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印南敦史印南敦史  - ,,,  06:30 AM

ライフネット生命会長に聞く、お金に対する不安の正体

ライフネット生命会長に聞く、お金に対する不安の正体

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「このままの収入では、結婚できず、子どももつくれないのではないか」
「このご時世、ローンを組んでまで家を建てていいのだろうか」
「もらえる年金がいまのお年寄りよりずいぶん少ないと聞いた。実際はどうなのだろう」
「いまのお年寄りはいい時代を過ごしてきたのに、自分たちが支えるのは腑に落ちない」
「定年までにいくらくらい貯めておけば安心なのか」
「親だっていまは元気だけど、介護になったらいくらくらいかかるのだろう」
(「はじめに」より)

働く君に伝えたい「お金」の教養:人生を変える5つの特別講義』(出口治明著、ポプラ社)の冒頭には、20代を中心とした現代の若者が抱いているであろう不安が列記されています。

著者は、日本生命保険相互会社で実績を積み上げたのちに独立し、ライフネット生命保険株式会社を立ち上げた人物。本書では、長いキャリアを通じて身につけた知識や経験を軸に、「お金の原理原則」を伝えたいのだといいます。貯蓄の目安や方法、投資すべき銘柄の情報提供など小手先のノウハウではなく、「いま学べば、結婚しても、子どもが生まれても、みんながオジサンやオバサンになっても使える、いわば一生モノの運転免許証のようなもの」なのだとか。

きょうは、お金について「知るべきこと」を明かした第1講「なぜ、お金には不安ばかりがつきまとうのか?」のなかから、いくつかの要点を引き出してみたいと思います。お金についての漠然とした不安や疑問を、データ(数字)とファクト(事実)を見ながらとことんつぶしていくことが目的だそうです。


お金の不安はじつは「思い込み」だった


生まれたときからずっと不景気で、経済も国の勢いも右肩下がり。給料も上がらず、会社に入れば安泰というわけでもない。しかも少子高齢化で、将来年金が支給されるかも不安。

このような状況下での、「いったい、どうすればいいのでしょうか?」という質問を、著者は「質問の前提が間違っている」と指摘しています。日本は1945年の終戦以降に再生し、1991年ごろにバブル崩壊を体験しています。つまり「右肩上がりの時代」は、50年も続いていないのです。歴史にあてはめると右肩上がりが「普通」のことではなかったのは明らかであり、むしろそちらの方がイレギュラーな状態。右肩上がりが正常だというのは、ここ数十年間の誤った認識だということです。

では、なぜメディアは不安ばかり煽るのでしょうか? それは、不安を煽る方が商売をしやすく、「儲かる人」がいるから。だからこそ必要なのは、メディアの情報に接するときは「これで儲かるのは誰だろう?」と考えるクセをつけること。

そして「ホントとウソを見極める」ためには、次の2つのステップが必要。これさえ習慣化できれば、「だまされる側」から脱出できるそうです。

1. 政府やきちんとした民間の調査機関が集計・分析したデータ(数字・ファクト)を探す
2. そのデータをもとにして、偏見を持たずにロジック(論理)を組み立てる
(26ページより)

漠然とした不安から逃れられないのは、まだ「お金リテラシー」が低い状態にあるから。しかし日本の教育ではお金について教えてもらえないので、なおさら上記の2ステップが重要な意味を持つということ。(20ページより)


「世代間格差」にとらわれすぎると不安になる


20代を中心とした若者が世代間格差に不満を持っていることは、著者も認めています。しかし実は、「できることなら世代間が公平であることが望ましいけれど、社会保障のなかで自分たちが満足のいくサポートを受けられれば文句はいわない」という人が多いのだとも指摘しています。

もっと広く考えれば、理想的なのは、社会保障がそのときの国力や世の中にふさわしい仕組みになっていること。「すべての世代に公平に」という考え方は現実離れしており、そもそも不可能だといいます。年金制度は、サステイナブルであることがなによりも大切。支払った社会保険料に応じてサステイナブルに年金が支給されれば、年金制度の役割は充分に果たしているといえるそうです。

