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【直木賞選評】作家、宮城谷昌光さん「哲学的な思考をユーモアでくるんだ時代小説」

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【直木賞選評】
作家、宮城谷昌光さん「哲学的な思考をユーモアでくるんだ時代小説」

会見する、直木賞を決めた青山文平さん=1月19日午後、東京都千代田区(早坂洋祐撮影)

 第154回直木賞は19日、青山文平さん(67)の『つまをめとらば』(文芸春秋)に決まった。同日午後5時から東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれた選考会後、選考委員で作家の宮城谷昌光さんが会見し、選考の経過を説明した。

 『つまをめとらば』は最初の投票で、ただ1作過半数を獲得した。しかし、議論の過程で、宮下奈都さん(49)の『羊と鋼の森』(文芸春秋)、深緑野分さん(32)の『戦場のコックたち』(東京創元社)とともに3作品が最終選考の対象となり、最終的に『つまをめとらば』1作を受賞作に選んだ。

 『つまをめとらば』には、ユーモアがある。ユーモアが書ける人は、知性と知的なゆとりがある人だ。藤沢周平さんの作品に似ているという委員もいたが、藤沢作品よりも明るく爽快感がある。また、短編集は受賞するのは難しいが、レベルがそろっている。質力のレベルが高い証左であり、賞にふさわしい文章力。

 次点となったのは宮下さんの『羊と鋼の森』。題名から推測されるように、題名全体がピアノをあらわしている。新米のピアノ調律師が成長していこうとするシンプルな設定。しかし、調律を通して、小説的表現さえも表現しようとした二重奏的な深みがあり、芥川賞候補作となってもいい内省的な作品。ただ、ストーリーがなく面白くないという委員も2人いた。司馬遼太郎さんは「自己意識の強い人が芥川賞、他者との関係に目を向けたものが直木賞向け」とうまく表現した。この作品は自己に向いているが、とげが少なく、非常になめらかにカンナがかかっている。だったら、直木賞として受け止めたいと思った。

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