島根県のある施設。
(野津)わ〜すごいですね!
(拍手)ここに通うのは認知症の人たち。
徘徊や暴力などの症状があった人も少なくありません。
この施設では20年以上にわたり認知症の人たちに寄り添い続けてきました。
これは認知症の人に書いてもらった手記。
さまざまな思いを抱えながら毎日を生きている事が分かってきました。
認知症の人たちの気持ちを大切にする事で本人も家族もおだやかさを取り戻しています。
認知症とともにおだやかに生きる。
ある施設の日々を見つめました。
地元の精神科クリニックが運営するデイケア施設小山のおうちです。
おはようございます。
おはよう。
毎朝10時になると自宅で暮らす認知症の人たちが集まってきます。
利用者は30人ほど。
多くは徘徊や暴力などを繰り返し家族が悩んでいた人たちです。
(吉田)そうそう。
(吉田)ねえなかなかね。
4年前アルツハイマー型認知症と診断されました。
以前は手に負えないほどの暴力で家族を困らせていたといいます。
愛子さんの異変に最初に気付いたのは夫の一成さんでした。
夫婦で印刷所を営んできましたが電話があった事を忘れてしまうなど物忘れが目立つようになったのです。
愛子さんは次第に家族に手を上げるようになりました。
一成さんが物忘れを指摘すると突然つかみかかり腕を骨折させた事もありました。
こうした症状を和らげるため小山のおうちではさまざまな試みを行っています。
その一つが思い出を語ってもらいそれを認知症の人自身に寸劇で演じてもらう事です。
ご自分の結婚式の事って。
(笑い声)この日は愛子さんの思い出を全員で演じる事になりました。
主婦として家族を支えていた頃の自分。
それを演じる事で前向きな気持ちになってもらうのがねらいです。
(拍手)
(笑い声)こうして…。
はい回してあげて。
(笑い声)もう一つ大切な取り組みがあります。
認知症の人たちに日頃感じている思いを書いてもらう事です。
難しいかもしれないですけど…え〜っとね…スタッフが糸口を見つけながら心の奥にしまい込んでいた思いを引き出していきます。
じゃあちょっと…途中で何を書いていたのか忘れてしまう事もあります。
その度にフォローする事でここに通う半分くらいの人が手記を書く事ができるといいます。
愛子さんも2時間かけて自分の気持ちを書き上げました。
「仕事にお客様の注文が出た時名前と顔が一致しなくて困ります」。
「近所の人からも物忘れがひどいと笑われます」。
「近所の人は物忘れをしないのかな?私だけなのかとかなしい思いをします」。
これまで小山のおうちでつづられた手記は70を超えます。
そこから認知症の人の心の内が見えてきました。
中でも多くの人が語っていたのがこれまでできていた事ができなくなる事のつらさです。
「物忘れが酷くなり思い出す事ができなくなりとても息苦しく感じる事がこのところ多くあります。
友達と逢う事もできずとてもつらい日々を過ごしています」。
「やっぱり駄目になってしまったナアと泣く事はないが悲しくなる」。
「謙よしっかりせよ。
今までやって来たんだないか!」。
(取材者)こんにちは。
こんにちは。
こうした取り組みを行ってきた精神科医の…ああ京子さん。
しっかりしてきたね話し方も。
ねえ京子さん。
小山のおうちを始めたのは23年前。
当時は高橋さん自身も認知症が進むと何も分からなくなると考えていました。
しかし認知症の人たちと一緒に過ごすうちに考えが大きく変わりました。
(高橋)はいどうぞ。
一人の人間としてきちんと向き合えばさまざまな思いを語ってくれる事に気付いたのです。
いやいやいや…。
これは…
(ベル)高橋さんはケアの在り方を見直しました。
症状が重く意思疎通が難しい人にも丁寧に声をかけます。
認知症が進んでもその人なりに感じている事があると考えているからです。
笠原さんはどうですか?
