宵には冬の華々しい星たちが輝き、深夜から明け方には明るい惑星たちが並び、夜空を彩っています。暖かくして今年の星見初めをしてみましょう。
星空写真開く
1月の星空開く
南の空
2016年1月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空のようすです。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(24日)、上弦(17日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。
北の空
2016年1月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空のようすです。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
1月の天文カレンダー開く
1日(金) | 初日の出 未明~明け方、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
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2日(土) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星がよく見えます) このころ、未明~明け方にカタリナ彗星がアルクトゥールスに大接近(「今月の星さがし」で解説) |
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3日(日) | 未明~明け方、月とスピカが並ぶ | |
4日(月) | 未明~明け方、月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説) | |
7日(木) | 未明~明け方、細い月と金星、土星が接近(「今月の星さがし」で解説) | |
9日(土) | このころ、未明~明け方に金星と土星が大接近(「今月の星さがし」で解説) | |
10日(日) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星がよく見えます) | |
15日(金) | このころ、深夜~明け方にカタリナ彗星が北斗七星の柄の星に接近(「今月の星さがし」で解説) | |
17日(日) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) | |
20日(水) | 未明、月とアルデバランが並ぶ 夕方~翌21日未明、月とアルデバランが並ぶ(20日未明とは並び方が異なります) |
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24日(日) | 満月。次の満月は2月23日です | |
26日(火) | 未明~明け方、月とレグルスが並ぶ 宵~翌27日未明、月とレグルスが並ぶ(26日未明とは並び方が異なります) |
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27日(水) | 深夜~翌28日明け方、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説) | |
31日(日) | 未明~明け方、月とスピカが接近 |
1月の惑星開く
水星
水星は7日ごろまで、夕方の南西の低空に見えます。このころまでは日没30分後(東京で夕方5時過ぎ)の地平線からの高度が5度以上あり、太陽から大きく離れることのない水星としては比較的見やすい条件です。冬は空の透明度も高いので、水星を見つけるチャンスです。
見やすいとはいえ、目印がないので位置がわかりにくいかもしれません。モバイルアプリなどで方位と高度をよく確かめて、見晴らしのよいところで探してみましょう。双眼鏡があると見つけやすくなります。
その後、一度太陽と同じ方向になって見えなくなりますが、22日ごろ以降は明け方の南東の低空に見えるようになります。日の出30分前(東京で朝6時過ぎ)の高度が5度を超え、やはり水星としては見やすい条件です。月末には金星と並ぶようになるので、金星を目印としてその左下のほうを探してみましょう。
金星
明けの明星の金星は、未明から明け方の南東の空に見えます。
上旬を中心に、土星や「さそり座」のアンタレスと接近しており、3つの明るい星が集まって見えます。色や明るさの違い、並び方の変化などに注目して観察してみましょう。
