一昔前と比べ、今はかなり楽にダイエットに成功できるようになりました。糖質制限の有効性が分かったからです。
私個人も、カロリー制限でダイエットに失敗したことは何度もありますが、糖質制限では一発で成功しました。ちなみに私は糖尿病ではなく、健常者(病気じゃない人)です。
「糖質制限」という新しい方法に加え、いくつかのポイントを押さえて行えば、ダイエットに失敗する確率は相当下がります。今回はそんなダイエットのやり方について、まとめてみたいと思います。
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〈目次〉
この先糖質制限は常識になっていく
糖質制限は今後私たちの食生活にとって常識になっていくと思われます。糖尿病患者にとっても、健常者にとっても、ダイエットを行う人にとっても、どの程度糖質を制限するかの差こそあれ、糖質制限を行うのは普通になるでしょう。糖質制限が無駄な脂肪を落としたり、糖尿病を改善したりするのに有効だという研究報告がどんどん増えてきているからです。
なぜ糖質で肥満や糖尿病になるのか
まず、炭水化物とは、糖質と食物繊維の合計で表されます。したがって一口に「炭水化物○○g」と書いてあるだけでは、炭水化物の内の何gが糖質で何gが食物繊維か分かりません。炭水化物から食物繊維を引いたのが、糖質です。
糖質を食べると体内でブドウ糖に分解され、血液と一緒に全身をめぐります。血液中のブドウ糖の濃度のことを「血糖値」といいます。
血糖値が上がると酸化ストレス(酸化反応によって引き起こされる有害な作用)が増加し、動脈硬化や血管内皮細胞障害などを引き起こします。そこで体はインスリンというホルモンをすい臓から分泌し、血糖値を下げます。インスリンは、血液中のブドウ糖を脂肪細胞に取り込み、それが中性脂肪に変換されて蓄積します。これが私たちの体についている"脂肪"です。
こうしてインスリンはブドウ糖を処理し、血糖値を下げるわけですが、同時に脂肪を蓄積するので、太ってしまうのですね。また、インスリンには脂肪の分解を抑制する働きもあるので、余計に太ります。これがインスリンが「脂肪ホルモン」と呼ばれるゆえんです。
糖質を食べすぎて高血糖になった状態からインスリンが働くと、今度は反動で血糖値が下がり過ぎてしまいます。すると眠気、だるさが出てイライラし、なんと空腹感も短い間隔で出やすくなります。しかも激しい空腹感です。それに耐えられずにまた食べてしまうため、どんどん太ってしまうのです。
高血糖になる食事を続けていると、すい臓がインスリンを出す力が弱まっていき、非常に血糖値が上がりやすい体質になってしまいます。このように生活習慣の悪さによってすい臓が弱って糖尿病になった場合を『2型糖尿病』といいます。これに対して、すい臓から全くインスリンが出なくなってしまった状態を『1型糖尿病』といいます。
糖尿病はさらなるたくさんの病気(網膜症、失明、腎症、起立性低血圧、尿失禁、動脈硬化、心臓病、脳卒中など)を誘発することが分かっています。また最近では、糖質はガンのリスクになるのではないかとも言われています。ガン細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことが分かっています。さらに、激しい血糖値の乱高下は脳細胞を多く殺し、認知機能を低下させ、アルツハイマー病などの認知症を引き起こすことが指摘されています。
こうして悪い生活習慣⇒肥満⇒糖尿病⇒多数の病気・・・というふうに、ドミノがバタバタ倒れるように病気になっていってしまうことを『メタボリックドミノ』といいます。そのドミノの入り口にいる悪い生活習慣の一つが、糖質の取りすぎによる『食後高血糖』なのです。
ちなみにたんぱく質や脂質では血糖値は上がりません。血糖値を上げるのは糖質だけです。
私たちは今、非常に特殊な食環境にいる
こう言うとまるで糖質がひたすら悪者のように聞こえるかもしれませんが、糖質は環境によっては人を大いに救ってきてくれた栄養素です。
