観音寺道場DIARY

登場人物は仮名。内容はフィクション?どこにも公認されてないブログです。


テーマ:


村上春樹。

大好きです。

彼の作品はほとんど全て所有して、複数回読み返してます。

昨年話題になった「1Q84」の続編も楽しみですし、

エルサレム賞の授賞式での「壁と卵」のスピーチも記憶に新しいところですが、

若かりし日の彼の文章を紹介したいと思います。



自身のHPでSMAPのCDジャケットについて批判的な発言をしたのに対し、

あんぽんたんのSMAPファンが抗議のメールを送ってきたのがことの発端です。

それに対する答えが笑えます。

そして村上さんが大好きになります。




☆SMAPの新譜のデザイン問題で抗議のメール
 この前の村上ラヂオ27でSMAPの新譜のデザインについて書いたら、予想通りというか、早速SMAPファンから抗議のメールが来ました。SMAPのホームページに情報がまわったんだそうです。温厚な僕としては別にSMAPの悪口を言うつもりはなくて、新譜"La Fiesta"のジャケット・デザインがビーチボーイズの「ペットサウンズ」のマネをする必然性があるんでしょうかね?というごく当然な疑問を呈しただけなんですが。とりあえずメールをここに転載します。

> 初めまして。今回SMAPのアルバムのことで村上さんが「パクリだ」
> とHPで書いているという情報を、SMAPのファンがやっているHPで
> 読みまして、メールさせていただいております。
> 「ジャケット・デザインは、ビーチ・ボーイズの名鑑「ペット・サウンズ」
> をモチーフにしている。」と、TVガイドのCD紹介で書かれています。
> SMAPの音楽面での、スタッフ(ビクター)は洋楽に非常に詳しい
> 方々なので、SMAP&スタッフ側の遊びだと思うのですが?
> SMAP側が、モチーフにしているとはっきり言っているのだから
> 「パクリ」とかって、公のHPの中で書くのはSMAP側に失礼だと
> 思うのですが。>
> 匿名希望(特に返事が欲しいわけではありませんので。)


★抗議に対する僕の返事です
 それに対する僕の(出されなかった)返事。

 こんにちは。「SMAP側が、モチーフにしているとはっきり言っているのだから」というお説ですが、特殊能力を持ち合わせていない僕のような一般市民には、ジャケットを見ただけではそんなことはまったくわかりません。ジャケットの中にも「ペット・サウンズ」との関連性を示唆するような断り書きはひとことも書いてありませんでした(僕はその事実を確認するために、この忙しいときにわざわざ自転車に乗って原宿ラフォーレ・ビルのHMVまで行って、バナナ林に結集した猿のような少年少女の群をかきわけ、税込みで2205円出してこのCDを買ってきたのです。やれやれ)。「TVガイドのCD紹介で書かれています」とおっしゃいますが、世間のみんなが「TVガイド」を後生大事に読んでいるわけじゃないですよね。そう思いませんか? 「はっきり言っているのだから」「失礼だ」と言われても僕は大変に困ります。あるいは何か意見を言う前には、国民みんなが「TVガイド」を読むことを--いつの間にかジョージ・オーウェル的に--義務づけられてしまっているのでしょうか?

 まあそれはそれとして、もしこのCDの内容に「ペット・サウンズ」を<モチーフ>にしているような音楽的要素がはっきりと認められるのなら、もちろん「ペット・サウンズ」のジャケット・デザインを<モチーフ>にしてもまったくオーケーです。それなら筋は通っています。僕は何も文句を言いません(心静かにソファに寝ころんでジム・キャリーの映画でも見ています)。たとえば「王様」がその愉快なCD「波乗り伝説」でビーチボーイズのジャケットをもじっていても、そこにはそうするだけの必然性があります。それを<オマージュ>と呼ぶことも可能です。

 あるいはまた、ジョー・ジャクソンがかつてソニー・ロリンズの50年代ブルーノートのレコード・ジャケットをパスティシュしたように、デザインにそれとひと目でわかる、大胆に洗練された諧謔性が見受けられるのなら、言い換えれば引用を引用として認知せしめる鮮やかな自立性があるのなら、それも僕は進んで認めます(内容に言及するなら、そのときのジョー・ジャクソンの音楽には、音楽的分野こそ違え、ソニー・ロリンズの50年代ブルーノートの世界を髣髴とさせる都会性がたしかに含まれていたと僕は思っています。つまり文法が通底しているわけです)。そこまではわかりますか?