さらに7日には、細い月も接近してきます。早起きして、4天体の共演を肉眼や双眼鏡で眺めたり地上風景と一緒に写真に収めたりしてみてください。
また、2015年12月からは探査機「あかつき」が金星周回を始めました。探査機が見えるわけではないですが、金星を眺めるときには「あかつき」にも思いをはせてみましょう。
火星
火星は「おとめ座」から「てんびん座」を動いています。未明の1時ごろに昇ってきて、夜明けごろに南の空に見えます。明るさは約1.1等級です。
火星は5月31日の地球最接近に向けて明るさを増していきます。そんな中、今月の火星はまだ大注目というほどは目立ちませんが、「おとめ座」の青白い1等星スピカとやや離れて並んでいるので、対照的な色を確かめてみましょう。
4日に月と大接近します。肉眼でも美しい光景を楽しめるので、ぜひ眺めてみてください。
木星
木星は「しし座」と「おとめ座」の境界あたりにあります。夜9時ごろに昇ってきて、明け方4時前に南の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス2等級です。
高く上るようになり、観察しやすくなってきました。双眼鏡で眺めると、木星の周りを回るガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)がわかります。衛星の並び方が日々変わるようすを確かめてみましょう。天体望遠鏡では衛星だけでなく、表面の縞模様や大赤斑という巨大な渦巻き模様も見えます。
また、肉眼や双眼鏡では月との接近を眺めるのも楽しみです。12月31日深夜から1月1日明け方と、27日深夜から28日明け方の2回チャンスがあります。
土星
土星は「へびつかい座」にあり、明け方の南東の低空に見えます。明るさは約0.5等級です。
上旬を中心に、金星や「さそり座」のアンタレスと接近しており、3つの明るい星が集まって見えます。色や明るさの違い、並び方の変化などに注目して観察してみましょう。
さらに7日には、細い月も接近してきます。早起きして、4天体の共演を肉眼や双眼鏡で眺めたり地上風景と一緒に写真に収めたりしてみてください。
低いため天体望遠鏡での観察にはあまり向いていませんが、金星と最接近する9日には100倍程度の望遠鏡の視野内に2惑星が収まるほどの大接近となりますので、望遠鏡をお持ちの方はぜひ観察してみましょう。
今月の星さがし2016年の天文現象/金星と土星が大接近/カタリナ彗星開く
今月はまず、2016年の主な天文現象をご紹介しましょう。また、明け方の空で金星と土星が大接近する様子や、双眼鏡で見えると期待されているカタリナ彗星についてもご案内します。
2016年の天文現象
部分日食(3月9日)
3月9日の朝10時ごろから昼12時ごろにかけて部分日食が起こり、全国で見られます。日本で見られる日食は2012年5月の金環日食(地域により部分日食)以来、4年ぶりです。インドネシアなどでは、太陽がすべて月に隠される皆既日食となります。
太陽の欠け方は観察場所によって異なり、南の地方ほど欠け具合が大きくなります。また時刻も場所によって異なり、東京の場合は10時12分ごろに欠け始め、11時8分ごろ欠け具合が最大に(太陽の直径の4分の1ほど欠ける)、12時5分ごろに終わります。
ペルセウス座流星群(8月12日ごろ)、ふたご座流星群(12月14日ごろ)
一年のうちある決まった時期に、星空の中の一点を中心として流れ星が飛ぶように見えるのが流星群です。とくに8月中旬のペルセウス座流星群と12月中旬のふたご座流星群が、流れ星の数が多く見やすい流星群として知られています。
ペルセウス座流星群は8月12日ごろに見ごろとなります。深夜以降は月明かりの影響がないので好条件で楽しめるでしょう。ふたご座流星群は12月14日ごろに活動がピークとなりますが、満月と重なっているので見えにくそうです。
惑星の見ごろ
惑星は星座の中を動いていくので、毎年見ごろとなる時期が変わっていきます。今年、宵のころに見やすい時期は、木星は2月中旬から6月下旬ごろ、土星は5月下旬から8月下旬ごろです。木星の縞模様や土星の環などを、ぜひ天体望遠鏡で観察してみましょう。観察会に参加してみるのもオススメです。
また5月31日には地球と火星が最も近づき、この前後の期間が火星の見ごろとなります。地球と火星の最接近はおよそ2年2か月ごとに起こる現象で、火星の軌道がややつぶれた楕円であるため接近ごとに距離が大きく異なるのですが、今回の最接近距離は約7500万kmと「中程度の最接近」です。印象的な赤い色合いを確かめてみましょう。
