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[FT]ミシュラン星付き料理店から消えゆくアラカルト

2016/1/20 14:15
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 割高な「アラカルト」メニューは、幅広い種類の料理であらゆる顧客の舌を満足させてきた、格式あるレストランの象徴だった。

 しかし、フランスの伝説的な名料理人、オーギュスト・エスコフィエがパルマルにあったカールトンホテルで、ロンドンにアラカルトによる食の楽しみを紹介して100年あまりが経過し、英国の一部の一流レストランは、食べ残しを減らし、コストを削減するために、顧客が自由にディナーを選ぶことを制限しつつある。

スペインのバレンシアで。伝統料理パエリヤが運ばれてきた=ロイター
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スペインのバレンシアで。伝統料理パエリヤが運ばれてきた=ロイター

 英国ウェールズのモンゴメリーにある、ミシュランの1つ星レストラン「チェッカーズ」のフランス人シェフ、ステファン・ボリー氏は、セットメニューを支持してアラカルトの廃止を決めた。「食べ残しを半減できればと思っています。アラカルトの場合、対応できないことのないよう、全ての料理を少しずつ作ります。でも(セットメニューなら)お客様が召し上がるものをこちらが選んでいるので、食べ残しを抑えることができます」

 ロンドンのメイフェアにあるミシュラン2つ星のレストラン「ハイビスカス」のフランス人シェフ、クロード・ボシ氏も今月、夜のメニューからアラカルトの選択肢を無くし、その代わりに伝統的なコースメニューと、「サプライズ」メニューを1つずつ、それぞれ135ポンドで提供することにした。

 英国のミシュランガイド編集者、レベッカ・バー氏は、アラカルトメニューの減少は「ここ数年で見られるようになった」という。

 また同氏は、外食する顧客はレストランでの食事をまたとない経験と捉え、むしろ「テイスティングメニュー(少量で多数の料理を味わえるコース)」を好むこともよくある、と付け加えた。

 「こうした方法を好むシェフも多くいますが、レストラン側も定期的にセットメニューを変更してほしいと思います。顧客はそれでも、最高水準のレストランでは、わずかでも選択肢がほしいのです」

■「質を保ちたければやめざるを得ない」

 パリでは、前衛的なレストラン「セプティム」の夜のメニューは「カルトブランシュ(お任せ)」だけで、シェフのバーナード・グレボー氏による完全なお任せ5皿のコースメニューだけを提供している。パリではやりの「ビストロノミック(大衆食堂的なビストロと、美食学を意味するガストロノミーを組み合わせた造語)」の代表例の一つ「シャトーブリアン」は同様に、メニューを70ユーロの「ムニュ・ウニーク(コースメニュー)」に固定し、それ目当ての顧客が開店の何時間も前から列をなしている。

 ニューヨークの「イレブン・マジソン・パーク」では、「全てを含む固定料金」という仕組みにチップさえも含ませた。295ドルの季節のテイスティングメニューは、同店で提供される唯一のメニューで、10~15皿のコース料理と飲み物といった内容だ。チップは「払うことを期待されてもいないし、受け取ってももらえない」。

 ロンドンの一流レストランでは、手ごろなコースメニューがランチとしても利用されている。「ノブ」は、プロセッコという種類の白のスパークリングワイン付きの弁当を38ポンドで出している一方、「フェラ・アット・クラリッジス」にはコースが3つあり、シャンパン1杯がついて39ポンドだ。

 「ヘドン」のチーフシェフ、ミカエル・ジョンソン氏は「レストランは、質を保ちたければアラカルトをやめざるを得ないだろう。多くの人は、ただ座って(出されたものを)食べることで幸せなのだ」と話している。

By Natalie Whittle

(2016年1月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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