この世の中では、何かを実現するためには別の何かを犠牲にしなければならないのが普通です。
国際金融においては、
- 国際資本移動の自由
- 為替レートの安定
- 金融政策の独立性
の三つを同時に満たすことができない「国際金融のトリレンマ」が存在します。
これと関連しますが、通貨に関しては、
- 複数の国・地域が通貨を共有する(通貨同盟)
- 財政政策の独立性
- 各国・地域の均衡ある成長
の三つを満たすことはできません。ユーロ圏で各国の均衡ある成長が実現していないのは、1と2を選択しているためです。
ヨーロッパ統合の理想を具現化した通貨統合が、逆に内部対立を深めているわけですが、男女平等・ジェンダーフリー社会の理想にも、同様の矛盾が存在します。
- 男女の働き方・所得の均等化*1
- 女の上方婚志向
- 社会の持続
の三つは同時に実現できません。1と2を選択すると、非婚化→少子高齢化→過疎社会→消滅への道です*2。2と3を選択すると、男が家計の大黒柱になる伝統的な夫婦分業になってしまいます。ジェンダーフリー社会を持続させるためには、男(夫)に対する要求水準を下げて、「自分より稼がない男」「自分より低レベルの男」と結婚する女が増える必要があるわけです。
- 作者: ダニエル・S.ハマーメッシュ,Daniel S. Hamermesh,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: 単行本
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容姿に対して男女で反応があまり違わない一方、教育水準の高い男性ほど女性に好まれるが、女性の教育水準に関してはそういう傾向はあまり強くないという結果が得られている。[…]女性たちは容姿よりもお金を稼ぐ能力を示す特徴のほうを重視するようである。
40歳くらいの時に結婚相談所に入ったんです。当時の私の年収は1千万円くらい。それなのに、交際を申し込んでくる男性は年収250万円程度の介護士や派遣社員ばかりだったんです。憤りを通り越して悲しかったですね。即退会しました。
年齢にもよるとは思いますが、40歳で500万円なら「あなた、これまで一体何してきたの?」って言いたくなる。私自身はいま、1千万円には届きませんが、そんな年収の低い人と結婚するくらいなら一生一人でいいです。
「某中堅私大を出た夫がバカすぎて耐えられず離婚しました。たとえば、夫が『シェールガス』という言葉を知らなかった時には、本気で失望しました。こんな世間知らずな人といたら、私までバカになってしまうと身の危険さえ感じました」(一橋大法学部卒・33歳)
日本社会の持続を所与の条件とすると、1と2のどちらかを捨てる必要がありますが、“主義者”(ラウドマイノリティ)ではない日本の“普通の女”(サイレントマジョリティ)はどちらを希望するでしょうか。
人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)
- 作者: 西田利貞
- 出版社/メーカー: 京都大学学術出版会
- 発売日: 2007/08
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人間は社会をどのようにも変えられるという考えがあるが、これは知られている限りでは長期的に成功した試しがない。
追記
個人レベルで見たときに、キャリア志向の女性たちは仕事で活躍したい意識が強いにも関わらず、配偶者選択(mate selection)の際になぜ家事育児をしてくれる夫を選ばないのか、あるいは結婚後の交渉(post-marital socialization)として家事育児をしてくれるように交渉できないのでしょうか。
結論を先取りして言うと、「キャリア志向が強いからこそ」そういう夫を選ばない、そして交渉できないという実態があると私は考えています。
東大卒の中野円佳がいろいろと言い訳を書いていますが、結局は自分が大黒柱になって家事育児する夫を養いたくないだけでしょう。社会や政府の責任にするのは卑怯です。