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株式、FXのまとめ解説

株式投資、FXや節税などのお役立ち情報をまとめたり解説したりするブログ。初心者向けから幅広く。

ドル高の問題点とIMFラガルドの警告。新興国の借金の重みが増しています。




ドル高は日本にとってはポジティブな要素が多い

ドル高は円安とセットで発生しやすいため、日本にとってはポジティブに語られることが多いと思います。円安ドル高によって、円貨建ての資産の価値は減るわけですが、日本の生産コストが下がることによるメリットの方がトータルでは大きい、との見方が一般的です。

また、世界最大の市場である米国で、日本製品が競争力を保ちやすくなる効果もあります。いくら生産の海外移転が進んだところで、日本からの一定の部品輸出などはまだまだ大きなシェアを占めています。

 

ドル高で苦しむ国

しかし、世界では日本のようにドル高を好感できる国ばかりではありません。

日本が上記のようなメリットを享受できるのは、自国内で資金を調達できるからです。自国内に資本の蓄積が乏しく、海外で資金を調達でせざる得ない国は、ドルでの借金を抱えています。

ドル高(自国通貨安)で借金の重みが増すことで、その国自体や当該国の企業が債務不履行に陥るというのは、新興国の歴史の中では頻繁に起きていることです。

 

IMFラガルドの警告


IMF のラガルド専務理事は先週パリで、次のように警告しました。

「米国の金融引締めがユーロ圏や日本の追加緩和と同時に進むならば、さらなるドル高となる可能性がある」

「この場合新興国は、ドルエクスポージャーをとっている企業を中心としたセクターが、さらに不安定となる恐れがある」


また、フランスの経済学者であるジャン・ティロール氏は以下のように述べています。

「ドル高となれば、為替のボラティリティが高まる可能性もある。そうしたボラティリティは、先進国の間の金融政策の相違だけではなく、今後の見通しや政策対応に対する全体的な不透明感によって生じる可能性がある」

 

上記発言は、米国のみが金融緩和から脱却したことで、ドル高が進み、新興国(及びその企業)が苦しむこと(もしくはそれを契機にした金融不安が起きること)を警戒しているように聞こえます。

 

金融緩和を続ける国にも悩み

米国と反対に金融緩和を続ける主要先進国にも悩みはあります。日本もユーロ圏も自国内で資金調達が賄えるため、金融緩和による通貨安はトータルではプラスに働きます(だからこそ、金融緩和を継続しているわけですが)。

 

しかし、度重なる金融緩和でその効果が徐々に減退しているのではないかとの見方が(株式市場や為替市場などの)金融市場では支配的になってきました。2015年末に、日銀とECB(欧州中央銀行)が相次いで中途半端な金融政策を表明して市場を失望させたことで、中央銀行の政策余地自体が疑われていることもあります。

 

最後にまた要人の発言を

ブンデスバンクのワイトマン総裁は先週火曜日にパリで、「短期的には、金利低下は銀行の利益になる。彼らの負債は資産よりも償還期間が短く、再調達コストの方が金利より先に低下するからだ」

と述べています。これは、銀行が長期の資金を貸し出して金利収入を得ているのに対し、銀行の資金調達は短期資金であるため、金利低下するとまず資金調達コストが下がり、利益を得られるという意味です。

しかし警告として「だが低金利が続けば続くほど、受取利息収益が食われる」と述べています。

短期的には、銀行は資金調達コストの低回で利益を得るが、長期間の金利低下は彼らの利益の源泉である金利収入を減少させるってことですね。

 

こうしたことも、発展途上国に資金提供している欧米金融機関の体力を奪うことで、新興国危機が懸念される要因になっています。