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2016-01-19

「世の中に 不倫なるもの なかりけり 愛も夫婦も 多様なるゆえ」

| 「世の中に 不倫なるもの なかりけり 愛も夫婦も 多様なるゆえ」を含むブックマーク 「世の中に 不倫なるもの なかりけり 愛も夫婦も 多様なるゆえ」のブックマークコメント

小田嶋隆さんのコラムから。

ゲスの極みについて考える http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/011400027/ #日経ビジネスオンライン

不倫暴露記事一般読者向けの記事として公開して商売に利用することを正義言論として認める理屈は、この世界のどこにも存在しない。」

「ゲスの極みは記事そのものにある」

他人プライバシーを暴露するスキャンダル報道をいかにも正義告発であるかにように見せかけている」

などから、「あ、レギュラー連載していた『噂の真相』、小田嶋さんは実は大嫌いだったんだな」と…え、違うの??

まあ、そこも面白くはあるのだが、本題ではない。テーマはこのあたり。

外交渉はよろしくない行為だ。

 この意見にはほとんどの読者が賛成してくれるはずだ。

 不倫は良くない。

 おそらく、異論は無いはずだ。

なにより、不倫には被害者がいる。

 私の間食に被害者はいない。強いていえば被害者は、罪を犯した当人である私自身だけだ。ということは、私は、天に向かってブーメランを投げた者の末路として、自然落下を上回る速度で、自業自得の報いを、自らの健康を損なう宿命として引き受けているわけで、この時点で、私の罪と罰自己完結している。

 一方、不倫は明らかな被害者を外部に持っている。

 不倫は、不倫実行者の連れ合いにとって、残酷極まりない背信行為であり、不道徳仕打ちだ。

 とすれば、彼らは、少なくとも、結果として迷惑をかけることになる幾人かの当事者謝罪をしなければならない。場合によっては、何らかの形で賠償を果たす責任を負うことにもなるはずだ。

 が、それでもなお、不倫は少なくとも刑事上の犯罪ではない。

いや、どうかねえ。ここはもっとラディカルに考えたい。

なぜ? ほんと? と。

これは一度、複数婚(ポリガミー)とか複数恋愛ポリアモリー)を論じるときに既に語っている。

LGBTの次は「ポリアモリー」』とのこと。まあ「多様な愛の形」から考えるとそうなるわな… - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151206/p1

世の中には、多種多様な愛がある。

1人の男と1人の女の愛も

1人の男と1人の男の愛も

1人の女と1人の女の愛も

2人の男と1人の女の愛も

1人の男と2人の女の愛も

n人の男とn人の女の愛も・・・・・・・以下順列組み合わせ。あ、もちろん「トランスジェンダー」の方もいらっさる。

そして、そこに道徳上の優劣というものはあるだろうか。

伝統的価値観」や「宗教的正義」を所与のものとして考えるなら、そこで優劣、正と邪は生まれるだろう。それはいい。

しかし、そういうものをとっぱらって、フラットなものとして考えたときの優劣は…


ないだろうね。

みんなちがって、みんないい。

どれもみな、世界にひとつだけの花。

ちがう?

さらにいえば、日本国同性婚法律上成立しないが、近親間の結婚も成立しない。

それが”同様の構図で”当事者への社会的抑圧になっているのではないか、と鋭く批判(のかな?)した漫画「冬の海」が、昨年アフタヌーン掲載された。

f:id:gryphon:20151026101726j:imagef:id:gryphon:20151207164939j:image


繰り返しだが、「多様な愛の形」それぞれにいいも悪いもないと考えれば、同性間での愛や結婚も、近親間でのそれも、また実際の行為想像上のことを厳密に分離するとしたら、ネット上でよく議論になる、未成年との恋愛性愛も、既婚の性交渉と未婚の婚前交渉も……ぜーんぶ法哲学的にはフラットなもの、善も悪もない平等なものとなろう。既婚の男性or 女性が、その結婚相手と別の人を好きになる、関係を持つ…のも、善も悪も本来はそもそもない……


……のだが、ちょっと例外がある。

それは民法上の不法行為認定されるように、今現在は「結婚をすると、相互に貞節の義務を負う」のですね。

これは契約だから、契約上の相手に関してはそれを護る義務が出てきましょう。


しかしだ。

さらにもとから考えますと、この契約は、国家権力が介入して、「結婚という形式を取りたいのなら、そういう義務も含めた契約を結べ」と自由なる個人に強制している、のだよね?でしょ?

