さて
映画「ブリッジ・オブ・スパイ」を劇場で観てきたので、それについて語るとしよう。
監督:スティーヴン・スピルバーグ、脚本:マット・チャーマン/コーエン兄弟、出演:トム・ハンクス、マーク・ライランスなど。
あらすじは
ジェームズ・ドノバンは保険関連の弁護士として働いているが、冷戦中の1957年、FBIに逮捕されたソ連のスパイルドルフ・アベルの弁護人に推薦される。渋々弁護を引き受けたドノバンだったが、「スパイを死刑に」という世論に徹底抗戦して弁護士としての職務を全う、30年の禁固刑を勝ち取る。
数年後、ソ連を偵察中の偵察機が撃墜され、パイロットが拘束されてしまう。アベルを減刑に導いた功績により、ドノバンはアベルとパイロットの捕虜交換交渉を任され、東ベルリンでの公称任務を開始するのだった・・・
というお話だ。
スピルバーグ監督といえば
自分くらいのアラフォー世代のおっさん達はだいたいスピルバーグ監督の映画にお世話になって成長してきたと思うのよね。
子供の頃には「インディ・ジョーンズ」シリーズがTV映画で繰返し放送されていたし、「ジュラシック・パーク」は高校生の頃だったけど、なぜか家族総出で映画館に観に行ったことを覚えている。
冒険活劇やSF大作がスピルバーグ監督の持ち味だと思っていたので、オスカー狙いでシリアス路線の映画を撮り始めてからは実はあまり見ていなかったりする。
スピルバーグ監督は「シンドラーのリスト」でようやく監督賞・作品賞を受賞するのだけど、実はまだ未見。
そんな最近シリアス路線よりのスピルバーグ監督の最新作が「ブリッジ・オブ・スパイ」だ。ちゃっかり今年のアカデミー賞では作品賞にノミネートされている。
以下、ネタバレあり。
安定のスピルバーグ映画だけど劇的な盛り上がりには欠ける
まぁ面白いか面白くないかで言ったら面白かったんだけど、劇的な盛り上がりには欠けるかなと。映画前半、弁護士のドノバンとソ連のスパイだったアベルの出会い、そして裁判を通じて二人の間に奇妙な信頼関係が生まれるまではそこそこ面白いのだけど。
映画の中盤以降、ドノバンが東ベルリンに渡るとドラマ性に欠く交渉場面が続いてちょっと退屈しちゃった。時期はちょうどベルリンの壁が建設され始めた頃と言う事で、ベルリンの壁が積み上げられて行く様子とか、壁を乗り越えて越境しようとした市民が射殺されるとか歴史を描くシーンはあるのだけど、ドノバンさん自身にはドラマらしいドラマがおきず(チンピラにコートを奪われるくらい)。
交渉と言っても、一歩も引かずに要求を繰り返すばかりで交渉らしい交渉ではなかったように思えた。映画「交渉人」みたいのを期待してしまったせいか。
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助演のマーク・ライランスが素晴らしい
トム・ハンクスの演技はもちろんいつも通り素晴らしいのだが、今回の映画では助演でソ連のスパイアベル役を演じたマーク・ライランスという俳優さんの演技が素晴らしかった。
FBIに家に踏み込まれて逮捕される時も、裁判中も一貫して冷静を貫いていかにも大物スパイに見える。敵国民であるにも関わらず、ドノバンを信頼し、さいごには彼のために肖像画を進呈すると言うのも憎いね。
マーク・ライランスさんは映画ではあまりみかけなかった方だけど、略歴をみると主に舞台俳優として活躍されていたらしい。今回アカデミー助演男優賞にノミネートされたから、これから一気に映画出演が増えるだろう。
コーエン兄弟が脚本を手がけた
コーエン兄弟の映画は「ノー・カントリー」と「バーン・アフター・リーディング」しか観たことがないアマチュア映画ファンの自分だけど、この2作品は少なくとも自分は好きだったな。
「ブリッジ・オブ・スパイ」の脚本からコーエン兄弟らしさを読み取るには自分は映画文脈の背景知識がたりないけども、脚本が良くできているなと思うシーンは多々あった。
主人公ドノバンの娘と助手の若い男の関係を匂わせるシーンとか、CIA長官を訪れたドノバンがコーヒーを勧められるシーンとか、あるいは電車で通勤しているドノバンが新聞で彼の事を読んだ通勤客から注がれる眼差しの変化とか。
さいごに
信念に基づいて行動する不屈の男たちを描いた骨太の伝記映画。安定のスピルバーグクオリティの作品ではある。ファンであれば観て損はしないだろう
80/100点
では