嘘と真実の狭間
嘘は何れ明らかになるものである。
 私の味方をしてくれている者に対しても、申し訳ないと思った。
誹謗中傷をされたと亜美に一方的に思われ、それは違うのだと何度も説得してくれた陽菜のことだ。
この間にも、陽菜は亜美への説得を続けているのだろうか?

亜美の言うとおり、嘘をついて脅すことでしか自分を守っていなかった。
亜美の親の名前を出して、その気もない癖に「手紙を書く」とSNSで呟いたのは本当のことだ。
手紙が届いたと勝手に物語を作り、SNSで「修羅場だったかい?」と書いたことも。
全部嘘だ。
嘘と認めるしかない。

この取調で、どこまで話していいか正直わからなかった。
表現の自由だと思い込んでいた。
私のブログのことを、「表現のしかたに問題がある」と言っている弁護士がいると亜美は言ったが、
陽菜は、その意見は間違いであり、事実上問題はないのではと亜美に説得をしてうれた。
だが…。
陽菜は延々と無視されていた。
2016年に入るまで。
私のような犯罪者を庇いたいだけのバカだと亜美に見られていたようだ。
結局、間違っていたのは私なのではと思った。

亜美の本名などの個人情報が流されているのを知り、
その個人情報が本物で、個人を特定できると知りながら、
私は亜美に実名を晒されたとブログの運営会社にクレームを入れられた時に、
「実名ではなく通り名」と嘘の説明をした。
実名を晒したことを認めたあら、ブログの存続が危ういからだと思った。
ブログを手放したくなかったし、亜美に考え直してほしかったから。

「訴状によりますと、実名を晒したエントリを何度も書いたとありますね。これは本当ですか?」
「はい。」
「削除依頼を出されていたにも関わらず、内容を書き換えるなどの修正もせずに再公開した、とありますが」
「仰る通りです」
実名を晒したことや、亜美の権利を侵害する行為を繰り返した事は認めたが、
それを理由に亜美から何度も犯罪者として罵られたこともあり、まだ素直に謝罪する気になれなかった。
亜美の警告を無視した結果がこうだ。

ブログに書いたことは大筋認めたが、誹謗中傷目的ということは認めなかった。
亜美が一度も反論していないのに、私を刑事告訴したことが理不尽でならないとも打ち明けたが、
「この方も言っていますけれど、本名などを晒したのがいちばんいけなかったんですよ。
貴女のした事は、誹謗中傷、名誉毀損、プライバシーの侵害、その他にも権利侵害を多くやっている。
これじゃ告訴状を出されても仕方ないですね。…逮捕しろと言われても仕方がないでしょう」

取調に当たった刑事さんの言葉は優しかった。
でも、言いかたは厳しくなっていた。
周囲の怒りを買わないようにブログを立ち上げて色々言っていただけなのに…。

***

 帰宅したあと、ふと思った。
誹謗中傷だと思うこと自体が間違っていると言ってくれた陽菜に申し訳が立たない。
私のしている事は確かに誹謗中傷だと。
亜美が出した膨大な量の証拠の中には、私が削除し隠滅したエントリまでもが含まれているし、
先に手を出した事と、
亜美がHNを変えたという情報も含まれており、亜美の本名などの情報も書いていたことから、
私は、亜美を長年誹謗中傷してきたということがほぼ認められてしまうと。
味方はきっと居ない。
私が捕まれば、味方は皆一気に離れていくか、私の二の舞を踏むのが嫌だからと、ブログをたたむ者も出てくるだろう。
亜美の言っていたとおりだ。
信用していた仲間から私はこれからどんどん裏切られてしまうのだ。