さらに、今年の火星は「さそり座」の赤い1等星アンタレスの近くを動いています。アンタレスという名前は「火星に対抗するもの」という言葉に由来しますが、まさに対抗している光景が見られるわけですね。赤さや明るさを比べてみてください。
このほか、惑星同士の接近や、惑星と月の共演なども時々起こります。「おうし座」の1等星アルデバランが月に隠されるという現象もあります。ひょっとすると明るい新彗星が発見されるかもしれません。今年も空を見上げて、星や宇宙を大いに楽しみましょう。
金星と土星が大接近
未明から明け方の南東の空には、金星・火星・木星・土星と明るい惑星がそろって見えています。このうち金星と土星は、中旬ごろまで接近して見えています。ぜひ早起きして観察してみましょう。
かなり低いところにありますが、金星はとても明るいので建物などにさえぎられなければ簡単に見つけられます。南東の方向の見晴らしが良いところでまず金星を見つければ、そのそばで控えめに光っているのが土星です。近くには「さそり座」のアンタレスもあり、3つの星の色や明るさの違いが楽しめます。また、7日には細い月も並び、4天体が集合します。肉眼や双眼鏡での観察はもちろんのこと、地上風景を入れた写真撮影にも挑戦してみてください。
金星と土星が最接近する9日には、100倍程度の天体望遠鏡の狭い視野に収まってしまうほどの間隔まで近づきます。一般に、天体が低空にあるときには地上光や大気の揺らぎの影響を受けやすいため望遠鏡での観察には適さないのですが、これほどの大接近となれば「適さないことを承知のうえで観察」してみたくなるものです。お持ちの方はぜひ望遠鏡を向けて、少し太った半月状の金星と環のある土星の姿を一緒に眺めましょう。
月と惑星の接近
7日は細い月と金星、土星が接近しますが、別の日の月と惑星の接近もご案内しておきましょう。いずれも深夜から明け方にかけての現象です。
まず12月31日から1月1日にかけて、月と木星が接近します。2016年の星見初めにピッタリですので、ぜひ空を見上げてみてください。
次は1月4日の未明で、下弦過ぎの月と火星が大接近して見えます。近くの「おとめ座」のスピカも合わせた3天体の集合が楽しめます。
その後、7日の月・金星・土星の接近以降は月が夕方から宵空に移るので、当分の間は接近は起こりません。そして27日から28日に、今月2回目となる月と木星の接近が見られます。
月と惑星の接近現象は肉眼でもよくわかり、町明かりがあるような場所からでも簡単に見ることができます。深夜から明け方なので気軽に楽しめるとは少し言いがたいですが、起きていることがあれば忘れずにご覧ください。
カタリナ彗星
もう一つ、やや上級向けになりますが彗星の話題もご紹介しましょう。2013年に発見されたカタリナ彗星(C/2013 US10)が今月、地球に近づいて明るくなると期待されています。見える時間帯は深夜から明け方にかけてで、北東方向の星座の中を移動していきます。
明るくなるとはいえ6等級前後と予想されており、観察には双眼鏡や天体望遠鏡が必要です。また、彗星はぼんやりと広がって淡く見えるので、点として見える6等級の恒星よりも見えにくくなります。町明かりや月明かりも大きく影響するので、なるべく暗い空の下で探してみましょう。
1日ごろには「うしかい座」の1等星アルクトゥールスのすぐそばにあります。月明かりの影響がやや大きいのですが位置はわかりやすく、彗星を見つけるチャンスです。また15日ごろには「北斗七星」の柄の先端にある星の近くに来て、やはり彗星の位置の見当がつけやすくなります。未明には月が沈んで見やすくなるので、じっくり探してみましょう。
ページ上部の「星空写真」でご紹介したように、天体写真では彗星の特徴である尾の複雑な構造を見ることができます。尾の長さや形状、濃さなどは日ごとに変化するので目が離せません。自力で「淡い天体をがんばって探してみる」ことを楽しんでみるとともに、インターネットなどで公開される美しい画像も併せて鑑賞してみてはいかがでしょうか。
今月の星座おうし座開く
『おうし座』
今月の星座では「おうし座」をご紹介しましょう。
1月中旬の夜9時ごろ、「おうし座」は南の空の高いところ、頭の真上近くに見えています。目印となるのは赤っぽい色の1等星アルデバランで、ちょうど牛の右目にあたる位置で輝いています。
アルデバランの周辺に広がるV字型の星の配列が牛の顔で、そこから東(図では左)には長く伸びた2本の角も見つかります。足や体の後ろ半分はあまり目立たないので、立派な目や角に注目しましょう。
ヒヤデス星団
