「恋愛や結婚が難しい理由のひとつを浮かび上がらせ」た研究結果です。
いくら男性が、頭の良い女性が好きだといい張っても、実際には、自分の知性を脅かすほど頭の良い女性が好きなわけではない。研究グループが指摘するのは、今回の研究からわかることは、不安から自分を守ろうとするとき、恋人候補に求めるタイプの優先順位がひっくり返ることがあるということだ。
頭の良い女性が怖いと思う男性は、なぜ自分がそう感じるのか、考えてみてもいいのではないだろうか。
「そう感じる」理由として考えられるのは、「自分より頭が良い女は自分のことを好きにならない」「自分を見下す」ことです*1。そのような相手を好きになってもリターンが期待できないので、無駄を避ける(成功確率を高める)ために、「好きにならない」ようになっているわけです。余裕がない(≒不安から自分を守ろうとする)時ほど、失敗確率を下げるために、このような心理がより強く働くと考えられます。
要するに、これは女の上方婚志向と裏表の関係です。
「彼女たちの特性は、男をバカにしがちなことです。そもそも、男を自分より劣っている存在とみなす。それが態度に出てしまい、結果、感じの悪い女になっている。男の学歴にこだわり、平気で出身大学名を聞く。それが格下と知った途端、相手にしなくなります」
結論から言いますと、男性は自分より年収が高い女性と恋愛も結婚もできますし、女性も、自分より年収の低い男性と恋愛も結婚もできます。
ただ、基本的には、女性は自分より劣った男を好きにはなれません。
「女性には今の自分が最低ラインと考えて、男性に自分より上を求める『ステップアップ思考』があります。身長は自分より高くて学歴も年収も自分と同じかそれ以上を願う。 *2
高学歴で高収入を得て都会で働く女性にとって、ふさわしい夫を見つけることは至難の業だという。
上海で人気のお見合い番組の司会者であるNi Lin氏はロイターに対し、「中国では、身長、年齢、学歴、収入を含むあらゆる点で、男性が女性との関係において上回っているべきだと考える風潮がある」と説明。
“Hong Kong women are highly qualified and independent, but the marriage norm of men marrying down and women marrying up has remained largely intact.
東大卒の女性の配偶者の実に約7割が東大卒です。
既存の調査を見る限り、依然として「女性の」学歴上昇婚の要素のほうが強いのではないか、と思われるのです。
個人レベルで見たときに、キャリア志向の女性たちは仕事で活躍したい意識が強いにも関わらず、配偶者選択(mate selection)の際になぜ家事育児をしてくれる夫を選ばないのか、あるいは結婚後の交渉(post-marital socialization)として家事育児をしてくれるように交渉できないのでしょうか。
結論を先取りして言うと、「キャリア志向が強いからこそ」そういう夫を選ばない、そして交渉できないという実態があると私は考えています。*3
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高学歴の女性が、学歴の高くない男性を結婚相手として選ばないのは、そもそもそのような男性に魅力を感じないからである。「話が合わない」「物足りない」という言い方で、恋愛や結婚相手の対象から外してしまう。たまたま、妻が夫より高学歴という組み合わせのカップルがいても、その男性には、学歴に代えられない仕事上の能力があるというケースがほとんどである。
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容姿に対して男女で反応があまり違わない一方、教育水準の高い男性ほど女性に好まれるが、女性の教育水準に関してはそういう傾向はあまり強くないという結果が得られている。[…]女性たちは容姿よりもお金を稼ぐ能力を示す特徴のほうを重視するようである。
女の上方婚志向は、性別分業と同様、人間社会に普遍的です。つまり、進化の過程で形成された「人間の本性」の可能性が大ということです(リベラル派は否定するでしょうが)。
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労働の性的分業は、カルチャー・ユニヴァーサル、つまり人間社会に普遍的な慣習の一つである。
このことは、社会全体で女と男の結果平等(教育水準や所得の面で)を推し進めるほど、結婚市場における男女のミスマッチが増大することを意味します(上の香港の記事を参照)。男女の結果平等という「正義」が、その社会を破壊することになるわけです(文化大革命が思い出されます)。
反例として北欧を挙げる人がいるかもしれませんが、スウェーデンやノルウェーでは、
- 男の約1/4は生涯無子(childless)⇒「無敵の人」予備軍?
- 新生児の母親の約1/4は移民
となっています。一部のリベラル派を除けば、これを成功した理想社会とは見做せないでしょう。
西田利貞は
人間は社会をどのようにも変えられるという考えがあるが、これは知られている限りでは長期的に成功した試しがない。
と書いていましたが、北欧の後を追う日本は一体どうなってしまうのか。
余談
医療関係者の知人(男)から聞いた話です。
知人が女の医学生(東大理Ⅲを含む)と雑談していたところ、恋愛や結婚の話になったそうです。その先の展開は、
- 知人:「君たちみたいに頭が良いと相手を見つけるのも大変でしょう」
- 彼女たち:「私たちが結婚できなくなるってことですか」(抗議するような口調で)
- 知人:「いや、君たちより『下の男』と結婚すればいいだけだよ。いくらでも相手はいるよ」
- 彼女たち:(即座に)「嫌です」
その結果がこれです。
なお、女医の多くが男の医師と結婚しています。
参考
アメリカの「無敵の人」の心理
http://www.nytimes.com/2015/10/03/us/chris-harper-mercer-umpqua-community-college-shooting.html
“People like him have nothing left to live for, and the only thing left to do is lash out at a society that has abandoned them,” the user wrote days after the Roanoke shooting.