数百万年の人類の歴史の中で、いつでもお腹いっぱい食べられるようになったのは、ほんの最近のことです。それまではずっと、人は食糧が足りず、飢餓で苦しみながら何とか生きてきました。そんなとき、エネルギー源である糖質がどれだけ貴重でありがたい存在だったか。
自由に糖質を摂取できず、そのうえ狩猟や農耕などでたくさん体を動かす生活。運動をすればブドウ糖が筋肉に取り込まれやすくなり、血糖値を下げられます。しかもその効果は12~72時間も持続するので、血糖値を正常に保つために運動はとても大切です。だから昔の人は、糖尿病になりにくかったのですね。
しかし現代になって、日本人を取り巻く環境はすっかり変わってしまいました。お米、パン、麺類、お好み焼きなどの粉もの、ペットボトルの清涼飲料水、インスタント食品、アイス、ケーキ、ケチャップやソースなどの調味料。糖質がふんだんに含まれた食品が周りに溢れています。やろうと思えば、「だって美味しいんだもん」という理由で、1日中、炭水化物と糖質系スイーツばかりお腹いっぱい食べて過ごす、なんていうこともできます。
しかも仕事はデスクワークが増え、運動をする機会は減る一方です。
その結果、インスリンを出し過ぎたすい臓は疲れ果て、壊れ、太らなくていいはずの人が太り、糖尿病にならなくていいはずの人が糖尿病になる。そんな時代になってしまいました。これは数百万年の人類史の中で、極めて特殊な環境です。私たちは生活を工夫することで、その特殊な環境に適応することが求められているのです。
ここ10年ほどで栄養学の常識が変わった
さらに、ここ10年ほどで栄養学の常識は大きく変わりました。順番に見てみましょう。
脂質
「健康のために油を控えよう」「コレステロールは悪の元凶」みたいなことがずっと言われてきましたが、最近になってそうではないことが分かりました。脂質を控えても血液中の脂質指数は改善しないし、コレステロールの摂取を控えても血液中のコレステロール値は下がらないのです。
そして2015年、アメリカ農務省(USDA)は自身が出している『食事摂取基準(Dietary Reference Intakes:DRIs)』を改訂。脂質とコレステロールの摂取制限をついに撤廃しました。これらを控えても心臓病や肥満の予防につながらないから、という理由です。
たんぱく質
以前はたんぱく質をとり過ぎると腎臓に負担がかかるのではないか、という話がありました。
しかし、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)たんぱく質3-1」(PDF)では、「たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした」となっています。
さらにアメリカ糖尿病学会(ADA)は、2013年に発表したガイドライン(Diabetes Care)で「糖尿病腎症患者に対するたんぱく質制限は意味がない」ということを述べています。
糖質
北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏は、糖質制限食に関するRCT(ランダム化比較試験)の結果を報告しました。
日本人の2型糖尿病患者を糖質制限グループ(カロリー制限無し)とカロリー制限グループに分けた結果、半年で、カロリー制限グループに比べ、糖質制限グループのHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー:これが高いほど血糖値が高い)とTG(トリグリセライド:中性脂肪)が有意に下がりました(英語全文(PDF)・日本語解説(閲覧には会員登録が必要))。
| グループ | HbA1c(血糖の指標) | TG(中性脂肪) |
|---|---|---|
| 糖質制限 | 7.6±0.4% ⇒ 7.0±0.7% | 141.7±76.2mg/dL ⇒ 83.5±40.6mg/dL |
| カロリー制限 | 7.7±0.6% ⇒ 7.5±1.0% | 155.2±86.4mg/dL ⇒ 148.4±90.7mg/dL |
