きょうの健康 子どもの発達障害 徹底解説「注意欠陥・多動性障害」 2016.01.19


「きょうの健康」今週は「子どもの発達障害徹底解説」というテーマでお伝えしています。
今日は2日目になりますけれども今日は「注意欠陥・多動性障害」について教えて頂きます。
お話は…小児科医として発達障害を持つ子どもの医療に長年携わってこられました。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
早速ですけれどもこの注意欠陥・多動性障害これはどういうものかからお願いできますか。
これは発達障害という事で障害という名前が付いてますがこれもむしろ性格とかねあるいは何て言うんでしょう癖のようなものなんですが。
子どもはもともと落ち着きがなかったり集中がなかなかできないんですがその程度がやっぱり並外れて強い場合にこの注意欠陥・多動性障害という名前で呼んでいます。
これどのぐらいいるかという事でね文部科学省が2012年に全国の小中学校で調べたものですけどここに書いてございますように3.1%前後いると。
これもうちょっと多分多くて4%前後ではないかという話もありますが大体1クラス30人クラスだと1人ぐらいこういう子どもがいるという事になると思うんですね。
こういうお子さんたちというのは後ほど…症状といいますかね行動の特徴を申し上げますけどやはりいろんな生活上特に学校での困難が多いという事がありますのでやっぱり適切なサポートをしてあげてその困難をとってあげる必要があると思います。
そのサポートのどういうのがあるのか…。
私は文部科学省からお金を頂いて研究費でこういう全部で400人の全国の小中学校の先生特に小学校の先生保育園の先生幼稚園の先生にどういう対応をしたらそういう行動に対してよかったかという対応例を3,000例集めて…。
この中にやはりこういう落ち着きのない子どもに対する対応のしかたも書かれています。
それは今市販もされてましてこういう本になっておりますがこういう本を出した理由は一つの対応法だけじゃなくてさまざまな対応法があると。
実際に有効な方法もたくさんあるという事なんです。
今日は実例をお話ししたいと思いますけどこの中で例えばこの注意欠陥・多動性障害のお子さんによくあるね物事を整理するのが難しい。
それに対して100以上の対応例が実はこの中に書かれてるんですね。
という事はやっぱりそれだけ違うという事ですね。
それではまずそもそもですねこの注意欠陥・多動性障害の特徴といいましょうかこれはどういうものなんでしょうか。
まず一つは…。
2つに分かれまして一つは注意欠陥不注意という特徴がございましてここに書いてありますように授業中注意できない。
よそ見してしまって注意ができない集中できない。
それから忘れ物が多いんですね。
忘れ物も多いし例えば提出物なんかもなかなか出せない。
宿題が出せないというのはこれに入ります。
それから片づけられない。
今申し上げた整理できないというのもそうですがこういう特徴があってこのためにやはり学校の中で先生から叱られたり注意したり宿題を忘れて注意されたりするというのがございます。
もう一つが多動・衝動性というように書いてあります。
この特徴は多動行動としてはすぐ席を立ってしまう。
走り回ってしまう。
ちょっと何か気を取られて先生の方に注意が行かずに走り回ってしまうとかですね。
順番が待てないんですね。
割り込みをしちゃうとかね。
それからしゃべりすぎるという事でこういう特徴がありましてこれが注意欠陥…失礼多動の症状になります。
こういうような特徴がありますね。
でもそういう何か思い当たる…それが強く現れると…。
いろんな人にも私たちにもねいくつかあるんですがこの程度とか頻度が非常に強くてそのため困難を来している場合に診断をするようになってます。
どんな困難かといいますと…。
ここにいろいろございますがまず学業成績が上がらない事が多いんです。
これ先生のお話も聞いてないしそれからどうも集中できない。
それから宿題出さないとかね。
提出物を出しませんからどうしても成績が上がらないというような特徴がございます。
人間関係は先ほど言ったようにしゃべり続けてしまったり順番待てないとかね。
お友達についちょっとこう…カッとなって何か言ってしまうというような事で人間関係がうまくいかない事が多いんです。
この事は時にはいじめられる事にもつながるという事も知られています。
もう一つはここに書いてあるさまざまな行動がうまくできない。
例えば宿題も出せないしお友達からも何かいろいろ言われるという事でうまくいく事成功体験といってますけどそれが少なくて結果として自信につながる自尊感情というのが十分に育ってこないという事が分かっております。
そういう事がず〜っと長く続くと本人自身の性格の根本にきいてきまして影響が出てきて時にはうつとかあるいは非行の二次障害といいますがこういうものにつながる。
これ以外にも不安障害なんかがありますがそういう事が知られております。
