芥川賞の滝口さん「小説家はいつも、やばいと思っていないと」
2016年1月19日22時31分 スポーツ報知
第154回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は滝口悠生さん(33)の「死んでいない者」(「文学界」12月号)と本谷有希子さん(36)の「異類婚姻譚」(「群像」11月号)に、直木賞は青山文平さん(67)の「つまをめとらば」(文芸春秋)に決まった。贈呈式は2月下旬に都内で行われる。賞金は各100万円。
芥川賞を受賞した滝口さんは2度目の候補での受賞。前作の「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」は青春小説だったが、今回は埼玉県を舞台にした家族小説。ある一族の通夜から始まり、徐々に家族の全体像が見えていく構成。「ある程度長いものを書こうと思っていたら、登場人物が多くなってしまった」。昨年10月、勤めていた食品輸入会社を辞めて執筆に専念。「小説家はいつも『やばい』と思っていないといけない」と自分を追い込んで結果を出した。
選考委員の作家・奥泉光氏によると「非常に工夫があり、空間、時間の広がりを作り出している」と評価されたという。
4度目の候補で芥川賞を受賞した本谷さんは、夫婦間の顔が似てくるという不気味さを作品で描いた。昨年10月に長女を出産して二重の喜びとなった。選考委員の間では「説話の構造で夫婦間が巧みに描かれていた。本谷さんのこれまでの作品にあった凶暴がもっとあっても良いのではないか、という意見も出た」と評価されたという。本谷さんは「そのときの自分の人格に引っ張られちゃう。最近だらだらしているのが、そのまま出たと思います」と話した。