男の身元が判明したんです。
白木裕一。
甲府市内で白木屋っていう呉服屋を経営しているご主人でした。
しかしこの白木っていう男性…。
えーっと…。
豊岡くんの事件の3週間前にね谷川岳で遭難してるんですよ。
同一人物に見えますね。
やけどの跡もありますね。
でもねこの人が遭難してからもう3週間たってるんですよ。
生存は絶望的。
捜索も打ち切られました。
つまり豊岡が殺害現場で見たという男性はその時既に死んでいた。
念のため私その白木屋に行ってきました。
(白木由美)どうして今頃主人の写真を?いえあの…ちょっと拝借できないかなと…。
少々お待ちください。
はい。
(由美)こちらでよろしいでしょうか?ありがとうございます。
昨日その写真を彼女に見せました。
彼女言いましたよはっきりと。
この人です。
間違いありません。
私があの夜見た男はこの人です。
で先生はなんと?私は彼女に言いました。
罪を認めて情状酌量を得ようって。
でも彼女は…。
無実なのに罪を認めろとおっしゃるんですか?佐久間が悪いやつだっていう事はみんなわかってるんだ。
だから情状酌量を求めた方がいい。
嫌です。
私は…無実です。
死んだ人間を見ただなんて…。
ねえ…。
これじゃあ私も弁護のしようがありませんよ。
豊岡薫ですか?相変わらずですよ。
村西弁護士にも見放されたっていうのに…。
どうぞ。
私に任せてください。
は?自白させます。
私になら話をしてくれるかもしれません。
私はおいしい事件ばかり引き受けている村西弁護士とは違うんです。
3週間前に死んだ人間が目の前で人を殺しただなんてどうしてそんなむちゃな事を言うんだ?小宮教官も私が嘘を言ってるっておっしゃるんですか?しかし見間違えという事もあるだろう?見間違えなんかじゃありません。
豊岡さん目撃証言がいかに曖昧かって事は講義で何度も取り上げたでしょ?私はあの男を見ました。
間違いありません。
お願いします信じてください。
5月15日群馬県谷川岳で登山客の白木裕一さん36歳が遭難。
一緒に登山したのは大学時代の友人副島五郎さん36歳。
甲府市内でスーパーを経営してます。
この日は途中から悪天候になり副島さんは山小屋に引き返して無事でしたが白木さんは1人で頂上を目指しそのまま消息を絶ったそうです。
穂高先生はどう思われますか?先生がこの事件の担当検事だったら例えば今日で勾留期限の10日が過ぎたとしましょう。
穂高検事は被疑者豊岡薫を起訴しますか?それとも釈放しますか?勾留延長を求めます。
あと10日間考えさせてください。
この前は私なら起訴状の下書きをすると言っていましたよね?それが勾留延長とは…。
有罪の確信がぐらついてきたという事ですか?どうしてもわからないんです。
こんなに不利な状況に追い込まれてもなぜ豊岡さんがあそこまではっきりとあの男を見たと断言できるのか…。
わかりました。
豊岡薫の本当の勾留期限は今月13日。
勾留延長されれば23日。
それまで豊岡の処分についてはもう少し様子を見ましょう。
はい。
穂高先生その辺で1杯やりませんか?だめですか…。
仕方がない。
かみさんと家飲みするか。
誰が検事なんて…。
え?あっすいません。
考え事してました。
そういえばいつか言われてましたね豊岡に。
「誰が検事なんて」って。
あの時の事を思い出していたんです。
豊岡さん私に恨みでもあるんでしょうか?今日も私には何も話してくれませんでした。
先生はご自分が修習生たちになんと呼ばれているかご存じですか?私にあだ名があるんですか?タカビー。
穂高の「高」と美子の「美」でタカビー。
タカビー…。
私が高飛車って事ですか?先生は優秀ですからね。
修習生たちにはいつも上から物を言ってるように聞こえちゃうんですよ。
ちなみに私のあだ名は小宮譲の「譲」が変形してゆる男。
ゆるゆるずるずるゆるーい男だからタカビーよりは話しやすいのかもしれませんがね。
(ため息)
(恵理)おばあちゃん…。
(里子)うん?お母さんいつ帰ってくるの?もうすぐ帰ってくるよ。
今ね一生懸命お勉強頑張ってるからもうちょっとだけ待ってあげてね。
ふーん…お母さんって偉いね!そうだよ。
私にとっては自慢の子だよ。
恵理…。
(ドアが開く音)豊岡薫は来週の月曜13日に起訴される事になりました。
そうですか…。
では豊岡は?依願退職させるよう最高裁事務局から言われました。
自分から辞めた形にしろって事ですか?まあそんなところでしょう。
しかし誰がそれを豊岡に伝えに…。
私が行きます。
今日私が来たのはあなたに退職願を書いてもらうためです。
もう私たちはあなたをかばいきれません。
早く被疑事実を認めた方がいいと…。
豊岡さん…。
お断りします。
え?私は辞めません。
私は弁護士になる。
石にかじりついてでも弁護士になってやる。
あなたたちみたいに前科があるからだめなんだって決めつけるような検事から無実の人間を守る弁護士になる!それどういう事?誠一さんは…夫は無実でした。