特にアメリカではこの事に注意…いろいろ研究されてまして例えばADHDといわれた人の3人に1人ぐらい実は非行に走ってしまう事もあると。
アメリカの例ですね。
日本ではありませんがそういう事まで分かっております。
本当につらいと思うんですけど原因としてはどうなんでしょうか?まだ十分解明されてないところはあるんですが発達障害全般と同じようにやはりこの脳の働きその中でも実行機能と申します集中したり気持ちをコントロールしたりあるいは記憶をするといった脳の割合複雑な高次機能…実行機能ともいってますがそれが十分に働かないという事が分かっておりましてそういう例えば心理テストをするとこういうものの得点が低くなるというような事が分かっています。
うまく働かないとやっぱりその衝動的な行動をとってしまう。
これらの事があっての衝動的な行動とかあるいは多動の行動がこれが原因で現れてくるという事が分かっている訳ですね。
最近の研究としてはどうなんですか?その脳の中でどういう事がうまくいかないかという事も最近の脳科学の研究ではいろんな事が分かっていましてこのドパミンノルアドレナリンという脳の中で神経同士が情報を伝える時に出る化学物質ですね。
それの代謝が少し高進してたりあるいは落ちてたりというような事がどうも関係してるらしいという事がいわれております。
そしてそれは遺伝子が決めてるものですから遺伝子がこういうような物質に関係のある遺伝子の特別な変異によって…変異といいますか特徴によって起きてくるという事が分かっています。
どうなんでしょうか子どもさんがそうだという場合には親御さんとか学校の先生ですよね授業などもありますけどどう対応していったらいいかという事なんですけどもね…。
発達障害全般に言える事なんですけど例えば家だけとか学校だけでこういう特徴が見られるのではなくておうちでも見られるし学校でも見られる。
あるいは地域の中の活動でも見られると。
もうあらゆる所で起こるという事がございます。
ですからおうちの中だけであれば親御さんが気を付けてるという事である程度対応できるんですがそうではないんですね。
ですからやはりチームとして親御さんだけじゃなくて地域とか学校の先生とか専門家が一緒になって対応する必要があるだろうという事がいわれてます。
そのためにもしそういう事気になる場合には親御さんだけで悩んでないで専門の小児神経科とか児童精神科あるいは保健センター子育て支援センター児童相談所といったこういう所に行ってご相談なさっていけば皆さんよく知ってられますので注意欠陥・多動性障害の事よく知られてますのでそこで相談に乗って頂けると思います。
相談して注意欠陥・多動性障害と診断されましたと。
そうした場合には今度はどう対応していくように…。
ここで対応の3本柱と書きました。
行動の特徴あるいは癖といったものですから治療というよりは対応という言い方をしてますが一つは薬によって行動を改善するという事が非常によく行われています。
もう一つは環境の改善と行動療法とこの3本柱で対応するという事が今行われています。
まずはその薬なんですね。
はい。
薬はですね…かつては薬というのはいろいろな例えば環境を変えたり行動に対して働きかけてもうまくいかない場合に薬を使おうかという事だったんですが最近はですね実際に薬が非常に効果があると。
行動を改善させる効果が非常に強いという事が分かってきております。
それからもう一つそのために行動もよくなりますし先ほど申し上げましたうつになったり非行になったりするという二次障害もきっちりと適切な治療をする事で減ってきていると。
非行とか不安障害とかねそういう事もこの治療をきっちりする事で減ってくる事もはっきり分かってきています。
もう一つ副作用なんですがかつてはその副作用の中に薬に頼ってしまう…。
何と言うかね…依存とかですかね。
それが結構多いんじゃないかといわれてたんですが子どもに適切に使えばそれはほとんど起こんないという事も分かって。
ほとんどって言うか私自身は経験がないんですね。
ですからそういう意味で副作用も例えば少し食欲がなくなるという小さな副作用ございますが大きな副作用はないと安全であるという事が分かってきましてより広く使われるように…。
中心的なという…。
今はもうほとんど中心的な薬による治療というのが…。
治療じゃなくて対応といった方がいいですが一番中心になってきております。
どんな薬があるかといいますと。
薬は今日本ではこの2つの薬が特に使われていましてメチルフェニデートの徐放剤というものでこのドパミンというね神経伝達物質の働きを改善する。
もう一つはアトモキセチンという薬がありましてノルアドレナリンという神経伝達物質の働きを改善させる事が分かって有効である事も分かっております。
こののみ方…これ飲み薬になる訳ですか?これは一日に1回のんで一日効く訳ですね。
このアトモキセチンは一日2回のむんですがこれをのむ事で行動が改善する。
