世界に広がるインド人移民、世界最多1560万人
国連の統計によると、祖国を離れて別の国に住む人が世界で最も多いのはインドだ。これによると、インド系移民の行き先は過去20年の間に米国から中東の国々にシフトしており、多くは肉体労働や家事労働に従事している。
国連が5年ごとに出している移民の動きに関するデータによると、過去5年間で200万人を超えるインド人が国外に移住した。合計で1560万人のインド生まれの人が現在、インド国外に住んでいる。
最も多い移住先はアラブ首長国連邦(UAE)だ。アブダビのインド大使館によると、インド人は350万人で、UAEの人口の30%を占め、海外出身の居住者で最多となっている。
世界全体でのインド系移民の増加をみると、2010年時点の1320万人から17%増えた。2010年統計もインドが世界最多の移民数だった。
05年の時点では、インドはロシアとメキシコに次ぐ第3位だった。当時のロシアとメキシコの移民数はともに1050万人だった。
膨大な数のインド系移民が毎年、膨大な額のカネを本国に送金している。世界銀行の数字によると、15年のインド本国向け送金額は推計720億ドル(約8兆4000億円)となり、海外居住者から受ける送金の額は他のどの国よりも多かった。
国連のデータによると、インドの隣国で政治的ライバルでもあるパキスタンは、インド出身者の数が200万人と報告しており、2番目に多いインド系住民の数になっている。
ただし、この主因は1947年のインド・パキスタン分離独立にある。当時英国に支配されていたインドからパキスタンが分割された。現在、インド・パキスタン間の移住は極めてまれだ。
データを詳細に見ると、インド人の米国移住の動きは近年鈍化していることが分かる。
インド生まれで米国に住む人の数は2010年から15年の5年間に16%増加した。ちなみに05年から10年までの伸びは26%だった。
米国に移住するインド出身者の増加数は、国連が1990年に統計を取り始めて以降鈍化傾向にあり、今回もそれが継続された。
UAEに移住したインド出身者の伸びも過去5年間で劇的に鈍っている。05年から10年までの伸びが126%だったのに対し、10年から15年までの伸びは20%にとどまった。
数で見ると、米国は依然、インド出身者にとって2番目に人気の行き先で、200万人近くのインド出身者が米国に住む。
これに続くのが、サウジアラビアで190万人、クウェートで100万人、オマーンで77万7632人だ。欧州には120万人前後のインド出身者が住む。
海外に住むインド人の大半は、国連の定義する開発途上地域に住むことを選択している。先進国に移住したインド人はもっと少なく、430万人にとどまる。
また、インド出身の海外居住者の過半数(約1000万人)は男性だ。これは世界的なトレンドに合致する。世界全体で見ると、女性が海外居住者全体に占める比率は48.2%だ。
海外に住むことを選択しているインド人男性の数は10年の850万人から18%増加した。同じ選択をしているインド人女性の数は550万人と、10年の480万人から15%増えた。
インド人男性は女性よりも途上国に行く公算が大きい。途上国に移住する男性の数は女性の2倍以上に上る。
一方、先進国に住むインド人男性は230万人、インド人女性は200万人だった。
女性のインド出身者を最も多く受け入れているのは米国で、93万3216人に上った。男性のインド出身者を最も多く受け入れているのは270万人のUAEだ。
インド出身者が全く住んでいない国も多かった。ミクロネシア、グリーンランドにパラグアイなどだ。インド出身者が住む国で居住者数が最も少なかったのは、カリブ海に浮かぶボネール、シント・ユースタティウスおよびサバで、9人だった。