医療研究ではエビデンス(科学的根拠)がどれだけあるかが重要なのですが、その科学的根拠の信頼度を表すのが「エビデンスレベル」で、今回の山田悟氏の研究はエビデンスレベル1(最も信頼度が高い)です。
他にも外国では糖質制限に関するエビデンスレベル1の研究報告が複数されており、もう間違いなくいいものだろうという結論になりました。だからアメリカ糖尿病学会(ADA)のガイドラインや、最も評価の高い世界五大医学雑誌の一つである『ランセット』で、2型糖尿病の治療食として糖質制限食が推奨されているのです。
糖質制限は当たり前の時代に
このように、環境の変化や栄養学の進化を考慮すると、今後の食生活では肥満や糖尿病予防のために糖質制限(血糖値が上がり過ぎないように糖質を控えめにする)を行うのが自然になっていくでしょう。健常者のダイエットにおいても、糖質制限で成功する人がどんどん出てきています。
糖質をどのぐらい減らすべきか
さて、問題は糖質を「どのぐらい」減らすかです。これに関しては糖質制限を推奨する医師の間でも意見が分かれています。その大きな理由は『ケトン体』です。
ケトン体とは、アセトン、アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸の3つの総称で、体のエネルギー源になる物質です。
脳はブドウ糖をエネルギーにしています。そのブドウ糖が不足すると、肝臓で作られたケトン体を利用するようになり、それによって血糖値を正常に保ちます。このケトン体は酸性なため、体内で増えると体全体が酸性に傾きます。この状態を『ケトアシドーシス』といいます。
ケトン体に慎重な意見と糖質制限のやり方
先ほどの山田悟氏は著書『糖質制限の真実』 でこう述べています。
人間の細胞は、ペーハー7.4前後でなければ生きていけません。6.9から7.0になってくると危険です。これがケトアシドーシスという状態で、命に関わるくらいの意識障害が起こってしまうことがあります。(同上 p.75)
(血中ケトン体濃度が)1000μmol/Lを超えてくると危険です。健常者はほとんどそこまでいきませんし、1000μmol/Lまでは筋肉のほうでも積極的にケトン体を利用しますが、それを超えると利用が増えていきません。すると後はどんどん溜まる一方になってしまい、ケトアシドーシスを引き起こすことになってしまいます。(同上 p.76)
アルツハイマー病に有益であり、かつダイエット効果が望めるからと、ケトン体を体の中でどんどん作るべきだというのはやや早計です。ケトン体が増えすぎることで、血管内皮細胞の機能が落ちてくるというデータがいくつもありますし、前述のようにケトアシドーシスという命に関わる危険につながる可能性もあります。(同上 p.81)
私たちが推奨するロカボの場合、ケトン体の扱いは保留にしています。ケトン体を出すような極端な糖質制限のリスクが示唆されている以上、まだ積極的にやるべきではないというのが私のスタンスです。(同上 pp.81-82)
というわけで、山田氏は以下のような『ロカボ食』を推奨しています。
・糖質を1食20~40gにする
・1日糖質量10gまでのスイーツをとる
・1日トータルの糖質摂取量を70~130gにする
現在の日本人は1食平均90~100g、1日トータル270~300gほどの糖質を食べているので、ロカボ食はその半分以下に抑えるということになります。
ケトン体を安全とする意見と糖質制限のやり方
一方で、ケトン体を安全とする意見もあります。
高雄病院理事長の江部康二氏は、自身のブログ『ドクター江部の糖尿病徒然日記』の中でこう述べています。
ケトン体が現在の基準値より高値でも、インスリン作用が保たれていれば、生理的な現象であり、安全なものです。・・・
・・・絶食療法中やケトン食実践中には、血中ケトン体は、3000~4000μM/Lくらいに上昇し、現行基準値の30~40倍の高値になりますが、それ自体は、各細胞において全く安全なものです。
例えば、生後4日目の新生児312名において、
一般食、糖質制限食にかかわらず、βヒドロキシ酪酸値の平均値は240.4μmol/L
同様に生後1ヶ月の新生児40名において、βヒドロキシ酪酸値の平均値は400μmol/Lです。