傷害の前科はあったけど心を入れ替えて真面目に働いてた。
それをあなたたちは…。
ご主人に何があったの?会社のお金がなくなった時真っ先に前科のある誠一さんが疑われて…。
警察も検事も決めつけてかかった。
結局会社の社長が不渡りを出すのを恐れての狂言だってわかった。
でも誠一さんの前科がばれてしまった…。
心労が重なった誠一さんは倒れてそのまま…。
彼を犯人だって決めつけた検事は葬式にも出なかった。
一度だって謝ってくれなかった。
今回だってそうです。
罪を認めろ。
情状酌量だ刑が軽くなるぞ。
娘に悪いって思わないのかって…。
やってないのになんで容疑を認めなくちゃいけないんですか?法ってなんですか?ささやかに必死に生きてきた人間の最後の光を奪うのが法なの?検事なの?答えてよ!あなた教官でしょ。
いつも偉そうに私たちの事バカにしてるくせにこんな簡単な質問にも答えられないの?退職願は書きません。
絶対に。
ここはスポーツジムの女子更衣室。
男Aは偽名を使って女性としてジムに入会。
ロッカーの中の財布から金を抜き取っては生活費に充てていた。
キャー!キャー!おい!おい!黙れよおい!静かにしろ!静かにしろ!おい!なんなんだよ静かにしろ!おい!どけよお前!黙れ黙れ!静かにしろー!ではあなたは男Aをなんの罪で起訴しますか?窃盗罪は成立していますがナイフで脅した行為をどのように評価するかが問題ですね。
飯山くんは強盗罪で起案したようね。
(飯山)はい。
男Aは窃盗の後逃げるためにナイフで女性たちを脅したのですから刑法238条の事後強盗罪になります。
(正美)でも犯人のナイフは確かに殺傷能力があるわけだから単なる脅しではなく殺意があったと見るべきじゃない?これだけでも殺人未遂になると思うけどな。
いやぁナイフを構えただけじゃ実行の着手にはなりません。
これで殺人未遂はないよ。
(刺す音)
(佐久間)うわっ…!でもこの男Aには呆れるわ。
ジムに入会して1年たつんでしょ?1年間も男だって事がばれずに女になりすましてたって大した女装術よね。
研究熱心なんでしょう。
金のためならなんでもありです。
(坂本)そりゃ私だって1億2億もらえるってわかってるんなら女装だってなんだってしますよ。
(一同の笑い声)
(薫)法ってなんですか?ささやかに必死に生きてきた人間の最後の光を奪うのが法なの?検事なの?
(飯山)教官!教官はどう思いますか?ああ…なんの話だっけ?お金のためなら人はなんでもできるのかって話ですよ。
もし何億もの大金が入るとわかってればたとえ1年間女装し続けろと言われてもまあできるかなとか。
そうね大金のためなら1年くらいはね…。
谷川岳の遭難事故は偽装かもしれません。
偽装?白木裕一が生きているっていうんですか?はい。
狙いは危難失踪宣告です。
危難失踪宣告…。
失踪宣告には2種類あります。
普通の行方不明なら失踪宣言まで7年待つ事になる。
でも山岳遭難などで行方不明の場合1年たっても消息がつかめなければ危難による失踪宣告を請求できる。
そして危難失踪宣告が確定した場合失踪者は死亡したものとみなされ保険金ならびに財産は遺族の手に渡ります。
つまり穂高先生がおっしゃりたいのは…。
白木裕一が危難失踪宣告を悪用した保険金詐欺を企てたとすれば彼はまだ生きていて今もどこかに潜伏しているはずです。
これなら死んだはずの男を見たという豊岡さんの主張とも合致します。
異議あり。
確かに遭難を装って1年以上姿を消せれば法律上は死亡扱いになります。
でもそのためには1年以上も身を潜めてなければなりません。
そんなむちゃな事をするはずがありません!異議を認めます。
所長!穂高先生異議を覆すにはその白木という男が今もまだ生きているという事を証明するしかありません。
わかりました。
うーんこれが白木裕一の呉服店ですね。
そうガツガツしないで私に任せてください。
今日は何本買っちゃおうかなぁ。
うん…これもこれもこれも!さあこっちおいで美子これ全部君にぴったりだよ。
ちょっと美子って…。
(菅野利江)あらどれもよくお似合いですよ奥様。
奥様!?照れる事ないだろ美子!ねえ?ねえ!あの…あちらの写真はお店のご主人ですか?はい白木社長でございます。
そういえばご不幸があったとお聞きしましたが…。
3週間前に山で遭難して亡くなりました。
では奥様もさぞお悲しみでしょう。
まあ遺体が見つかるまではまだ帰ってくる可能性があるって気丈に振る舞ってらっしゃいますけど。
あの…今奥様はどちらにいらっしゃいますか?近くの喫茶店にちょっと…。
あっ呼んでまいりますねはい。
あっごめんなさい。
今呼びに行かない方がいいかもしれない。
女同士でね今大事なお話し合いしてるんです。
あのね近所で花屋をやってる平石奈津子って女なんですけどこれがとんでもない女でね。
ここだけの話その女旦那様の愛人だったんですよ。
ふふふふ…。
(由美)いい加減にして!あなた何言ってるの?
