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韓国、VW現法社長を刑事告発 リコール計画「不誠実」

2016/1/19 19:59
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 【ソウル=小倉健太郎】独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で韓国環境省は19日、同社の韓国法人社長を刑事告発したと発表した。同社が提出したリコール(回収・無償修理)計画書が「極めて不誠実」だと判断し、リコールを義務付けた大気環境保全法違反だと指摘した。VWに刑事責任を問うのは主要国で初めて。新興国などの当局の判断に影響を与える可能性もある。

VWに刑事責任を問うのは主要国で韓国が初めて=AP

VWに刑事責任を問うのは主要国で韓国が初めて=AP

 環境省の担当課長は記者会見で「リコールの実施率を高める計画の提出も求める。どういう意味かはVWも分かるはずだ」と述べた。リコールで排ガスを調整する違法ソフトを外すと燃費が悪化するため、リコールに応じない消費者が少なくないと指摘されている。同課長は、VWが米国では顧客への金銭補償を表明したことにも言及し、韓国でも同様の措置をとるよう遠回しに求めた。

 VWは一部の車種に違法なソフトを搭載し、排ガス検査の時だけ窒素酸化物(NOx)の排出量を抑えるようにした。韓国環境省はこのような「欠陥」が発生した原因の説明を求めたが、6日に提出したリコール計画書では欠落。改善方法についても「準備ができていない」として十分な記述がなかったという。

 環境省は14日に追加書類を提出するようVWに指示したのと併せて刑事告発の準備をしてきたという。19日にはVWのドイツ本社のエンジン部門幹部や韓国法人のタンマー社長らが同省を訪問して説明をしたが、告発を取り下げる予定はないという。有罪になると5年以下の懲役か3000万ウォン(約290万円)以下の罰金が科せられる。

 同省は2015年11月、VWと傘下のアウディが韓国で販売した15車種12万台超のリコールや課徴金141億ウォンの支払いを命じた。独自検査の結果、不正があったと判断した。いまも対象車種を広げ検査を続けている。

 韓国では低燃費や環境負荷が低いとのイメージからディーゼル車の人気が高く登録台数の約4割を占める。ドイツを中心とした欧州車がけん引役だ。新車販売における輸入車のシェアは16%で、VWは傘下のアウディを合わせるとトップだ。

 VWを巡っては、欧州でも投資家らの訴訟の動きが本格化。現地報道によると、ドイツの法律事務所は週内に、米国と英国の66の機関投資家を代表してVWを訴える計画だ。VWの株価下落で総額数億ユーロの損失を被ったとして補償を求める。

 米環境保護局(EPA)が15年9月に不正を初めて公表する前にVWが不正を知っていたかが焦点の一つ。独連邦金融監督庁はVWに開示義務の違反があったかを調べている。また15年秋時点で、ドイツの個人投資家らの訴訟も始まった。

 欧州では当局がVWに対し、不正があったディーゼル車の購入時の補助金や税制面の優遇措置分を返還を求めている。

 一方、VWにとって最大の市場である中国は検査を実施中だが、厳しい措置はとらないとの観測が浮上している。

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