後藤健二さん殺害予告から1年 改めて考える事の意義

2016年1月20日13時10分  スポーツ報知
  • 「後藤さんの死の背景にある、シリアでの無数の死を考えるべき」と強調する綿井さん
  • 後藤さんがアフガニスタンで撮影した写真を題材にしたアート作品と高津さん
  • 高津さんが後藤さんへの追悼の意を込めて作成したスワロフスキーのリング。太陽系を俯瞰するイメージになっている

 過激派組織「イスラム国」(IS)がフリージャーナリスト・後藤健二さん(享年47)の殺害を予告する映像を公開してから20日で1年となった(ISは2015年1月31日までに後藤さんを含む2人の日本人を殺害したとの声明を発表)。あの衝撃から1年が経ち、後藤さんと同じ立場に立つフリージャーナリストたちが中心になり、「危険地報道を考えるジャーナリストの会」が発足した。

 メンバーたちは「ジャーナリストはなぜ『戦場』へ行くのか」(集英社新書)を出版し、15日にはメンバーらがシンポジウムを都内で開催。危険地報道についての意義や政府からの圧力、国民の理解度などについて議論した。

 2003年のイラク戦争での米軍による空爆を現地からリポートし「ボーン・上田国際記者記念賞」を受賞した映像ジャーナリストの綿井健陽さん(44)もメンバーの一人。01年にはアフガニスタンで会ったこともある後藤さんの死について「同業者としての悲しみはある。しかし、報道関係者の死を殊更に英雄視するべきで、ありません。考えるべきなのは後藤さんの死の背後にはシリアの人々の無数の死があるという現実だと思います」と強調していた。

 綿井さんが言うとおり、死を美化するべきではないだろう。しかし、後藤さんがシリア入りして伝えようとしたことについて、考えることには意義はあるはずだ。後藤さんと親交が深かったアーティストの高津央(こうづ・なかば)さんとシンガー・ソングライターの静(しずか)さんは昨年6月、後藤さんへの追悼の意を込めた音楽CD「by your side」をリリース。その中の1曲には、後藤さんが事務所に残したメモに書き残されていた賛美歌「私をお使いください」が含まれている。

 高津さんは後藤さんの遺志を継ぎ、シリアの人々の支援やジャーナリスト育成するための「後藤健二基金」を設立したい意向を持っている。CDはそのための第一歩とする目的で作成されたが、認知度はまだ十分ではない。事件から1年を機にデザイナーとして、スワロフスキーの天然石を使用したシルバーの追悼指輪も試作した。宇宙に憧れていた後藤さんへの思いを込め、太陽系を俯瞰(ふかん)するイメージになっている。「作る準備はできたので、あとは受け皿となってくれるところが手を挙げてくれれば」と今後は、収益を管理して基金を運営してくれる企業・団体を探していく考えだ。

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