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【社会】

千代田区長、政活費付け替え見送り 議員報酬化「不透明」の批判受け

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 東京都千代田区の審議会が区議の政務活動費の三分の二を、使い道のチェックを受けない議員報酬(給与)に付け替えるよう求める答申を石川雅己区長に提出した問題で、石川区長は答申に沿った議案を区議会二月定例会に提出しない方針を固めた。一部区議が求めた内容だったが、内外から「議員活動が不透明になる」と批判が出て、議会が一転して「反対」を表明。議案提出を見送らざるを得ない状況に追い込まれた。

 石川区長は二十日、本紙の取材に「議会の意向もあるし、世論の批判も承知している。もう少し時間をかけて慎重に判断したい」と語った。

 石川区長の諮問機関「千代田区特別職報酬等審議会」の答申では、政務活動費月額十五万円のうち十万円を議員報酬に組み入れる。千代田区の議員報酬は二十三区で最高の月額七十一万八千円となる。

 大学教授ら有識者で構成する審議会は、議員などの報酬を検討するため、二〇一三年十二月に設置された。政務活動費についても議論ができるよう、石川区長は昨年二月、条例改正案を議会に提出。議会は賛成多数で可決した。

 審議会は昨年十二月に今回の答申を提出。だが、住民団体などから批判が相次いでおり、議会側は「政活費は議長の諮問事項であり、区長の諮問事項を逸脱しており、受け入れられない」とする議長名のコメントを出し、全会一致で反対を表明した。今回の批判を受け、議会側は昨年十二月、政務活動費のあり方を見直すため、有識者でつくる第三者委員会の委員を選任。これから議論する。

◆公金めぐり区民不在

 <解説> 政務活動費は、議員の調査活動のために地方議員に支給される補助金だ。地方自治法は、議長が政務活動費の透明性確保に努めると規定している。領収書の添付や住民団体からの監視の目が厳しいからといって、議員の「生活費」も含まれる報酬に組み込むのは、本末転倒だ。

 元兵庫県議が東京や福岡への交通費を領収書を提出せずに政務活動費から支払う流用事件が発覚するなど、全国で議員の不適切な支出は後を絶たず、高い透明性を求める動きが広がっている。

 今回の問題で、石川区長に政務活動費の抜本的見直しを求めたのは一部区議だった。その求めに応じて、区長が審議会で政務活動費が議論できるように整えた経緯がある。

 ある区議は「政務活動費が減額されて、報酬が増えるんだったら、こんなおいしい話はないよね」と本音を漏らしていた。

 世論の厳しい視線を敏感に感じ取り、一転して反対に回った議会について、区長は「はしごを外されたようだ。正直驚いた」と語っている。今は双方が責任を押し付け合う事態が続く。

 だが、その「反対」「見送り」を決断した時、区長や議会は果たして区民の顔を思い浮かべただろうか。政務活動費をめぐる議論の応酬は、「区民不在」の感が否めない。 (木原育子)

 

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