防御できず頭損傷、即死状態…検案の医師
15人が死亡した長野県軽井沢町のスキーツアーバス転落事故で、遺体の死因などを確認する「検案」を担当した軽井沢病院副院長、中村二郎医師(52)が取材に応じ、犠牲者が防御姿勢をとれないまま頭部などを損傷、ほぼ全員が即死状態だったことを明らかにした。大量出血や全身骨折など他の外傷は少なかったといい、犠牲者が瞬間的にかなり大きな衝撃を受け、致命傷を負ったとみている。
事故発生時、中村医師は病院近くの宿舎にいて、県警軽井沢署で検案を任された。死因は頭蓋(ずがい)内損傷が9人、頸椎(けいつい)損傷が4人で、残る2人は全身強打だった。少なくとも14人が脳や首の骨に致命傷を負っていたが、ほとんどの遺体は頭や首、肩に目立った傷や内出血が1、2カ所ある程度。「顔もきれいな人ばかり。外見の傷と体内に受けたダメージの落差を感じた」と中村医師は話す。
バスは国道18号バイパスの現場手前で制御困難になっていた可能性があり、ガードレールを突き破って道路脇に転落、車体の右側を下にして横転した。遺体で外傷があるのも右半身ばかり。シートベルトの着用痕とみられる下腹部の帯状の内出血は数人にしかなく、ほとんど着用していなかったとみられ、「座席の位置にかかわらず、シートベルト未着用の乗客は衝撃で飛ばされてしまったのではないか」と推測する。
一方、事故当時に運転していた土屋広運転手(65)=東京都青梅市=の詳細な死因は、全身を強く打って即死したことを示す「多発外傷」だったことが、捜査関係者への取材で判明した。
軽井沢署捜査本部による事故車両の検証では、運転席のエアバッグは作動していたことが確認されている。【尾崎修二、巽賢司】