「国会議員三ツ星データブック」を発行するNPO法人「万年野党」の協力で、一昨年12月から昨年9月まで行われていた前国会における衆参全議員の“働きぶり”を調べてみた。すると共産党の調査能力の高さが光った国会であった。
安保法制国会の真っ只中の昨夏、防衛省の内部資料を暴露し、紛糾・中断させたのは、参院共産党の質問王(36回)の小池晃氏だ。
統合幕僚監部が昨年5月に作成したもので、法案成立を前提に、PKOでの「駆けつけ警護」など自衛隊の部隊運用の仮スケジュールまで記載され、現在もほぼそのとおりに進む。しかも、中谷元・防衛相はその中身を暴露されるまで知らなかったのだ。小池氏が言う。
「おもしろかったのは、私が質問を始める前から中谷さんの後ろで防衛官僚たちが右往左往しながら走り始めたことです。官僚たちは共産党がとんでもない内部資料を出してくることを想定していましたが、中谷さんは本当に知らなかった」
共産党が入手した内部資料は統幕長と米陸軍参謀総長の会談録など計4点。自衛隊からの内部告発はなぜ、メディアではなく、共産党に集中したのか。
「安倍さんの強引な法案審議の進め方に強い憤りと不安を持って提供されたと思います。共産党ならバイアスなく正面から追及するだろうと期待してくれたのでは。メディアは政権寄りに思われてしまっているのではないでしょうか」(同)
安全保障委員会で質問回数7でトップに立ったのは同党衆院議員の赤嶺政賢氏だ。自民党の安倍シンパの若手議員の勉強会に呼ばれた作家・百田尚樹氏の発言をヤリ玉に挙げた。
「普天間飛行場は田んぼの真ん中にあり、そこに商売目的で人が住みだした」
暴言からまもない昨年7月、平和安全法制特別委員会で赤嶺氏は「普天間基地の形成過程についてどう認識しているのか」と質す。
安倍首相は百田発言を否定せざるを得なかった。
「戦前、役場や学校があり集落が点在していた。米軍が土地を接収し建設した」
赤嶺氏は答弁を引き出した成果を説明する。
「百田発言のもとをたどると、米軍が戦後ずっと言い募ってきたことなのです。政府はこれまで肯定も否定もしてこなかった。安倍首相は米軍が住民を立ち退かせて建設したことを初めて国会で答弁した。菅官房長官も認めています」
小池氏は「歴史的な国会だった」と振り返る。
「深夜の国会討論で、私は反対討論して壇上を降りながら民主の席に思わずガッツポーズしたものです。『対案を出せ』と政府に言われた民主党の北沢俊美さんが『廃案こそ対案だ』と切り返したとき、市田忠義さんと熱烈に拍手したものです」
(本誌取材班=長倉克枝、西岡千史、亀井洋志)
※週刊朝日 2016年1月29日号
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