(笑い声)
(野津)あ〜そうでしたかいね。
そして大切にしているのは認知症のどんな症状も否定せず受け入れる事。
例えば毎日こんな問いかけをしています。
小山のおうち…
(笑い声)
(拍手)手たたくほどの事じゃない。
(笑い声)忘れる事は悪い事ではないと繰り返し伝えるのです。
ありがとうございます。
本人の心に寄り添ったケア。
ここでは多くの人が徘徊や暴力などの症状を改善させています。
さようなら〜。
20年以上にわたり認知症の人と向き合い続けてきた高橋さんたち。
さまざまなケアを通して症状が悪化する背景も見えてきました。
多くの人が家族からの指摘を「叱られた」と受け止め誰にも理解されないと苦しんでいたのです。
これは徘徊を繰り返していた女性の手記。
「家では旦那や息子が時々怒る事がある」。
「何で怒るかと私も怒る」。
「怒られると家出する事がある。
私はいない方がいいと思われると思うから家出する」。
9月ある人の家族から切実な訴えが寄せられていました。
(吉田)お願いします。
(拍手)1年前から通う…深夜に一人起きだしテレビを大音量にしたり夕食を食べさせてもらっていないと騒いだり。
理解し難い行動に家族が悩まされていたのです。
美恵子さんは娘の家族と4人で暮らしています。
(取材者)こんにちは。
長女の良恵さんです。
日中働きながら母親の面倒をほぼ1人で見ています。
深夜眠ったはずの美恵子さんの部屋に明かりがともりました。
ハハハ。
このままでは真夜中に出歩くようになるのではないか。
良恵さんは明かりがつく度に寝かしつけに来ています。
(美恵子)はいはい…。
この日も明け方近くに再び明かりがつきました。
2か月の間ほとんど眠れずにいた良恵さん。
医師の高橋さんに相談する事にしました。
訴えを聞いた高橋さんが見せたのは母親の美恵子さんが書いた手記でした。
「私は娘がしかっても言いたい事も我慢しています。
私はさからわず聞いています」。
「私は娘がしかっても…」。
良恵さんには思い当たる事がありました。
認知症が進むのを少しでも遅らせたい。
母親が物忘れをする度につい厳しい口調で指摘していたのです。
は?高橋さんは接し方を変えてみてはどうかとアドバイスしました。
良恵さんは早速改善を始めました。
フフフフフ。
物忘れをするとつい厳しく指摘していた良恵さん。
この日は笑って話を聞きます。
(良恵)行った?うん。
フフフフフ。
フフフフフ。
そして夜。
母親を無理に寝かしつけようとするのはやめました。
じゃあねおやすみ。
(美恵子)おやすみ〜。
相談からひとつき半。
美恵子さんに変化がありました。
皆さんおはようございます。
(ベル)
(一同)おはようございます。
娘の良恵さんが書いた連絡帳に家での様子が書かれていました。
「最近は夜中に起きる事なく寝ていたりするので以前よりよくなったような気がしていました」。
(吉田)はい正解!
(拍手)家族が接し方を変える事でたくさんの人が笑顔を取り戻しています。
以前は夫に手を上げる事もあった水師愛子さんです。
ただいま〜。
あっ?ただいま〜。
帰りましたよ!
(愛子)何書いたん?この日書いた手記には一成さんに対する気持ちがつづられていました。
(愛子)愛子ちゃん愛子ちゃん言うて大事にして下さいね。
(一成)ああいいですわ。
愛子ちゃん愛子ちゃんだわね。
認知症と診断されて4年。
2人は今ともにおだやかな時間を生きています。
2016/01/21(木) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「ともに、おだやかに〜ある認知症デイケアの挑戦〜」[字][再]
認知症の人たちの“徘徊(はいかい)”“暴力”などの症状。対応次第で劇的に緩和しうると言う。出雲市の重度認知症患者デイケア「小山のおうち」の取り組みにヒントを探る
詳細情報
番組内容
島根県出雲市にある重度認知症患者向けデイケア「小山のおうち」。毎日15人ほどの認知症の人が日中この施設で過ごす。お茶を飲みながら穏やかに談笑する姿からは想像できないが、そのほとんどが“はいかい”や“暴力”などで家族を困らせていた人たちだ。施設が実践するケアを通して9割を越える人に改善がみられるのだという。「小山のおうち」の取り組みを通して、認知症になってもその人らしく暮らしていくためのヒントを探る
出演者
【語り】河野多紀
ジャンル :
福祉 – 障害者
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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