(平石奈津子)ごまかそうとしたってだめよ!
(由美)あなたしょせん金目当てでしょ?そんなんだからねうちの人に愛想つかされるのよ!すみません!白木由美さんですよね?二〜三お聞きしたい事が。
聞き方が堅いんですよ!奥さんちょっとお話いいですか?さあ!さあどうぞ。
さあ。
(由美)東京の弁護士さんが私になんの用ですか?実はわたくしたち山岳遭難事故について調査をしている者でして。
亡くなったご主人の件についてお話を…。
主人は死んでません。
え?私はそう信じています。
周りの人はもう諦めろって言うんです。
でもまだ遺体だって出てきてないじゃないですか。
私はこんなに主人の事を思ってるのにあの人は私の事を裏切ってたんです。
(由美の声)あの女が私から主人を奪ったんです。
あの女が主人をたぶらかしたんです。
そうじゃなかったら…主人が私を裏切るはずがない!あの様子じゃ保険金詐欺なんて全く考えていないって感じですね。
そんなのわかりませんよ。
女なんて涙ぐらい簡単に流せる生き物なんですから。
ほうそれは実に興味深い。
穂高先生の豊富な実体験に基づく実に含蓄のあるお言葉ですな。
小宮先生!とりあえず私はさっきの女性白木裕一の愛人とやらを探ってきますんで先生は登山仲間の副島さんを当たってください。
わかり…。
(ため息)すみません。
はい。
あの社長さんいらっしゃいますか?
(副島五郎)まあ大体いいかな。
あとはこれ10ケース発注しといて。
はい。
あとはそうだな…。
これを…。
(店員)社長!お客様です。
(副島)そうですか白木の事を…。
詳しくお話聞かせて頂けませんか?
(副島)あの日谷川岳に行こうと言い出したのは白木の方でした。
どうしても頂上に立つんだって。
でも天気予報は悪くてその予報どおり途中から荒れだして…。
白木!やめよう。
もう無理だ!
(白木裕一)俺は大丈夫だ!お前は戻れ!しーら−きー!私がいくら止めてもあいつは聞かなかった。
仕方なく私は少し下ったところにある山小屋へ行って彼の帰りを待ちました。
でも白木さんは帰ってこなかった。
そして翌日の午後…。
遺留品発見!集合!
(副島)山の中腹であいつの荷物が発見されました。
でも白木の姿はどこにも見つからなかった。
あの時私が殴ってでもあいつを引き止めていたらと思うと…。
私が…私があいつを殺したようなもんなんです!4年前からあの花屋さんと白木屋のご主人が不倫を…。
彼女の名前は平石奈津子。
以前は関西の方に住んでいたそうです。
これじゃ奥さんが怒るのも無理ないですね。
こんな近場に愛人がいたなんて。
それとちょっと興味深い話を耳にしたんですよ。
あくまでもさ噂だけどさ白木屋さん商売うまくいってないみたいだよ。
あの立派なお店だってとっくに抵当に入ってるらしいんだよ。
でもさあの奥さん優しい顔して強気だよ。
絶対に店を立て直すんだって言って…。
京女の意地かね。
あの奥さんは京都の方ですか。
でも立て直すってどうやって…。
噂だけどね…あくまでこれ噂。
旦那さんにかけられてた生命保険を当てにしてるじゃないかって。
はは…噂だよこれ。
豊岡さんの事件の被害者の佐久間登は今年の春まで甲府生命の代理店に勤めていました。
えっ?もしさっきの噂が事実だとしたら…。
私たちいよいよ事件の核心に近づいてきたみたいですね。
では早速その保険代理店に行ってみましょう。
聞いても何も教えてもらえませんよ。
大丈夫。
そんな時にこそこの弁護士バッジが役に立つんです。
(社員)確かにご契約ありますね。
えっと去年の11月です。
白木裕一様は2億円の死亡保険にご加入されてます。
契約を担当されたのは?
(社員)佐久間ですね。
今年の春まで弊社の社員だった佐久間登です。
あの保険金の受取人は誰になっていますか?
