男女の働き方・役割を同等化することは、進化の過程で形成された「人間社会に普遍的な慣習」を破壊するものです。
人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)
- 作者: 西田利貞
- 出版社/メーカー: 京都大学学術出版会
- 発売日: 2007/08
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労働の性的分業は、カルチャー・ユニヴァーサル、つまり人間社会に普遍的な慣習の一つである。
"Gender equality"思想に基づいた「新しいシステム」の欠陥や副作用が、犠牲者が現れることで発覚しつつあります。
まず天才や秀才が新しいシステムを考案する 。でも、そのシステムには必ず思いもよらぬ欠陥、あるいは副作用がある。人間の考えるシステムとはその程度のものだということなんですね。で、犠牲者が現れることでシステムの欠陥や副作用が発覚する。
そもそも人間が性的分業するのは、子育てのコストが大きいためです。そのことが、女は子育て・男は食料採取への特化を促進したと考えられます。
- 作者: 山極寿一
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2014/07/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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このころ*1の人類の暮らしは、男性たちが食料採取に出かけ、女性は安全な場所で待ちながら子どもたちを育てる、という形式だったと考えられます。男性を保護者とし、特定の女性とその子どもたちが連合して家族を作りました。
仮に、子育てのコスト低下and/or女の食料採取能力上昇が起これば、女にとって「食べ物をとってきてくれる」男の存在価値が低下するため、優良な遺伝子を与えてくれる男(質の追及)の需要が高まることが予想されます。男の二極化(一種の一夫多妻化)です。
- 作者: フランス・ドゥヴァール,Frans de Waal,藤井留美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/12
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メスは量よりも質を追求する。たいていの動物は、メスは交尾相手と暮らさない。元気いっぱいで健康なセックスパートナーが見つかって、わが子に優良な遺伝子を与えてくれれば、それで十分なのである。オスがメスのもとにそのまま留まる動物では、やさしくて、危険から母子を守ってくれて、食べ物をとってきてくれるオスが好まれる。
"Gender equality"が徹底した国ノルウェーでは、男の二極化が現実となっています。
アメリカでは35歳以上で「選択的シングルマザー」が増加傾向にあります。
現在約3万人の会員がいるアメリカの選択的シングルマザーの会では、会員の多くが精子バンクを介した匿名の男性から精子提供を受けて妊娠、出産にいたる。
高田さんは、「女性、そして子育てには結婚に依存しないでも生活できる基盤づくりが必要」と考える。選択的シングルマザーはこういった課題への一つの解を示すものであると言えるかもしれない。
The only group where single motherhood is growing is among those 35 and older. http://t.co/T4Q3M1Tcty pic.twitter.com/pApjrvCY8c
— The Upshot (@UpshotNYT) 2015, 5月 8
Lizzie Skurnick, 41, a publisher of young adult fiction and a writer, wanted to become a mother, but didn’t want a partner at the time. She used donor sperm to conceive her son Javier, 1, and is considering having another baby in the same way. “If I had married any of the men I had dated, and they are lovely men, I would be carrying them also, because they always made less than I did,” she said. “Honestly, that’s just an additional stress on a household.”*2
このコメントに女と男の違いがよく表れています。子を産めない男にとって、働く(稼ぐ)のは妻子のためであり、妻の稼ぎが自分より少なくても問題ではありません。しかし、自分の稼ぎで子を育てられる女にとっては、自分より稼がない夫は「自分と子の取り分を減らす」邪魔者に過ぎません。
- 作者: 小倉千加子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2007/01
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結婚とは「カネ」と「カオ」の交換であり、女性は自分の「カオ」を棚に上げて「カネ」を求め、男性は自分の「カネ」を棚に上げて「カオ」を求めている。
と言っていましたが、これは正確ではありません。結婚とは元来は「食」と「性」の交換であり、貨幣の登場後は「カネ」と「性」の交換です*3。「カオ」は二の次に過ぎません。
結婚の第一義的な意義が繁殖にあるのは自明である。
多くの社会で、配偶者の選択の基準は男女で異なる。新夫に求められる資質は、「よき提供者」たることで、将来経済的・社会的に高いステータスにつくことが求められる。一方、新婦に求められる資質は、「よき繁殖者と働き手」である。*4
カネ(食)と性の交換は、人間以外の動物にも見られます。
She suggests this study could lay the foundations for human studies exploring the link between "good hunting skills and reproductive success".
Professor Gurven, who was not involved in this study, added that the nature of this exchange of meat for sex is "kind of like pair bonding in humans, because it's long-term.
「男がカネ・女が性」が一夫一妻の安定的システムを支えていたのであれば、"gender equality"が家族形成の減少(→少子化)や犠牲者(キモくて金のないおっさん)の増大を促進しても何ら不思議ではありません。
「生身の男はいらない/優良な精子だけ欲しい」と言う選択的シングルマザーは、「ジェンダーフリー社会のトリレンマ」を象徴しているようです。