βヒドロキシ酪酸はケトン体の一種で、基準値は76mol/L以下です。さらに、胎児58検体のの胎盤のβヒドロキシ酪酸は平均1730mol/Lで、基準値の20倍以上です。つまり、胎児、新生児においては、ケトン体はごく普通に生理的に現行の基準値より高値なのです。胎児や新生児においては、こちらが本当の基準値と言えるでしょう。
このように、ケトン体は、危険どころか、胎児や新生児においては極めて重要なエネルギー源となっているのです。胎児や新生児において重要なエネルギー源となっているケトン体が、大人には危険という論理は成り立ちません。
今日は、インスリン作用が欠落している時の病理的ケトアシドーシス(糖尿病ケトアシドーシス)のお話しです。・・・
・・・血糖値が300~500mg/dl以上もあり、口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐・脱水・意識レベル低下、尿中ケトン体が強陽性などの症状・所見があれば、糖尿病性ケトアシドーシスと診断できます。もちろん血中ケトン体も高値であり、生理的食塩水の点滴・速効型インスリンの静注など緊急的治療が必要となります。
糖尿病ケトアシドーシスの時の総ケトン体値は、3000μM/dl以上(26~122が基準値)となります。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。強調しますが、前提にインスリン作用の欠乏があり、それが全ての出発点です。
つまり、インスリン作用の欠乏がなければ、糖尿病ケトアシドーシスは絶対に起こらないのです。・・・
・・・インスリン作用が確保されていて高血糖を伴わない血中・尿中ケトン体の上昇は、生理的範囲内の現象であり、人類700万年の歴史のなかで日常的に経験されてきたことなので安全です。
江部氏の説明をまとめると、
・健常者のケトアシドーシスに危険は無い。正常な生理学的状態である
・インスリン作用が欠乏して高血糖になると、その結果ケトン体も高値になる(糖尿病ケトアシドーシス)
・インスリン作用が欠乏した結果ケトン体が高値になっているのであって、別にケトン体が病気の原因じゃない
というわけで、江部氏は以下のような3種類の糖質制限食を推奨しています。
| スーパー糖質制限食 | 朝食、昼食、夕食ともに主食(米・パン・麺類など糖質を多く含む食品)を抜く。糖尿病や肥満、メタボリック症候群を速やかに解消したい人向け |
| スタンダード糖質制限食 | 朝食と夕食は主食を抜き、昼食のみ主食をとる。糖尿病や肥満の解消を目指したいが、昼食に糖質制限食を行うのが難しい人向け |
| プチ糖質制限食 | 夕食だけ主食を抜く。ダイエット目的の場合や、嗜好的にどうしても炭水化物が大好きでやめられない人向け |
※経口血糖降下剤内服やインスリン注射をしている人は低血糖発作を起こす可能性があるため、そういう人は必ず医師と相談し、出来れば入院して糖質制限食を行う。
※腎機能が低下している人には糖質制限食は適さない。
また、宗田マタニティクリニック院長の宗田哲男氏は、著書『ケトン体が人類を救う』の中で、ケトン体は胎児や新生児の重要なエネルギー源であること、また妊婦でも糖質制限食で血糖コントロールがよりスムーズにいき、救われた人が多数いることを報告しています。
その他の糖質制限のやり方
他にも糖質制限食を推奨している人たちがいますので、いくつかご紹介します。
ケトジェニック・ダイエット
医師の斎藤糧三氏が提唱する糖質制限のやり方。
・1日2食か3食、好きな方を選ぶ
・毎食、肉を食べる。お勧めは牛肉の赤身肉。特にお勧めは牧草で育てられた牧草牛。たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く含むため
・赤身肉の摂取量は、1日300~500gが目安。赤身肉100g中およそ20gのたんぱく質が含まれる。最低でも体重1kg当たりたんぱく質1gをとるように調整する
・魚介類・豆類・牛乳・乳製品の摂取量をなるべく抑え、その分だけ肉類を食べる