(社員)えっと…平石奈津子さんという女性の方ですね。
驚いたな。
契約を担当したのが佐久間で…。
受取人が平石奈津子だったなんて。
あれ?あのバイクさっきもあそこに止まってませんでした?小宮先生どこ行くんですか?駅こっちですよ!先生たまには一緒にお食事でもどうですか?いい店知ってるんですよ。
まだおなかすいてないんですけど。
ごめんください。
(里子)いらっしゃい!このお店って…。
豊岡くんの実家です。
ポテトサラダが人気のお店なんですって。
あの確か村西先生のところでお会いした…。
はい穂高です。
こちらは民事弁護の小宮教官です。
はじめまして小宮です。
豊岡くんのお母さんですね。
はい。
どうぞこちらに。
実は私たち豊岡くんの事件を調べ直しているんです。
ほんとですか!ああ…よろしくお願いします!豊岡さんの亡くなったご主人の話お聞きしました。
あの子はずーっと苦労してきたんです。
父親を早くに亡くして小さい時からこのお店の手伝いしてくれて…。
高校生の時にね一度道を踏み外しそうになったんですけどでもやっといい人にめぐり会えてこれからっていう時に…。
あなた…。
あなた…。
(里子)薫は恵理を産んだ後いきなり弁護士になるって言い出したんです。
誠一さんのような人を救うんだって。
ふふっ…私の娘ですから頭悪いし無理だって言ったんですけど。
恵理ちゃんを育てながら司法試験の勉強を…。
(里子)ポテトサラダあがったよ。
(薫)はーい。
(里子の声)昼はお店で働いて…。
はいお待たせしました。
(里子の声)恵理を寝かしつけてから毎日徹夜で法律の勉強をしてました。
絶対に司法試験なんか受かるわけないって言われ続けて7年…7年かかってやっとの思いで薫は司法試験に受かったんです。
なのに…。
(ドアが開く音)
(恵理)ただいまー。
(里子)あっおかえり。
恵理ちゃんごあいさつなさい。
こんにちは。
(美子・小宮)こんにちは。
あのねこの方たちはねお母さんの先生だよ。
お母さんお勉強頑張ってる?恵理のお母さん弁護士さんになるんだよ。
(里子)恵理ちゃんお夕飯の前に手を洗っておいで。
はーい。
あの…本当に薫の事よろしくお願いします。
(山根)豊岡薫の言ってる事は本当だったか。
白木裕一には2億円の死亡保険がかけられていました。
しかもその保険を担当したのが豊岡さんの事件の被害者佐久間登です。
これでついに白木と佐久間がつながったわけですね?ただ妙な事に保険金の受取人は白木の奥さんではなく平石奈津子という白木の愛人なんです。
つまり白木は妻に内緒で愛人と2億円の保険金詐欺を企て遭難を偽装したという事ですね?白木裕一は自分の失踪が認定されるまでの1年数か月をどこかに身を潜めて待つつもりでした。
ところがそれを佐久間に気づかれてしまった。
佐久間はギャンブルにはまり金に困っていました。
そんな時遭難したはずの白木を見かけて…。
白木?佐久間は白木の企みに気づき白木を脅した。
金づるをつかんだ佐久間は豊岡さんにゆすりで使おうとした写真を渡すと言ってきた。
なるほど筋は通りますね。
でも計画の発覚を恐れた白木は佐久間を駐車場に呼び出し殺害した。
(刺す音)うわっ…!その時現場から逃げる白木とすれ違った豊岡くんが誤認逮捕されてしまったというわけです。
あとは白木裕一の潜伏先さえつかめれば豊岡さんは無罪放免です。
今からならまだ後期修習にも間に合います。
わかりました。
早速甲府地検の担当検事に報告しましょう。
ただし我々はもう後戻りできませんよ。
(2人)はい。
あっ…所長!
(アナウンサー)「谷川岳で行方がわからなくなっていた白木裕一さんが今朝谷川岳の二ノ沢付近で遺体で発見されました」「所持していた運転免許証から遺体は先月15日に遭難し行方不明だった白木裕一さんと見られています」白木裕一はやはり3週間前に死んでいた…。
そんな…。
あの男は本当に死んでた?ああ白木は先月遭難して死んでたんだ。
豊岡お前が佐久間を殺したんだろ?穂高先生もう諦めましょう。
やはり豊岡くんは嘘をついていた。
5月15日に死んだ人間が31日に人殺しができるはずなどありません。
それはわかっています。
でも…。
このまま諦めてしまって本当にいいんでしょうか?何しに来たんですか?もう私には用はないはずです。
あなた私に聞いたわね。
法って何?って。
私すぐに答えられなかった。
そんな事を聞かれるなんて思ってもみなかったから。
でも今なら答えられる。
あなたの言うとおりよ。
法は人を守るためにある。
光を奪うためにあるわけじゃない。
光を与えるためにあるはずだった。
ごめんなさい謝ります。
あなたのご主人を犯人と決めつけて光を奪った。
結果として死に追いやった。
その検察の1人として謝ります。
ごめんなさい。
それだけ言いたくて来たの。
頑張ってね。
私はあなたの無実を最後まで信じている。
教官…。
私はあなたを信じてる。
でも私が目撃した男は先月死んでたんですよ。
それなのに教官は私の事…。
あなたの言う事が本当ならきっと何かトリックが隠されているはずよ。
私がそれを見つける。
だからあなたは諦めないで。
もし起訴されても無罪判決が出れば修習生に復帰できる。