そして世代間格差については、すぐには是正できないくらいのスピードで時代が移り変わっているということを理解しておくべきだともいいます。「僕たちは損をしている」という思いに固執するのは、「どうして自分はクセ毛なんだろう」と悩むのと同じくらい「考えても仕方がないこと」。「変えられないこと」を「不安」に置き換え、右往左往しているだけだというわけです。たしかに、努力次第で変えることができないことに対して被害者意識を抱いてみたとしても、未来はなにも変わらないでしょう。

さらに、このような考えを軸として、著者は多くの若者が抱いている疑問にも答えています。(48ページより)

・50年後、年金制度は機能しているのかどうか
→政府が破綻しない以上、つまり国債を発行できる以上、年金は支払われます。一般論で考えれば、年金制度に税金を投入している以上、支払い損となることはありません。

・老後年金として年金を頼りにしていいのか
→年金「だけ」に頼るのは反対です(自助努力はもちろん必要)。将来の支給額がどうなるかは、この国が経済成長するか(パイが大きくなるか)どうか次第だということを、みなさん理解しておくべきです。(53ページより)


政府は結局、なにをしてくれるのか


では、政府は市民に対してなにをしてくれるのでしょうか? このことを説明するために、著者は医療保険制度の話題を引き合いに出しています。ご存知のとおり、アメリカは医療保険制度があまり整っていませんでした。オバマ政権下で改革(オバマ・ケア)が進んだものの、いまだ完璧とはいえません。一方、日本の場合、医療費は原則3割負担となっています。

もしもかつてのアメリカのように日本も10割負担にしてしまえば、政府の仕事は楽になり、税金や社会保険料も安くなるでしょう。しかし、そんなメリットを捨ててでも先進国が皆年金・皆保険制度を採用しているのは、市民にセーフティネットを提供するため。

セーフティネットとは、市民がチャレンジしたとき、万が一のことがあっても、ある程度の生活ができるようにサポートする最後の砦。「なぜ政府は借金をしてまで年金制度を維持しようとするのか」についての答えもここにあり、つまりは年金をなくしたら、社会が不安定になるからです。

そして著者は、社会保障とは「実家への仕送り」代わりのようなものだとも記しています。社会保障、特に年金や医療保険がなかったら、みなさんは退職したご両親に毎月の生活費や医療費を送金しなければなりません。でも、自分の収入だけで家族全員を養うのは、とても難しいことです。

そこで、社会全体で集めたお金を困っている家族に仕送りする役割を政府が担っているのだということ。そして、そのために使うのが税金や社会保険料。こう考えると、将来の支給額がどうなるかは、将来の私たちの豊かさ次第だということがわかります。

しかし、だとすれば行き着くのは、「私たちの何十倍も資産を持っているお金持ちの高齢者を、なぜ苦しい生活をしている若い世代が支えなければならないのか」という不満。しかしこの点についても、いくつかの理由があるようです。

まず制度的な面でいえば、「どこからが給付が不要な富裕層で、どこまでが給付の必要な層なのか」の線引きが難しいということがあります。そしてなにより、いまのお金持ちも、死ぬまでお金持ちでいることを保証されているわけではないということ。たとえばお金持ちのおじいさんがタンスに1億円を入れておいたとしても、震災の津波でタンスが流されてしまったとしたら、あっという間に一文なしになります。そんなときに社会保障がなければ、そのおじいさんは行き倒れてしまうわけです。

極端な話のように聞こえますが、努力ではどうしようもない、まじめに生きているからといって回避できない災難というものは、誰にでも降りかかるもの。そう考えれば、社会保障制度が社会的には必要だということがわかります。(54ページより)




これらはあくまで一部ですが、本書ではこのように、お金や社会についての大切なことをわかりやすく解説してくれます。

語りかけるような口調で書かれているため、著者のいうように「実況講義」のような感覚で読めるはず。そして読み終えたときにはきっと、お金に関する不安の多くを解消できているのではないかと思います。


(印南敦史)

 

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