・野菜は1日350g以上食べる
(詳細は『腹いっぱい肉を食べて1週間5㎏減! ケトジェニック・ダイエット』)
MEC食
こくらクリニック院長の渡辺信幸氏が提唱するやり方。MECとは、肉(Meat)・卵(Egg)・チーズ(Cheese)の3つの頭文字。
・肉・卵・チーズを食事の中心にする
・1日の目安量は、肉200g・卵3個・チーズ120g
・一口30回噛んで食べる。唾液が大量に出て、それが満腹中枢を刺激し、少量で満足できるようになるため
・それでもお腹が空いたら、量を増やしてもいい。ごはんなどが食べたいときは、肉・卵・チーズのあとに量を注意して食べること
(詳細は『肉食やせ ! ―肉、卵、チーズをたっぷり食べるMEC食レシピ111』)
糖質は自己責任で多めに制限、不安ならゆるめに
私は「ケトン体は安全」という意見を採用し、糖質はほぼとっていません(といっても1食で5g~15gぐらいはとっていますが)。江部氏や宗田氏が述べているように、胎児や新生児が高いケトン体濃度で平気で、それどころかケトン体を大切な栄養源にしているのに、成人は危ない、という話に違和感を感じるからです。
しかし、ケトン体に関する研究は今後また進んでいくでしょうから、その結果を待つというのもいいかもしれません。
というわけで、自己責任でいっちょやってみようかなという人は糖質を多めに制限し、不安な人や「炭水化物が好きすぎて無理!」という人は、ロカボやプチ糖質制限食からゆるく始めてみてはいかがでしょうか。
糖質制限ダイエットのメリット
なぜ糖質制限ダイエットは今までのダイエットより成功しやすいのでしょうか。私が糖質制限をやっていて感じたメリットは、主に4点あります。
ちなみに私は糖尿病になったことはありません。健康診断でも人間ドックでも血糖値に異常があると言われたことはありません。健常者です。ここで述べるのは、そんな健常者である私が糖質制限を行って感じたメリットについてです。
眠くならない
糖質を普通にとっていたときは、食べた後必ずといっていいほど眠くなり、半分気絶しながら仕事をしている時間があったのですが、今は食後すぐに集中して仕事ができます。これは毎日積み重なるとかなりデカい差になります。
疲れにくい
以前は夜になるともう疲れて集中力も落ちてしまっていたのですが、今は寝る直前まで体があまり疲れず、集中力ももちます。ずいぶんタフになりました。また、体が疲れにくいので気持ちも明るくなり、いろんなことにチャレンジする意欲が湧くようになりました。
お腹が空きにくい
これは非常に重要なメリットです。今までのカロリーを制限するダイエットでは、どうしてもある程度空腹を我慢しないといけませんでした。かろうじてスリムになれたとしても、今度はそれを維持しなければなりません。そうしていつか挫折し、リバウンドしてしまうのです。この「空腹の苦痛」こそが、私たちのダイエットを失敗に追いやる最凶最悪の敵だったのです。
しかし糖質制限ではその「空腹の苦痛」がありません。あの最凶最悪の敵がいないのです。お腹いっぱい食べられる上に、次にお腹が空くまでの間隔が長いのです。しかもやっとお腹が空いてきたときも、感じるのは穏やかな空腹感です。そしてまたすぐお腹いっぱい食べられます。そんな「空腹の苦痛」と無縁な生活をずっと続けることができます。だから成功しやすいのですね。
空腹感が生じる仕組みは、実はよく分かっていません。血糖値や胃壁の弛緩などが関係しているのではないかという指摘はありますが、ハッキリした結論は出ていません。
しかし、糖質制限を行うと飢餓感がとても穏やかになることは、自分の経験からも、他の人の経験談からも明らかです。となると、どうやら血糖値の上下の激しさが空腹感に影響を与えているようです。血糖値の上下が穏やか(糖質をあまりとらない)なら空腹感は緩くなり、血糖値が乱高下する(糖質をたくさんとる)と空腹感が激しくなるみたいですね。
脂肪は落ちるが筋肉は落ちにくい
私(男性)はデスクワークの仕事をやっています。運動はちょこっと歩くことと、週1~2回のジムぐらいです。糖質制限を始めるまでは体脂肪が多く、なかなか痩せることができませんでした。意志が弱く、カロリー制限ダイエットでは空腹に耐えられず、何度も失敗しました。