でも私には信頼できる弁護士はいません。
国選弁護人も村西先生と同じように罪を認めて情状酌量を求めるよう言うはずです。
その時は私が弁護する。
教官が?まさか教官も検事も辞めて…?そんなのむちゃです!むちゃでもなんでもないわ。
弁護士登録すれば私はあなたを弁護できる。
だから私を信じて最後まで頑張りましょう。
教官…。
やっとあなたと心がつながった。
久しぶりですね穂高検事。
いや今は教官でしたね。
で今日のご用件は?白木裕一という方の遺体について教えてください。
まず遺体は本当に白木裕一本人でしたか?はい。
DNA鑑定で一致しました。
死因は?凍死です。
死亡推定時期は遭難した3週間前?状況としてはそう思われますが遺体は既に火葬されて奥さんに引き取られました。
今となっては調べようがありませんね。
そうなの!?相変わらず手厳しいですなぁ。
ごめんなさい検事の癖が抜けなくて。
では遺体発見の経緯は?昨日の朝谷川岳の登山センターに二ノ沢近くで登山服らしきものが見えたと男性の声で匿名の電話がありました。
匿名?すぐに捜索隊を二ノ沢に向かわせたところ…。
他に遺留品はありませんでしたか?えーっと…。
あの…ちょっといいですか?このライターの指紋は?指紋は2つ出まして1つは白木本人もう1つは平石奈津子って女性の指紋でした。
平石奈津子?大月シティーホテル…。
(武田三郎)ああこの人。
刑事さんからも聞かれたんですけど記憶にないんですよ。
宿泊名簿にも名前はありませんでした。
そうですか。
ではこの女性はいかがですか?あっこの方…。
覚えていらっしゃいますか?ええ今月の一日の夜から四日の朝までこちらにお泊まり頂いてます。
見間違いではありませんよね?3日目の晩に外出されたきり戻ってこられなかったのでよく覚えてるんです。
この女性は1人で泊まったんですか?いえ男性の方と。
そういえばその写真の男性のような…。
もう一度よく見てください。
(武田)似ているような気もしますがキャップをかぶってマスクしてたので…。
この女性が消えた3日目の夜は2人で外出したんですか?確か男性の方が先にお1人で外出されたと思います。
女性の方はそちらのロビーで携帯を握り締めながら連絡を待っていたようで。
(携帯電話)私よ。
あなたなの?えっ…どうしたの!?誰…?誰なのあなたは!やはり豊岡の事件は諦めきれませんか?私はこれまで検察官として証拠の積み重ねこそが真実を導くと信じてきました。
確かに今回の事件では豊岡さんの供述を裏付ける証拠もなく彼女にとっては明らかに不利な状況です。
でももう一度豊岡さんと会って心の整理がつきました。
今回は彼女の強い気持ちに…折れない心に私はかけてみたいと思っています。
穂高先生何か新たにつかんだ情報があるんですね?はい。
やはり白木裕一は谷川岳の遭難を偽装した後しばらく生きていたと思われます。
ひそかに下山した後大月市内のホテルで奈津子さんと隠れていた可能性が高いです。
その後何者かによって殺され谷川岳で凍死体となって発見された。
谷川岳で発見された遺体についてもはっきりしない点が多いようです。
既に火葬されてしまったので死亡推定時期については調べようがないですし登山センターに入った通報が匿名だったという点も気になります。
1週間捜索しても見つからなかった事を考えるとあまりにも突然発見されたようにも思えますしね。
一連の事件を解くカギとなるのは白木裕一が大月市内に潜伏していた間に何が起きたのか…。
それを知っている人物は…。
平石奈津子です。
明日の白木裕一の葬儀に参列して話を聞いてきます。
(副島)「白木なんで死んだ…」
(副島)「俺のせいだ」「俺が胸ぐらつかんででもお前を止めていたらこんな事には…。
白木…」「しーらーきーっ!」あの…あの奥様。
あっやっぱりこの間の…。
来てくださったんですかありがとうございます。
あのすいませんちょっと用事がありますので。
(奈津子の悲鳴)奈津子さん…!奈津子さん!奈津子さんしっかりして!
(バイクが走り去る音)
(救急車のサイレン)穂高先生驚きました。
小宮先生…。
(足音)事故が遭ったって聞いたんで。
どうなんですか?意識不明の重体です。
死ぬかもしれないんですか?いい気味。
自業自得よ。
人の夫を奪ったバチが当たったんだわ。
まさか私の事疑ってませんよね?私何もしてません!ちゃんとアリバイだってあります。
ずっと参列者の相手してましたから。
別にそこまで聞いてないじゃないですか。
行きましょう。
事件はまだ終わってなかったって事ですね。
一体誰がこんな事を…。
小宮先生私さっきの奥さんの表情ちょっと気になったんです。
えっ?口では自業自得って言っておきながら奈津子さんの事を心配していたような…。
まさか。
夫の浮気相手ですよ。
そうですよね。
そんな事…。
(バイクのエンジン音)あの男…。
あの男この間奈津子の店をのぞいていた奴じゃ…?今日の葬儀にも来ていました。
ジーッと奈津子さんをにらみつけて。
奈津子さんが会場を出たのはあの男から逃げるためだったのかもしれません。
逃げるため?それからバイク…。
奈津子さんを襲った犯人もバイクで逃げたんです。