実際に私の診てるお子さんでは成績が上がってきたというお子さんも結構たくさんいます。
そうですか。
その最近の研究でより薬の効果が確かになったと言える訳ですね。
さあ今度は薬から環境改善ですね。
これは集中できないとかね気が散ってしまうという事でその環境を改善する事によってより気が散らなくなる。
あるいは集中できるような環境を作る事が大事だといわれてます。
例えば座る場所はね…学校などの席順ですけどやっぱり前の先生のそばがやっぱりいいんですね。
後ろの方だとどうしても前にほかのお子さんが入るので気が散りやすい。
窓のそばも外見ちゃうという…。
それからもう一つ1つのクラスに実は2人ぐらいいらっしゃる場合もあるんです。
その場合にはそのお二人を並んで座ったりするとお互いにやっぱりこうお話ししちゃったりして…。
クラスの中ではちょっと違う離れた場所に座らせた方がいいというような事がいわれています。
こういう事で環境を変える事で改善される…。
これだけでもそれほど…何と言うかな症状といいますかね強くない場合にはこういう形だけでもかなり改善致します。
そして3つ目の柱が今度は…。
行動療法というこれは心理で一般的に行われる方法なんですがこれは望ましい行動をほめて増やしていって望ましくない行動を減らすというやり方です。
特にほめる事と叱るのはあんまり使わずにできるだけほめてよい行動があったらほめて本人自身の中にこういう行動をすると自分はほめられるんだ。
自尊感情の関係もあります。
自信がつくんだというようなやり方で少しでもいい事があったらほめる。
例えば…叱る事によると自尊感情が壊れてしまう事があるんでできるだけその子どもの行動をほめる事で増やしていくという行動療法という対応のしかたをやっております。
こういうものが具体的に何か…。
これ実際にですねこの中にはそういうものが生かされたのがたくさん書かれている訳で例えばですねその対応方法でね動き回るというここに出てきますねこの中によくある行動が書かれて動き回るという時には27通りの対応のしかたがこの中に出ておりますが例えば座っている時にほめる。
これは割合そうかなと。
じっとしていた時間の長さをほめるというやり方をするんです。
例えば1分でも2分でもほめてやった方がいい訳ですね。
授業の間40分とかね。
50分座ってるんじゃなくて「今日は10分間できたね」と言ってほめるというとこでほめるところを探すという事になります。
それからあとはどうしても動きたい気持ちがありますので動いてもよい時間をとる。
ちょっと中休みをとってねじゃあちょっとリラックスしようかってやるように少し小分けに時間を使っていくと。
それから場合によってはね休み時間とかそういう時間に体を動かして本人自身の動きたい気持ちをある程度発散させてあげるというような対応をするとだんだん改善していくという事が分かります。
そういう事がこの中に書かれているんですね。
実際これ以外にもこの中にはいろんな対応のしかたがありますけど重要な事は最初に申し上げたかもしれない大変たくさんの対応のしかたがあってそれがみんな効果がある事が分かっている。
つまり場面とそのお子さんの性質によっていろいろ使い分けてやっていく。
そのお子さんに合ったものを選んでいくというような事の対応が必要だと。
一とおりだけではないという事を知って頂きたいと思います。
その子に合ったサポートを行うという事が必要と…。
その子に合ったサポートする事が非常に重要であるという事ですね。
やっぱり周りの人たちが早く気付いてやる事も…。
今特にこの注意欠陥・多動性障害については小児神経のお医者さんも結構よく知ってましてやってますので周りで気付いて対応していく事だと思います。
今日もですね榊原洋一さんにお話を伺いました。
明日もまたよろしくお願い致します。
2016/01/19(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 子どもの発達障害 徹底解説「注意欠陥・多動性障害」[解][字]

子どもの発達障害を正しく知る3回シリーズ。2回目は注意を持続できなかったり動き回ってしまう「注意欠陥・多動性障害」の特性やサポート方法について詳しく解説する。

詳細情報
番組内容
ほかの子と比べて落ち着きのなさが極めて目立つのが「注意欠陥・多動性障害」。原因は脳の機能障害で、集中したり感情をコントロールすることが難しいことにある。現在では神経伝達物質の働きを改善する薬を使うことが対応の中心となっている。教室で最前列に着席させるなどの環境改善や、小さなことでもほめて望ましい行動を増やしていく行動療法も効果的と言われている。
出演者
【講師】お茶の水女子大学副学長…榊原洋一,【キャスター】桜井洋子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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