しかし糖質制限を始めてから半年で体脂肪率が24.1%⇒17.3%に減りました。しかも糖質制限は糖質をとらない代わりにたんぱく質をたくさんとるので、ジムの効果も合わさって筋肉量は増え、無駄な脂肪が削ぎ落とされた引き締まった体になりました。
ダイエットはただ痩せればいいわけではありません。ガリガリになって異性から「うわっ・・・」とドン引きされるような体になりたいわけではなく、程よく筋肉をつけ、スリムで引き締まった美しい体になりたいわけですから、そういう意味でもたんぱく質を多めにとる糖質制限はダイエットに向いていると感じました。
糖質制限ダイエットの注意点
糖質制限ダイエットは成功しやすいですが、それでもいくつか注意するべき点があります。
疾病のある人は主治医に相談を
腎臓病や血栓症など、何らかの疾病をお持ちの人、あるいは血糖降下剤やインスリン注射など、何らかの治療を行っている最中の人は、必ず主治医に相談してから実践してください。
ただ残念ながら、現在はまだ糖質制限についてあまり知識のない医師も少なくないようです。病院のHPなどで医師に糖質制限の知識があるかどうかを確認してから相談するといいかもしれません。
無限に食べていいわけではない
糖質制限ダイエットでは基本的にカロリー制限を行いませんが、それは「無限大にカロリーをとっていい」という意味ではありません。自然にお腹いっぱいになるところまで食べても体脂肪が落ちていくので、特に制限する必要がない、という意味です。
ですから、お腹いっぱいになっているにも関わらず、そこからさらに無理して食べるとか、そういう不自然なことをやっていればさすがに太ります。糖質に比べるとたんぱく質や脂質は太りにくいのですが、別に全く太らないわけではありません。あくまで「お腹が空いたら食べ、そうでなければ無理して食べない」というのが基本になると思います。
どの程度食べるかは自分で微調整していくしかない
人によって、どの程度で満腹を感じるかは違います。山田悟氏は「40~50人に一人くらい、満腹中枢がうまく働かずに太る人がいる。その場合はロカボとカロリー制限の併用が必要になる」と述べています。そういうケースがあることや、その他体質や生活、運動量の違いなども考えると、自分がダイエットをするためにどれだけ食べていいかは、自分で少しずつ見極めていくしかないでしょう。
私も最初から順調にスリムになっていったわけではありません。最初は1日3食、肉や魚、野菜をガッツリ食べ、さらに間食としてチーズやクルミをバクバク食べていました。お腹は全く空いていなかったのですが、「糖質制限してるから大丈夫なのかな~」と何となく食べまくっていたのです(クルミにはそこそこ糖質が含まれているのですが、当時は知りませんでした)。そうしたら、さすがに痩せませんでした。
「さすがにこれは無いな」と気付いた私は、まず間食をある程度控えるようにしました。1日にチーズ90gぐらいでしょうか。さらに、昼食を食べなくなりました。朝ガッツリ食べると、昼食の時間にはまだお腹が空いていないのです。というわけで、「朝・夕の1日2食、たまに間食を食べる」という食生活に切り替えました。そうしてから、徐々に体脂肪率が落ちていったのです。
この生活は、糖質制限だからこそ簡単に実現できたのだと思います。糖質制限だとお腹が空きにくいため、1日2食でも全く平気です。というか、その方が自然です。1日3食だとお腹が空いていないうちに食べなければならないので、不自然な上に時間がもったいないです。
こんな感じで、痩せられるように様子を見ながら微調整していくといいと思います。
どうしても食べたいものはルールを決めて食べる
「これだけはどうしても好きだから食べたい!」というものがある人もいると思います。私はお米が大好きなので、最初は糖質制限に成功する自信がありませんでした。「米の無い生活なんてなぁ・・・」と。
でも、いざ糖質制限ダイエットを始めてみると、米に対する執着心が意外と無くなっていったんですね。美味しい肉や魚ならいくらでも食べられるので、肉や魚に夢中になっているうちに米への気持ちがほとんど無くなってしまったのです。