(山根)平石奈津子の転落事故について山梨県警はどのような見解ですか?今のところ犯行を示す手がかりがないのでこのままだと事故として処理する事になりそうです。
県警では佐久間殺害事件と白木の遭難事故そして今回の奈津子の転落事故をそれぞれ別の事件として扱うつもりのようです。
それにしてもなぜ奈津子さんは襲われたのかしら?まず保険金詐欺を企んだのは白木裕一と平石奈津子の2人。
そして白木が死んだ。
例えば保険金を独り占めしようとした奈津子が白木を殺害したとは考えられませんか?でその奈津子さんも襲われた。
つまりもう一人共犯者がいてその共犯者が奈津子さんを襲ったという事ですか?確かに白木の遺体を山に運ぶのは女1人では難しい。
第三の共犯者がいる可能性も十分考えられますね。
でも奈津子さんが死んでしまったら白木裕一の死亡保険金はどこかに消えてしまいますよね?いや消えません。
むしろもう下りてる頃かも。
えっ…?保険代理店に確認してみたところ白木の遺体が発見された直後に平石奈津子が保険金を申請しに来たそうです。
白木裕一の保険金が奈津子さんに下りても奈津子さんがもしあの転落事故で亡くなってしまったら誰にも奈津子さん名義の口座からお金を引き出せなくなりますよね。
奈津子を襲っても誰も得をしないって事か。
うーん…ますますわからなくなってきましたね。
何かが足りない何かが…。
奈津子さん!奈津子さんしっかりして!そういえば奈津子さんはなぜストラップを握っていたのかしら?そうですか。
ありがとうございました。
奈津子さんの所持品の中に携帯はなかったそうです。
つまり奈津子を襲った犯人の目的は奈津子の携帯を奪う事だった。
おそらく奈津子さんは携帯を奪われまいとして犯人と揉み合いになり…。
だからストラップだけが彼女の手に残ったんです。
そうすると彼女の携帯の中には犯人につながるなんらかの証拠が保存されていたって事ですか。
携帯電話の中に保存できるもの…。
着信の記録画像音声…。
(携帯電話)私よ。
あなたなの?えっ…どうしたの!?誰…?誰なのあなたは!奈津子さんは相手の声を携帯で録音していたんじゃないでしょうか?そしてそれを知った相手が彼女の携帯を奪った。
いよいよ謎が解けてきましたね。
でも先生謎が解けてきたと同時に迷宮入りが決定です。
もし携帯が見つかったとしても携帯を奪った犯人は録音データを既に消してしまっているでしょうからね。
そうですよね…。
(ため息)豊岡薫は13日に起訴されます。
起訴されれば私は残念ながら彼女の罷免手続きを行わなければなりません。
はい。
(携帯電話)はいもしもし。
課長!?「社長にばらすつもりなら容赦しない」「俺はなんでもやる」「娘はかわいいよなぁ。
白いワンピースが似合ってる」娘に何をするつもりだ!?商社の経理マン男Aは上司の経理課長男Bの使い込みを会社に告発しようとしていた。
男Bはそれを知ってこういう卑劣な脅し文句を並べた。
ただ男Bの脅しは結果的に口先だけに終わった。
男Aは社長宛てに告発のメールを送り男Bは背任罪で逮捕された。
問題はこの男Aに対しての脅しが犯罪を構成するかどうかだけど…。
では飯山くん。
男Bの罪名はなんだと考えますか?
(飯山)男Aを脅していたという事実について脅迫罪あるいは強要未遂罪適用のどちらかが問題となりますが…。
男Bは脅してないと供述してるわよ。
言い逃れですよ。
男Aは娘に危害を加えられる恐怖を感じたと供述している。
言った言わないの水掛け論にはなりますが…。
男Aが恐怖を感じた時点で男Aに対する害悪の告知にあたり強要未遂罪を構成すると思われます。
男Aも詰めが甘いわ。
脅迫電話がかかってきた時に携帯で録音しとけばよかったのよ。
確かに脅迫の内容が録音できてたら脅迫罪も適用されますしねぇ。
で録音したデータをいったんパソコンに移して社長宛ての告発メールに添付すればさらによかったんでしょうね。
携帯の録音をパソコンに移す…。
平石奈津子の転落事故は豊岡薫の事件とは無関係だと言ったはずですが…。
無関係ではありません。
奈津子さんは死んだはずの白木さんと行動を共にし白木さんからの最後の電話も受けていました。
その時彼女は白木の他に聞き覚えのない声を聞いてとっさに携帯で録音したはずなんです。
そしてそれを知った相手が彼女を襲い携帯を奪ったんです。
だとしても手遅れです。
携帯を奪った犯人はとっくにその録音を消去してるはずです。
でも奈津子さんは念のためパソコンにも録音データを保存していたかもしれません。
お願いです。
平石奈津子の部屋を調べてください。
いやそうは言われましても…。
津山刑事新しい証拠が出るのが怖いんですか?はあ!?奈津子さんの周辺を洗えば白木裕一が生きていた証拠が出るかもしれません。
そうすれば彼も佐久間殺しの被疑者として浮上する可能性があるんです。
起訴するという事は被疑者の人生を大きく左右する重大な局面です。
あらゆる可能性を探ったうえで慎重に証拠を積み重ねていくのは当然の事です!
(ため息)このパソコンを科捜研で詳しく分析して頂けませんか?わかりました。
あの男…!小宮先生!よし!どうして逃げる?あんた一体何者なんだ!?