 でも率直に申し上げまして、このCDに収められた音楽とビーチボーイズの「ペット・サウンズ」に収められた音楽とのあいだには、ハリネズミの屁ほどの関連性も共通性も類似性も連続性も接続性も血縁性も交流性も共有性も共振性も貢献性もありません。あえて共通性を求めるなら、数人の男性が集まって、肺呼吸をしながらマイクに向かって歌を歌っているという事実くらいではないかと、僕は思います。かといってデザイン的に言っても、「洗練された諧謔性」「引用の自立性」なんてものは、どれだけ時間をかけて好意的に見渡しても、一切見あたりません。じゃあいったいどうして--と僕はここで声を大にしてあなたに質問したいのですが--このCDのジャケットに名鑑(盤?)「ペット・サウンズ」の<モチーフ>をわざわざひっぱってこなくちゃならないんですか? <モチーフ>というのはまことに美しい言葉ですが(フランス語には美しくて、場合に応じて好都合に雰囲気を醸し出せる言葉がたくさんあります)、僕の住んでいる世界では、そういう種類の不毛で安易な<モチーフ>取りのことを、シンプルにクールに<パクリ>と呼びます。ご存じないかもしれないのであえてつけ加えますと、それは一般に「恥ずべき行為」であると考えられています。

 オリジナリティーを欠いた才能を持ち合わせたこと自体は、不幸ではあるかもしれませんが、べつに「恥ずべき行為」ではありません。それを糊塗するために、他人のオリジナリティーをちゃっこく流用することが「恥ずべき行為」なのです。アメリカの作家、スコット・フィッツジェラルドは「他人と違うことを語りたければ、他人と違う言葉で語りなさい」と言っています。それがすべての芸術行為の根底にあるものです。またなくてはならないものです。僕はその言葉を信じて20年間この仕事を続けています。ご存じのように、自分の独自の文脈で自己を語り続けるというのは時として厳しい作業です。でもプロとしてそのような姿勢を維持していけないのなら、クリエイティブな仕事はその時点でいさぎよくやめるべきです。

 僕は(おそらく)あなたがSMAPをお好きなように、ビーチボーイズの音楽を遥か昔から(実に35年くらい前から)愛しているので、それが残した様々な美しいあり方--それは文句のつけようのなくオリジナルなものです--を、無意味に商業的にいじくりまわされることに対して、非常に強い不快感を覚えるのです。気持ちとして。何かを愛するというのはそういうことです。ビクターのスタッフの「方々」がどれだけ「洋楽」に詳しかろうが(そのような言及がどのような論拠として機能することを予期されているのか、あなたの書かれている文脈からは、僕にはほとんど想像することができませんが)、そんなことを勝手に「遊び」でやられては困ります。僕も遊ぶのは大好きですが、世間には「遊び」でやっていいことと、いけないことがあります。あなたは「遊びだからいいじゃないか」とおっしゃいますが、そんなこと言いだしたら、「遊びであれば何をやっても赦される」ということになってしまうじゃないですか。それはあまりにも幼児的な理屈だと思います。

 誤解されると困るのですが、僕は決してSMAPの音楽性や倫理性を誹謗しているわけではありません。僕はただのしがない小説家ですので、全国のSMAPファンを相手に回して喧嘩をするような度胸もありませんし、そんなことをもともと望んでいるわけでもありません。SMAPファンはSMAPファンとして、僕は僕として、この哀しみと挫折と限界に満ちた世界でいくらかでも愉しみをみつけて日々生きていくことができれば、それに越したことはないと考えています。このCDの中に収められた音楽のいくつかはなかなかよく作られていると思います。正直言って僕の好みの音楽とは言えませんが、僕が好まない立派なものごとは世間にいくらでもあります。僕はただ、このジャケットをデザインした人の意識のあり場所とその方向性(というようなものがあればということですが)がぜんぜん理解できないと言っているだけです。どうかそのことは理解して下さい。あなたはSMAPのファンであって、彼らのCDジャケットをデザインする人のファンじゃないですよね? それともSMAPのファンは、SMAPに関連するどのような細かい事実に対する批判にも、自動的に反発するように感情をセットされているのでしょうか?

 公的であろうが私的であろうが、このホームページでは僕は感じたことを感じたように書いています。そしてそれについての責任はとっています。何か間違いがあれば率直に謝りますし、理由をもっと詳しく説明しろと言われれば(今回のように)ちゃんと説明します。それが僕のやり方です。「切り捨てご免」で無責任にやっているわけではありません。自分の意見をはっきりと口にするのがもし「失礼」であるなら、他人のジャケット・デザインを意味なく流用して知らん顔をしている人間のことを、いったいなんと呼べばいいのでしょうか? 知りたいものです。本気で。

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(村上からの注)
 このビーチボーイズ「ペットサウンズ」・SMAPジャケット問題についてはかなり多くの反響があり、メールのやりとりがありました。論争というほどのものではないのですが、たしかに僕もビーチボーイズのこととなると、けっこう口調がマジになるところがあって(自分のことではあまりならないんだけど)、それについて反感を買う部分があったのだと思います。そういう意味では、メールの中でも述べていますが、僕なりにいささかの反省をしていますし、少なくとも学ぶところはありました。

 いただいたメールは賛否両論、もろに内容が重複するものはべつにして、ほとんどはここに掲載しました。村上のことを悪く書いたから削った、というようなことはまったくありません。ただひとつわかっていただきたいのは、僕はなにもSMAPを批判したわけじゃないということです。僕はこういういい加減な商品を作る日本の企業の体質に対してノーを言いたかっただけです。ご理解いただければ幸いです。しかしSMAPってすごい人気あるんですね。知らなかったけど。


観音寺道場DIARY

THE BEACH BOYS 「PET SOUNDS」

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SMAP 「La Festa」























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