というわけで、糖質制限をやってみると、特定の食べ物への執着心って意外なほど無くなってしまうので、心配している人もまずはやってみてほしいと思います。
しかし、それでも執着が消えないという場合は、無理して諦める必要はないと思います。例えばラーメンがどうしても食べたい人は、1週間に1度は好きなラーメンを食べていいことにするとか、そういう風に自分が痩せていける範囲でルールを決めて食べればいいのです。たった一食糖質を多くとったからといって、今までの努力が全部台無しになって肥満になる、なんてことは起こりません。
糖質を最後の方に食べる
もし糖質を食べる場合は、糖質以外のものを先に食べ、糖質は最後に食べるようにしましょう。そうすると血糖値の変化が穏やかになることが分かっています。
糖質の多い食品・少ない食品を把握する
せっかく糖質制限ダイエットをやっていても、自分の勘違いで糖質の多いものをぱくぱく食べてしまっていたら台無しです。「自分は炭水化物をとらないようにしてるから大丈夫です」と言ってる人が、よく聞いてみたら実は果物を山盛り食べていた、というような話も聞きます。果物は果糖という糖質がたっぷりです。
というわけで、ここでは食品群ごとに、糖質量や特徴についてざっとまとめたいと思います。成分値は文部科学省の『日本食品標準成分表2010』を参考にしています。
ごはん・パン・麺類
糖質が多く、基本的にはNG。例えば白米1膳(150g)は糖質が55.2gもあります
例外的にふすまパンやブランパンは糖質が少ないパンなので、食べやすいですね。
肉・魚介・卵・乳・大豆製品
全般的に糖質が少ないうえ、たんぱく質が多い。糖質制限ダイエットの主戦力です。
ただし缶詰やハンバーグ、魚の練り物(魚肉ソーセージ、ちくわなど)などには糖質が多く入っている場合があるので注意。あと牛乳(糖質7.2g/150g)、低脂肪牛乳(8.3g/150g)、無調整豆乳(4.4g/150g)、調整豆乳(6.8g/150g)にも意外と入ってます。無調整の方が糖質が少ないです。豆腐は絹ごし豆腐(6.8g・たんぱく質19.6g/400g)より木綿豆腐(4.8g・たんぱく質26.4g/400g)の方が糖質が少なく、たんぱく質が多いです。
野菜・きのこ・海藻
ビタミン・ミネラル・食物繊維をとるために積極的にとるべし。ただし全ての糖質が低いわけではありません。
・大根 糖質2.9g/135g
・たけのこ 2.9g/135g
・そらまめ 3.3g/25g
・れんこん 3.4g/25g
・トマト 7.9g/1個220g
・にんじん 8.1g/1本130g
・白菜 9.2g/520g
・かぼちゃ 10.3g/60g
・たまねぎ 13.5g/1個200g
・ごぼう 18.8g/1本215g
などは糖質が多いので注意が必要です。
いも
全般的に糖質が多いので食べにくいです。
果物
全般的に果糖がたくさん含まれているので基本的にはNG。食べるときは少量にしましょう。
例外的にアボカド(糖質0.9g/1/2個145g)は少ないので食べやすいです。
ナッツ
ナッツはビタミン・ミネラルが豊富なのは良いのですが、意外と糖質が多いので注意です。
・くるみ(炒り) 糖質4g/100g
・マカダミアナッツ(炒り味付け) 6g/100g
・アーモンド(乾燥) 10g/100g
・バターピーナッツ 11g/100g
・カシューナッツ(フライ味付け) 20g/100g
何となくパクパク食べてると、いつの間にか糖質の取り過ぎになっていた、なんてことも・・・。
調味料
意外と盲点なのがこの調味料。砂糖(糖質14.9g/15g)やはちみつ(16.7g/21g)がNGなのは分かりやすいのですが、本みりん(7.8g/18g)、ウスターソース(4.7g/18g)、甘みそ(5.8g/18g)、ケチャップ(3.8g/15g)、各種ドレッシングなどにも注意です。
ドリンク
ジュースはもちろん、スポーツドリンクにも種類によっては糖質がたくさん入っているので、裏の成分表でよく確認してください。