(松村伸治)あんたらこそ誰や!?奈津子の周りをうろついて病院まで追いかけ回して!なんだって!?やめろ!俺は奈津子の亭主だぞ!亭主?まあ正しくは元亭主やけどな…。
一度惚れおうた仲や。
ヨリを戻そうと思ってもええやないか。
それやのに奈津子は由美の亭主とできとった…。
よりによって由美の亭主とやぞ!妙な録音データが見つかった?はい。
そのデータ聞かせてもらえませんか?もちろんです。
おい代わって。
お願いします。
わかった。
平石奈津子が意識を取り戻したそうです。
事情聴取できれば誰が彼女を突き落としたかわかるかもしれませんね。
奈津子さんが危ない!津山刑事調べて頂きたいところがもう1か所あります。
あっ!キャッ!来ないで!待ちなさい!もう全てわかっています。
奈津子さんの携帯を奪って突き落としたのはあなたの仕業ですね副島さん。
ハッ…私はそんな…。
奈津子さんを襲った目的あなたが恐れていたものはこれでしょう?
(操作音)
(奈津子)「私よ。
あなたなの?」
(白木)「俺だ。
殺される!」
(奈津子)「えっ…どうしたの!?」
(白木)「助けてくれ!」
(副島)「しーらーきーっ!」
(白木)「うわーっ!!」
(奈津子)「誰…?誰なのあなたは!」
(操作音)これは奈津子さんが携帯で録音しパソコンに保存し直していたものです。
この声は副島さんあなたの声ですね?
(副島)「白木…」「しーらーきーっ!」あなたが白木さんの葬儀で弔辞を読むのを聞いてあの夜の男の声の正体があなただとわかった奈津子さんは声を録音した携帯を突きつけて迫った。
白木さんを殺したのは副島さんあなただと。
ち…違う!白木はその3週間前に谷川岳で遭難して死んだんだ!凍死したあいつの遺体が二ノ沢で見つかったじゃないか!失礼する!
(津山)逃げても無駄ですよ副島さん。
先ほどあなたのスーパーの冷凍室を捜索したところ白木裕一さんの血痕が検出されました。
谷川岳から下山して潜伏していた白木さんをあなたは冷凍室で凍死させた。
そしてその遺体を谷川岳に運んで山で遭難して亡くなったように見せかけたんです。
副島さん全てを話してください。
俺は…。
最初は本当に白木の遭難が偽装だとは知らなかったんだ。
でもそのあとで思い出したんだよ。
以前あいつが一生遊んで暮らせる方法があるって言ってた事を。
危難失踪宣告を利用した保険金詐欺ですね。
(副島)ああ。
白木の呉服屋は潰れかけてた。
で俺のスーパーも赤字だった。
だから俺はあいつが生きてる事を秘密にしといてやる代わりに保険金の一部をもらう事にしたんだよ。
でも私たちが最後までわからなかったのはなぜあなたが携帯を奪うだけではなく奈津子さんをあんな目に遭わせたのかという事でした。
白木の保険金の受取人である奈津子さんが死んだら保険金の山分けどころか全額が遺産として扱われて奈津子さんの遺族の元に行ってしまうからな。
奈津子さんのご両親は既に亡くなっています。
そうなると遺族として遺産を受け取れる人物は奈津子さんの腹違いのお姉さんただ一人。
それは…。
(足音)由美さんあなたです。
白木さんと結婚する前のあなたの旧姓は平石。
平石由美。
何が言いたいんですか?奈津子さんの元旦那さんから事情は聞きました。
腹違いとはいえ奈津子さんはあなたの妹だ。
妹だったら姉の夫にあたる白木の保険金の受取人にもなれる。
しかも奈津子さんが死ねば保険金ごと遺産は全部姉のあなたのものになるってわけだ。
スーパーの冷凍室から白木の血痕と共に女性の毛髪が見つかってます。
鑑定すれば誰の毛髪かはすぐにわかるはずです。
保険金詐欺を思いついたのは白木です。
私との仲はもうとっくに終わってました。
保険金の2億円を2人で折半してあの人は私と別れて奈津子と暮らし私はお店を立て直すつもりでいました。
保険金詐欺では受取人が真っ先に疑われる。
だからあなたは保険金の受取人を自分ではなく奈津子さんにした。
あの日白木は遭難したように芝居を打ったあと谷川岳のふもとの駐車場に1人で下山してきました。
(由美)このあとの事大丈夫?ああ。
駅行ってくれ。
俺は当分身を隠す。
でも白木は決定的なミスを犯したんです。
(由美)決して顔を合わせてはいけない保険担当者の佐久間と街で会ってしまったんです。
白木?白木は佐久間に言われたそうです。
金を全部よこせ。
さもなければ警察に訴える。
もう佐久間を殺すしかなかった。
(由美)マンションの駐車場に佐久間を呼び出して…。
当座の金は持ってきたのか?ああ。
とりあえず200万だ。
(刺す音)うわっ…!
(由美)そこに佐久間と偶然待ち合わせしていた司法修習生の女が現れてまんまと逮捕された。
これで全てうまくいく。
そう思ってたのに…。
その白木をなぜ殺した?そうよ。
なんで!?あの人すっかりおびえていたの。
弁護士が写真を借りに来たって話をしたらもう自首をするって…。
私はあの人と副島を天秤にかけ副島に相談を持ちかけたの。
どういう事だ?なんでお前たちが…。
ああっ!助けてくれー!誰かー!
