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2016年01月20日 20時47分

慰安婦問題の研究書をめぐる「名誉毀損訴訟」 元国会議員を訴えた大学教授が敗訴

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慰安婦問題の研究書をめぐる「名誉毀損訴訟」 元国会議員を訴えた大学教授が敗訴
判決後に記者会見を開いた吉見義明・中央大学教授(中)

元衆議院議員の桜内文城氏が記者会見の場で、慰安婦問題を研究する吉見義明・中央大学教授の著書を「捏造」と呼んだことは名誉毀損にあたるとして、吉見氏が計約1200万円の損害賠償などを求めていた訴訟で、東京地裁は1月20日、吉見氏の請求を棄却する判決を下した。

判決文などによると、問題の発言があったのは、2013年5月のこと。当時「日本維新の会」の共同代表だった橋下徹氏が外国特派員協会で、従軍慰安婦問題に関する記者会見を開いた。その会見に同席していた桜内氏が、司会者の発言にふれて「吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これはすでに捏造(ねつぞう)であるということが、いろんな証拠によって明らかにされている」と述べた。吉見氏は同年7月、この発言によって名誉を傷つけられたとして、桜内氏を提訴していた。

●「意見・論評の域を逸脱していない」

東京地裁の原克也裁判長は、桜内氏が口にした「捏造」という言葉について、「事実でないことを事実のように言う」という通常の意味ではなく、発言の文脈から「誤りである」「不適当」「論理の飛躍がある」といった意味だと判断。桜内氏の発言は、吉見氏の著書に対する「論評」だとした。

そして、桜内氏の否定的な「論評」によって吉見氏の名誉が毀損されたことは認めつつも、「原告に対する人格攻撃に及ぶものとはいえない」として、違法性はないと判断した。判決文には、次のように記されている。

「被告が原告の著作を読んだこともないのに原告の著作を批判した点において、原告に対する配慮を欠くものと言わざるを得ないものの、他方で、司会者の発言にその場で直ちに対応するために口頭で述べた短いコメントにすぎないことや本件発言の内容、経緯などからすれば、未だ原告に対する人格攻撃に及ぶものとまではいえず、意見ないし論評の域を逸脱したものということはできない」

判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた桜内氏は「裁判所の公正な判決に感謝する。すべての日本国民の名誉と尊厳を守るための勝訴だったと思っている」と話した。

桜内氏の記者会見が終わって30分後、吉見氏も同クラブで記者会見を開いた、吉見氏は「『捏造』と言われることは、研究者生命にもかかわる最大の侮辱だ。不当な判決だと思う」として、控訴する意向を示した。

(弁護士ドットコムニュース)

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