酒
焼酎、ウィスキー、ウォッカ、ブランデー、ジンなどの蒸留酒は糖質がないのでOKです。ビール(糖質15.5g/中ジョッキ1杯500g)や日本酒(8.1g/1杯180g)は糖質が多いです。特にビールはゴクゴク飲めちゃうので、太ります。糖質オフのものを利用したほうがいいですね。
さらなるダイエット成功のための工夫
糖質制限に、ちょっとした運動や生活、考え方の工夫をすれば、さらにダイエットに成功する確率は高まります。
水を細めに飲む
水分不足は空腹を招いたり、新陳代謝が滞って脂肪の燃焼効率が下がるといわれています。喉が渇いたときは、すでに脱水が始まっている状態なので、渇きを感じる前に水分をとることが重要です。水はちょくちょく飲むようにしましょう。
どれぐらい飲めばいいかは、どの程度汗をかいたのかなどによって大きく変わります。喉が渇かない状態を維持していけばOKでしょう。ちなみに厚生労働省の「健康のため水を飲もう」推進運動では、「目覚めと1杯と寝る前の1杯の"あと2杯"を飲みましょう」といっています。
水以外の飲み物で水分補給をしようとする場合、利尿作用に注意してください。コーヒーなど利尿作用の強い飲み物は、自分が思っているより水分不足になりやすいです。
早歩きで歩く
ちょっと運動不足かなと思う人は、歩くときに早歩きにすると手軽に運動強度が上がります。足の筋肉もつくし、時間の節約にもなるのでお勧めです。
ダイエットを妨げる思考・行動を改善する
以下のような思考・行動の改善が、ダイエットに役立つこともあります。
・「本当は本気出せばいつでも痩せられるんだ」と思っている
⇒ スリムになりたいという気持ちがあるなら"今"始めよう
・自分より太っている人を見つけては「自分はまだ大丈夫」と慰める
⇒ 他人が自分を見たとき、自分が太っているかどうかを決めるのは他人
・太っている友人ばかり作っている
⇒ 綺麗な人、かっこいい人とも付き合うようにする
・ダイエットが少しでも計画通りにいかないと一気にやる気を無くす
⇒ 社会で生きている以上必ずどこかで妨害は入るし、時には食べたいものを食べてしまう時もある。完璧主義はやめ、7~8割でやっていこうというバランス感覚を持つ
・手作りやちゃんとした料理にこだわり過ぎ、その結果面倒臭くなる
⇒ 時間がなかったり面倒だったら、スーパーやコンビニで適当に済ませてもいいんだ、という気楽な気持ちで臨む
・暇な時間が多い
⇒ 暇つぶしに無駄に食べてしまうので、趣味を作ったりして暇な時間をできるだけ無くす
・お金を食品ばかりに使ってしまう
⇒ 自分が綺麗になったり、かっこよくなったりするためにもお金を使う
・無駄に食べすぎた分を「運動で取り戻せばいいや」と思っている
⇒ 運動は重要ではあるが、思ったより痩せない。きちんと食事管理をすることが必須
・激しい運動をしすぎてバテてしまい、やる気を失う
⇒ 運動は軽めの継続しやすいものがベスト。早歩きだけでも十分
・他人に勧められたり流されたりして食べてしまう
⇒ 断れないなら他の部分(それ以外の食事や運動)で微調整する
・「自分は大して食べてないのに太る。みんないっぱい食べて太らないなんてズルい!」と思っている
⇒ 本当は糖質をとり過ぎていたり、食べ過ぎていたり、何か問題がある。一度食生活の見直しを
・「水を飲むだけで太る」「空気を吸うだけで太る」などと思っている
⇒ 同上
ダイエットが楽に成功できる時代
以上、糖質制限+αのお話でした。
先にも述べましたが、カロリー制限しか無いと思われていた時代に比べると、今は糖質制限でダイエットがだいぶ楽になりました。欲をいえばもう少し早く出会いたかったですが・・・。
まだ糖質制限ダイエットをやったことがなくて興味のある方は、是非一度やってみてください。糖質を極端に制限するのが嫌なら、ちょっと減らすだけでもいいのです。自分に合ったやり方で血糖値コントロールをしてみてください。ダイエットは楽にできるし、体調も良くなるし、気持ちも明るくなりますよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。