牛の顔の位置に集まった星々は、偶然同じ方向に見えているのではなく、実際の宇宙空間でも近くに集まっています。こうした星の集まりを「星団」と呼び、この付近の集まりには「ヒヤデス星団」という名前がつけられています。ただし、アルデバラン(距離約67光年)は星団の星々(距離約150光年)よりずっと手前にあり、ヒヤデス星団には属していません。
肉眼や双眼鏡で、星が集まっている様子を眺めてみましょう。
ところで、ヒヤデス星団中の「アイン」という4等星には、その星の周りを回る惑星が見つかっています。2015年、この惑星に、日本のグループから提案された「アマテル(Amateru)」という名前が付けられました。アマテルは暗すぎて見えませんがアインのほうは双眼鏡があれば町中からでも簡単に見つかります。ヒヤデス星団を眺めるときには、はるか彼方の惑星(ひょっとしたらそこに存在するかもしれない生命)にも思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。
プレアデス星団、すばる
牛の肩の位置には、青白い星々が集まった星団があります。清少納言が『枕草子』で「星はすばる……」と記した「すばる」は、夏の「織り姫星、彦星」などと並び日本で最もよく知られた天体の名前でしょう。ハワイの「すばる望遠鏡」や楽曲のタイトル、文学作品の登場人物、自動車のブランドなどにも「すばる」という名前が使われています。
西洋名は「プレアデス」といいますが、これはギリシャ神話に登場する7人姉妹の名前で、英語では「セブン・シスターズ」とも呼ばれます。
空の条件が良ければ、肉眼でも6個ほどの星が見えます。双眼鏡ではさらに多くの星が見え、たいへん美しい眺めを楽しめるでしょう。キラキラとした輝きをぜひ堪能してください。
真夜中の星空開く
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は1月中旬の深夜1時ごろの星空です。2月中旬の23時ごろ、3月中旬の21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
冬の星座たちが西の空に移り、東には「しし座」「おとめ座」や「うしかい座」といった春の星座が登場しています。とくに「しし座」には木星がまぶしく輝いていて、存在感を見せ付けているかのようです。さらに夜が更けて火星がもう少し高く上れば、東西どちらの空も明るい星々でいっぱいになります。夜明けが近くなると金星も見えるようになるので、華やかさ競争は東のほうが優勢になりそうです。
北東の空の高いところには「北斗七星」が見えています。冬の間は地平線の近くにあってなかなか目にする機会のない北斗七星ですが、深夜にはかなり高く見やすくなっています。夜中に空を見上げることがあれば、忘れずに探してみましょう。
美しさに見とれて夜更かしをして、新年早々に体調を崩さないようお気をつけて、今年最初の深夜の星めぐりをお楽しみください。
天体観察用機材の選び方開く
天体撮影用カメラのポイント
天体写真のジャンルにはいろいろありますが、肉眼で見た景色に比較的近い表現の星座写真や星景写真(星のある風景の写真)は、一般的なデジタルカメラだけでも写すことが可能です。
レンズ交換式カメラ
星座写真や星景写真を撮影する時には、レンズの選択が重要です。交換レンズは、開放絞り値の小さな明るいものだと鮮明に写すことができますが、いわゆる標準ズームレンズでも撮影可能です。焦点距離をやや広角気味にすると、代表的な星座のオリオン座やしし座、さそり座などを、ほどよい大きさで画面に収めることができます。
また、暗い星空の撮影では、どうしてもシャッタースピードが長くなります。そのため、カメラを三脚に載せて、シャッターボタンを押すときにカメラに振動が伝わらないようリモコンやリモートコードなどを利用してシャッターを切ります。
星座写真、星景写真をより魅力的にするために、明るい星を大きく見せたくなることがあります。市販のソフトフィルターなどの拡散系フィルターでにじませると、明るい星ほど大きく写りますから、星座の形が分かりやすくなるだけでなく、画面を賑やかにすることができます。
コンパクトデジタルカメラ
コンパクトデジタルカメラの中でも近年話題になっているのが、超望遠ズームレンズを搭載した機種です。月面を画面いっぱいに撮影することができ、月のクレーターまではっきり写すことができるものがあります。
明るい月であれば、手ブレ補正の機能を使って手持ちの撮影でもある程度はきれいに写すことができますが、レンズ交換式カメラと同様に、三脚があると安心です。リモコンの代わりにセルフタイマー機能を使うのも良いでしょう。
デジタル一眼レフカメラやレンズなどの最新情報や使い方をご紹介しています。