2016年1月20日(水)

羽生善治の「不調」を乗り越える「経験則」

茂木 健一郎:世界一の発想法

PRESIDENT 2015年11月16日号

著者
茂木 健一郎 もぎ・けんいちろう
脳科学者

茂木 健一郎1962年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学博士専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)のほか、著書多数。

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茂木 健一郎 写真=時事通信フォト
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先日、将棋の羽生善治さんとお目にかかる機会があった。羽生さんとは、これまでも何回もお目にかかってお話ししているが、いつ会っても面白い。

今回の話もいろいろと刺激的だった。さまざまなことが話題になる中で、印象に残った言葉がある。それは、好調、不調ということに関する「経験則」である。

寝癖のイメージがある羽生善治氏。画像は2009年、名人戦を防衛した際のもの。(写真=時事通信フォト)

かつて、タイトル七冠を達成し、現在も四冠の羽生さん。将棋界の押しも押されもせぬトップだが、そんな羽生さんでも、負けることがあるのが将棋の世界。羽生さんの通算勝率は7割を超えて歴代トップだが、それでも10回に3回弱は負けていることになる。

たまたまかもしれないけれども、負けが続いたとき、どうするか? 羽生さんは、「その負けが単なる不調なのか、それとも、実力を反映しているのかを見極める必要がある」とおっしゃった。

将棋界には、「不調も3年続けば実力」という言葉があるのだという。たまたま、巡り合わせで負けが続くことがあるかもしれないが、それが3年も続けば、もはやそれは実力を表している。

自分の努力の仕方、知識その他に何らかの問題点があるものとして、点検してみなければならない。

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