Hatena::ブログ(Diary)

竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2016-01-20

「10年後、生き残る理系の条件」(竹内健著・朝日新聞出版) が本日発売になりました。

年末からこのブログでも告知をしてきましたが、「10年後、生き残る理系の条件」が朝日新聞出版から本日発売になりました。

前著「世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記」(幻冬舎新書)が出たのが2012年1月28日ですので、本を出すのが4年ぶりということになります。

私の本業は大学での研究、教育ですが、現在の日本の電機メーカー・半導体メーカーの凋落を見ても明らかなように、技術だけをやっていて日本の産業競争力を保てるのか、という危機感があります。

今は日本が高い競争力を持つ自動車産業も、電気自動車・自動運転とコンピュータ化・IT化が進んだ時には、グーグルやアップルなどのIT企業も競争相手になりかねません。

ゲームのルールが変わった異種格闘技戦で、いつまで日本の自動車産業は競争優位を保てるのか。

大学も変わらなければいけません。

私も大学で「工学デザイン」という、技術とビジネスを橋渡しする技術経営(MOT)の講義を2年前に始めました。

ただ、私の本業はあくまでもIT・エレクトロニクスの研究ですので、技術経営にさほど時間を割いているわけではありません。このような一般書を出版するモチベーションもさほどありません。

前著が出てから、ありがたい事にいくつか本の出版のお誘いを頂きました。

その中でこの本の出版に挑戦してみよう、となったのですが、実は途中で頓挫してしまいました。

何が何でも本を出版しよう、という情熱が自分に足りなかった。途中で飽きてしまった、研究の論文を書いている方が楽しいから、というところでした。

ですから編集者さんには本当に迷惑をかけてしまいました。

出版にまでたどり着けたのは、編集者さんの並々ならぬ情熱のおかげです。

もうひとつ、プロジェクトが再開するきっかけとなった大きな出来事がありました。

2015年には東芝の不適切会計事件が起こりました。原因として、上司のパワハラ・経営陣の派閥争いなどと言われましたが、それは違うだろう。

自分には伝えるべきことがある、東芝が誤解されたままでは我慢ならないと思い、この本の出版プロジェクトが再開されました。

本書でお伝えしたかったことは、東芝の不適切会計問題と今後のリストラは、決して特別の事ではなく、誰にでも起こりうることではないか。

むしろ将来は不透明である、ということを前提に日々の仕事をし、キャリアパスを考えるべきではないか。

学生の時には「抜き打ちテスト」というのがありましたよね。

キャリアもそれに似ていて、いつ会社が潰れてもおかしくない、と備えている人が生き残るのではないでしょうか。

ダーウィンの進化論になぞらえて、「変化できる者が生き残る」とよく言われますが、「変化に日々備えている者が生き残る」のでしょう。

とはいえ、本を書くには「ネタ」が必要です。

この本にお金を払って頂くだけの価値があるのかは、これから読者の皆様の評価を待つしかないです。

一般的には、2つめの著作は難しいと言われています。

最初の著作がそれまでの人生で蓄積してきたネタを全てさらけ出せるのに対し、2作目までネタが続くのか。

私の場合は1作目と2作目の間に4年たったわけです。その間、日本の電機産業を取り巻く環境は大きく変わりました。

産学連携の応用研究を行っている私も、自然と産業界の変化に巻き込まれることになりました。

例えば、共同研究を行っていたエルピーダメモリが倒産し、小額ですが、大学も支払いを踏み倒された、などということもありました。

また、新しい技術を開拓しようとすると、ボトルネックが組織問題に行き着くことが多いのです。

技術問題を解決するには、組織問題を解決することが先決になる。仕方なく、技術経営を掘り下げることになります。

ですから、激変に見舞われた日本の電機・半導体の研究開発の副産物として生まれたのが本書とも言えるでしょう。

皮肉なことに、もし日本の電機・半導体がこの間に順調であったならば、この本が生まれることはなかったでしょう。

この本を書いた根底にあるのは、日本の電機・半導体が消滅してたまるかという思いです。

今ままでと同じやり方で電機・半導体が復活するとは思えませんが、ビジネスモデルを変えながら必ず復活してみせる。

政府のせい、会社のせい、という受身の姿勢ではなく、エンジニアの個人が主体的に生きることで産業としても復活を目指したいと考えています。

それだけのポテンシャルが日本のエンジニアのみなさんにはあると思うのです。

エンジニアのみなさんの潜在能力を発揮するために、この本が少しでもお役に立てれば、著者としてこれ以上うれしい事はありません。

本書の構成は以下の通りです。

【第1章】生き残るためには、常識を疑う

・東芝の不適切会計とは何だったのか

・企業の中で頑張るほど、世の中が見えにくくなる

・天才エンジニアではなかった私がしたこと

・T字型人間を目指そう

【第2章】苦境にあえぐエレクトロニクス業界

・「昨日の勝者」が「明日の敗者」になる時代

・業績が落ち込んだ組織は、視野狭窄に陥りがち

・自分を守れるのは自分しかいない

【第3章】新たに必要なのは文系力

・「文系力」を身につけよう

・自分を世界にアピールする方法

・転職がうまくいく人・いかない人

【第4章】日本のものづくり復活のカギ

・エンジニアリングデザインの思考法

・とことんユーザーの立場に立って考えること

・社内のデータをうまく活用しよう

・この国で圧倒的なエンジニアを生み出すヒント

【第5章】エンジニア人生は逆張りでいこう

・家庭はすべての基本だ

・エンジニアに大切な情報の取捨選択法

・英語はエンジニアの命綱

・エンジニアが知っておきたいこれからの就活

・想いを実現するための三つのルール

・事業も人生も逆張りでなきゃ

【対談】城繁幸×竹内健 会社を飛び出した先に道はあるのか?

・激変するエンジニアのキャリア

・よい会社、まずい会社の見分け方

・人事は優秀な人材を見抜ける?

・日本企業の「真空地帯」

・会社で昇りつめたあとの行き先

・キャリアチェンジは入社何年まで可能?

・エンジニアの市場は増えている

・「人の不良債権」がこれから出てくる

・自分の市場価値を知る方法

10年後、生き残る理系の条件

10年後、生き残る理系の条件

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Takeuchi-Lab/20160120/1453243181
2008 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2010 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2012 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2013 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2014 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2015 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2016 | 01 |