割高な「アラカルト」メニューは、幅広い種類の料理であらゆる顧客の舌を満足させてきた、格式あるレストランの象徴だった。
しかし、フランスの伝説的な名料理人、オーギュスト・エスコフィエがパルマルにあったカールトンホテルで、ロンドンにアラカルトによる食の楽しみを紹介して100年あまりが経過し、英国の一部の一流レストランは、食べ残しを減らし、コストを削減するために、顧客が自由にディナーを選ぶことを制限しつつある。
英国ウェールズのモンゴメリーにある、ミシュランの1つ星レストラン「チェッカーズ」のフランス人シェフ、ステファン・ボリー氏は、セットメニューを支持してアラカルトの廃止を決めた。「食べ残しを半減できればと思っています。アラカルトの場合、対応できないことのないよう、全ての料理を少しずつ作ります。でも(セットメニューなら)お客様が召し上がるものをこちらが選んでいるので、食べ残しを抑えることができます」
ロンドンのメイフェアにあるミシュラン2つ星のレストラン「ハイビスカス」のフランス人シェフ、クロード・ボシ氏も今月、夜のメニューからアラカルトの選択肢を無くし、その代わりに伝統的なコースメニューと、「サプライズ」メニューを1つずつ、それぞれ135ポンドで提供することにした。
英国のミシュランガイド編集者、レベッカ・バー氏は、アラカルトメニューの減少は「ここ数年で見られるようになった」という。
また同氏は、外食する顧客はレストランでの食事をまたとない経験と捉え、むしろ「テイスティングメニュー(少量で多数の料理を味わえるコース)」を好むこともよくある、と付け加えた。
「こうした方法を好むシェフも多くいますが、レストラン側も定期的にセットメニューを変更してほしいと思います。顧客はそれでも、最高水準のレストランでは、わずかでも選択肢がほしいのです」
■「質を保ちたければやめざるを得ない」
パリでは、前衛的なレストラン「セプティム」の夜のメニューは「カルトブランシュ(お任せ)」だけで、シェフのバーナード・グレボー氏による完全なお任せ5皿のコースメニューだけを提供している。パリではやりの「ビストロノミック(大衆食堂的なビストロと、美食学を意味するガストロノミーを組み合わせた造語)」の代表例の一つ「シャトーブリアン」は同様に、メニューを70ユーロの「ムニュ・ウニーク(コースメニュー)」に固定し、それ目当ての顧客が開店の何時間も前から列をなしている。
ニューヨークの「イレブン・マジソン・パーク」では、「全てを含む固定料金」という仕組みにチップさえも含ませた。295ドルの季節のテイスティングメニューは、同店で提供される唯一のメニューで、10~15皿のコース料理と飲み物といった内容だ。チップは「払うことを期待されてもいないし、受け取ってももらえない」。
ロンドンの一流レストランでは、手ごろなコースメニューがランチとしても利用されている。「ノブ」は、プロセッコという種類の白のスパークリングワイン付きの弁当を38ポンドで出している一方、「フェラ・アット・クラリッジス」にはコースが3つあり、シャンパン1杯がついて39ポンドだ。
「ヘドン」のチーフシェフ、ミカエル・ジョンソン氏は「レストランは、質を保ちたければアラカルトをやめざるを得ないだろう。多くの人は、ただ座って(出されたものを)食べることで幸せなのだ」と話している。
By Natalie Whittle
(2016年1月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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