中国の昨年の経済成長率は6・9%だった。25年ぶりの低い伸び率とはいえ、7%前後という政府目標にはほぼ達した。重要なのは数字の大小ではなく、どう安定的に成長を続けるのか、そのかじ取りにある。わけても過剰投資に陥りがちだった経済構造を変革していくことがカギを握る。

 中国のこれまでの経済成長は投資頼みだった。設備投資やインフラ投資が国内総生産(GDP)に占める割合は50%に近く、中所得国の平均的な水準のほぼ2倍だ。共産党と中央・地方政府の指示のもとで国有銀行、国有企業が動員されてきた結果であり、市場経済化が進んだ今もその体質は残る。

 投資の実行はその時点で経済成長率を引き上げるが、需要からかけ離れた供給力が積み上がれば、経済は早晩行き詰まる。

 無駄な設備を抱えた国有企業を整理する改革は過去の政権も進めた経緯はある。しかし、リーマン・ショック後の景気対策で、再び過剰投資を招き、現在の経済不振はその後遺症と言える。不動産投資は空きビルを林立させ、鉄鋼や非鉄金属、ガラス、セメントといった業種で設備を持て余す状況となった。

 発足から3年になる習近平(シーチンピン)政権は、経済改革に本腰を入れる構えは見せながらも、過剰投資の問題にはあまり触れてこなかった。地域振興を優先する地方政府の抵抗があったのだろう。ようやく昨年12月の中央経済工作会議で「過剰生産能力の解消」を優先課題に掲げた。改革に踏み出す準備ができつつあるとみることができる。

 一方で景気は悪化している。こんな時期に大なたを振るえば不況を深刻化させる心配があろう。だから財政出動を拡大する姿勢を同時に示しているのは、軟着陸を目指すうえでは理解できる。とはいえ、改革を中途半端に終わらせてはならない。

 財政投入でインフラ建設を進めるにも、中身の吟味は必要だ。例えば重点項目に鉄道整備が挙げられている。年間8千億元(14・5兆円)規模の投資をするというが、採算と経済効果のチェックは欠かせない。

 重厚長大型産業が低迷する中で、都市部の消費が比較的堅調なのは明るい材料だ。今後は国有企業を守るよりも、消費動向に敏感な民間企業が育つ環境づくりが、新たな雇用を生むためにも重要だ。民間の力を主に、政府の調節を従にすることが長い目でみて成長に資する。

 そうした改革を世界各国が求めている。中国抜きに世界経済の安定は語れないからだ。