(副島の声)凍死を装うためにその場では殺さず意識を失わせたはずだった。
ところが…。
(操作音)
(携帯電話)私よ。
あなたなの?俺だ。
殺される!えっ…どうしたの!?助けてくれ!しーらーきーっ!
(白木)うわーっ!!誰…?誰なのあなたは!その後白木を冷凍室に…。
よいしょ…よいしょ…。
(副島の声)2日後冷凍室へ行くと白木は凍死していた。
そして白木の遺体を山に隠した。
(副島)よっ…。
(副島)遺体は見つかっても見つからなくてもどっちでもよかった。
見つかりゃあ保険金がすぐに下りるし見つからなければ1年待てばいい。
でもそこにあなたたちが現れた。
だから副島に匿名で通報させて遺体を発見させたの。
あなたはお葬式で白木さんを殺したのが副島だと初めて知った。
葬式でこの人の弔辞の声を聞いてやっと姉さんとこの人の企みがわかった。
だから言ったんです。
録音だと?警察に言うわ。
あなたたちのした事を全部話す!奈津子そんなものを?早くなんとかしなくちゃ。
だからあんたは奈津子を襲った。
そうだ。
(奈津子)キャッ!くっ…。
(奈津子の悲鳴)姉さんは本気で私を殺させようとしてたのね。
そうよ。
夫を妹に寝取られたなんてとても言えないからただの愛人って事にしたの。
この屈辱わかる?私子供の頃からあんたが憎かった。
あんたなんか死んでしまえばいいってずっと思ってたのよ!由美さん。
私にはあなたが本当に奈津子さんの死を望んでいたとは思えません。
病院に駆けつけた時のあなたの表情…。
(美子の声)憎みながらもあなたは気づいていた。
あなたにとって奈津子さんはただ一人のかけがえのない家族だという事を。
だから今も副島の暴走を止めるためにここに来たんですよね?私は法をつかさどる者としてあなたたちに法の裁きを受け罪を償ってほしいと思っています。
でもその一方で私は一人の人間としてあなたたちを許す事はできない。
あなたたちの身勝手な犯罪の陰で冤罪にもがき苦しみながらつかみかけた夢を決して諦めず必死に闘っていた人がいたという事を絶対に忘れないでください。
教官…。
あなたはきっといい弁護士になる。
えっ?「私はあの男を見た」ってあなたは言い続けた。
目撃証言って時間がたつほど曖昧になっていくのにあなたは必死に男の顔を忘れないようにと頑張った。
はい。
それだけあなたの気持ちが強かったって事。
冤罪を許さない弁護士になるんだ。
そのためにも絶対に研修所に戻るんだっていうあなたの強い気持ちが。
あなたは被疑者になった。
冤罪にもなりかけた。
心も折れかかって…。
そんなあなたは被疑者の気持ちが誰よりもわかる弁護士になれる。
よく頑張ったわね。
教官の…教官のおかげです。
私もあなたに教えられたわ。
えっ?私のあだ名タカビーなんでしょ?いつも人を見下してるから。
でも変わるわよ私。
人の気持ちを大切にできる心優しいタカビーに。
(恵理)お母さん!
(薫)恵理!
(里子)よかった…。
お母さんまた勉強しに行っちゃうの?ごめんね。
みんなから遅れちゃった分また頑張んなくちゃ。
恵理ねポテトサラダ作れるようになったんだよ。
ふふっ。
そっか。
ありがとう。
(拍手)
(薫)ありがとうございます。
(拍手)いやぁ本当によかったですね穂高先生。
はい。
今度の事では感謝しています。
何言ってるんですか。
この私の手にかかればねあんな事件の1つや2つちょちょいの…。
あと少しで後期修習も終わりですね。
あ穂高先生東京地検の現場に戻りたいとおっしゃってましたね。
なんなら私の方で話をつけてもよろしいんですが…。
そんな事言いました?私。
私教官の仕事もなかなかいいなって思い始めてるんです。
(笑い声)さてと次の講義の準備しなくちゃ。
失礼します。
みんな次の講義始まるぞ。
行くぞ!ピシッといくからな今日から。
もうゆるくはいかないから。
ピシッといくからな。
レッツゴー!1年間の実務修習で皆さん成長したようですね。
全体的にとてもよくできてました。
でもちょっと惜しかったのが戸田さんの起案。
えっ…。
客観的証拠が足りなかったわね。
こうゆるい起案だとどっかの誰かさんみたいになっちゃうわよ。
(一同の笑い声)
東京・有楽町を歩く1人の男性
2016/01/21(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
司法教官・穂高美子[再][字]
弁護士志望の殺人犯!凍死した人が全力疾走で逃げた!?試験に出る殺人トリック
詳細情報
◇番組内容
水野真紀演じるヒロインは、通称“タカビー”!東京地検から派遣された“高飛車”現役検事が、司法修習生を巻き込んだ殺人事件の真相を暴く!!
◇出演者
水野真紀、筧利夫、星野真里、勝野洋、岩崎ひろみ、宮川一朗太、小野真弓、デビット伊東、橋爪淳、松金よね子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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