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2016年1月19日、総合商社の丸紅と、宇宙開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ(IST)は、ロケットの開発や打ち上げビジネスについての業務提携を発表しました。
日本ではJAXAのH-IIAロケットやイプシロンロケットなどが人工衛星打ち上げに利用されていますが、純民間で開発した宇宙ロケットが実用化されれば初のことになります。
アメリカのスペースX社の「ファルコン9ロケット」など、世界にはいくつかの民間宇宙ロケットプロジェクトがありますが、ISTの宇宙ロケットはそれらとは少し違う「超小型ロケット」です。
ロケットの「ヒッチハイク」から「バイク便」へ
既存のロケットは、大型のH-IIAロケットで数トン程度、小型のイプシロンロケットでも数百kgの大きな衛星を打ち上げることができます。衛星の価格は数百億円、ロケットも数十億円程度のビッグビジネスです。一方、最近は重量が100k以下、小さなものでは数kgという「超小型衛星」が急速に進歩しています。スマートフォンに使われるようなコンパクトな電子部品を使うことで、価格も数億円、小さなものでは数十万円と桁違いに低く抑えることができます。
超小型衛星を宇宙へ運ぶ際は、H-IIAロケットなどに「相乗り」するのが一般的です。大きな荷物を運ぶトラックに、小包を1個載せてもらうところを想像すると良いでしょう。しかし、大型ロケットは主なお客さんである大型衛星の都合で、打ち上げ日時も行先(軌道)も決まります。超小型衛星は、自分が行きたい軌道へ打ち上げられるロケットが現れるまで待って載せてもらう「ヒッチハイク」のような状況なのです。
ISTが今、目指しているのは超小型衛星打ち上げ用の、超小型ロケットです。超小型衛星を1つだけ打ち上げるようなサイズのロケットがあれば、必要なときに自由に宇宙へ送ることができます。大型トラックを待たずに小包を運べる「バイク便」のようなロケットが、必要とされているわけです。
下町生まれの超小型ロケット
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ISTのもうひとつの特徴は、既存のロケット製造メーカーからの技術導入ではなく、町工場や秋葉原で購入できる部品などを使い、ほぼゼロからロケットを作り上げてきたことです。実際、開発メンバーの1人でもある漫画家のあさりよしとお氏は著書の中で、初期の実験は自宅の風呂場でやったというエピソードも披露しています。
こうした経緯から、ISTはまず小さなロケットから作るしかない、という見方もできます。この点は、最初から大きな衛星を打ち上げているスペースX社などとは違うところです。しかし、超小型ロケットという現在は存在しない「ニッチな市場」へ斬り込むことに、チャンスを見出しているのでしょう。
商社のプッシュはロケットを加速するか
これまでISTは、創業者の1人で主な資金提供者である堀江貴文氏のイメージが強かったこともあり、ともすれば「ホリエモンの道楽」のような見方をされることもあったように思います。しかし、総合商社である丸紅と業務提携したことで、ISTのロケットは本格的にビジネスを目指しているという信用アップにもつながるでしょう。
また、超小型衛星のユーザーにとっては、欲しいのはロケットではなく、超小型衛星を使って地球を撮影するなどのサービスです。衛星の製造や地上管制システムなどと組み合わせ、システムとして提案し販売することは、まさに商社の出番と言えるでしょう。
超小型衛星の開発ではアクセルスペース社など、日本でもビジネスが始まっています。今回の丸紅とISTの提携で、超小型ロケット打ち上げビジネスも加速するでしょうか。現在、ISTでは高度100km以上、宇宙空間に到達するロケットの開発を進めており、2020年頃には超小型衛星用の低価格ロケット打ち上げを目指しているとのことです。
インターステラテクノロジズ株式会社との業務提携について(株式会社丸紅)
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