これが以前書いた「結婚とはなぜか、国家が『パッケージ契約』を結ばせる仕組みだ」という話なんであります。

過去の傑作記事自称)。

婚姻制度」は一種の”パッケージ契約”。それは可能か?個別契約は不可能か?そもそも「公」に定めるべきか? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150222/p3

掲載するね

(略)……即物的にいうなら(※結婚とは)

配偶者相続権(一)●税制社会保障における優遇(二)●病気療養時などにおける権利利益(三)●夫婦財産制(四)●パートナーシップ解消時の法的保護(五)●不法行為犯罪による死亡時の損害賠償請求権など(六)●刑事法上の権利利益(七)●性同一性障害特例法の非婚要件(八)●外国人パートナー在留資格帰化(九)●子を育てる権利(十)●その他家族法上の権利義務(十一)●住宅の確保(一)●勤務先からの手当支給,休暇取得など(二)●生命保険金の受取人指定など(三)●銀行取引など(四)●その他身近なサービス(五)

https://www.dropbox.com/s/smt6kosxwfs3xc0/SHIMIZU_LegalConstruction.pdf

契約を2者が結ぶ、ということにすぎない。そしてそれには国家の後ろ盾がつく、と。

逆にいうと、国家権力

「あなたとあなたが、好き同士で一緒になることを『国に認定』してもらいたいなら、両人は、上の契約を一括して結ばなきゃいけませんよ?」

となり、さらに

「同性同士」「近親の間」「一人と複数の異性、あるいは複数同士」では、この契約はなぜか結べない、と……

しかっしですな。たとえば

夫婦だからって自分が亡くなったら、配偶者財産相続してもらいたいとは思わないよ。その財産は前妻前夫の子供に…」なんて人もいるでしょう。

(略)

あと、結婚相互に貞操義務を民法上持つそうですけど「結婚はするが、貞操義務などを持ちたくない。なんでそんな義務がいるんだ」という人もいるそうで(笑)。そういうのは「オープン・マリッジ」といって、…(略)これだって「多種多様な家庭のあり方」のひとつっちゃひとつじゃないかね。

でさ、別姓の問題も含めて

上に挙げた「パッケージ契約」を、そもそもパッケージ契約で結ばなきゃいけない、という制度自体が、いわゆる「多様な生き方」を阻害してるんじゃないっすかね。

余談だが、この『結婚とはさまざまな規定の「パッケージ契約」を結ばされるということである』というアイデアは、はてなパブリックエネミーとして有名な大屋雄裕氏の言葉で知り、ひざをうったものでした。


だから小田嶋さんが仰る

不倫は、不倫実行者の連れ合いにとって、残酷極まりない背信行為であり、不道徳仕打ち

というのは、アプリオリ道徳律宗教的戒律の意味なのだろうか?

「現行の民法上は結婚をした際に貞操義務というパッケージ契約を結んでいるはずなので、その契約違反している」という意味なのだろうか?


後者であるなら、じゃあその民法規定こそがとんでもなく正義、公正に反するのではないか…とも言えましょう。


で、実際に、いわゆる「結婚」と、「シビルユニオン」の両建て制度があるフランスでは、シビルユニオンの二人が、あるいはどちらかが、別に新しい愛をはぐくんで、過去の愛は清算しようと思ったら、慰謝料とかなんとか要らないそうなんですよ。「新しく好きな人が出来た、わかれたい。」

これでおしまいらしい(オランド大統領の、そういう関係の報道でそう読んだ)。


それは正義に反しているか、というのはいろいろ意見がありましょうが、それが多様な愛や家族の形を抑圧するようなものにならなければ幸いだ。

……ということで、たまねぎの皮をむくように、

「アレは道徳に反しない。多様な愛の形があっていい」

といってむいていくと


「既に結婚している人が、別の人と恋愛関係になる」

だけを、「それは道徳に反する不正義です」とするロジックは、少なくとも当方は思いつかないですね。


同性間の恋愛や婚前交渉や婚前解任、未婚の母やポリアモリーなどが、道徳に反すると言えないように…。あ、いくつかは確かに「伝統的価値観」には反するでしょうかね。



以前、「未婚の母」について書きました

同性婚、未婚の母……辞書漫画から「世の中の変化」がわかる。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141127/p5

から、これを再紹介。

このシーンね。

f:id:gryphon:20141127115407j:image:w640



こんな記事も、過去に書いた。

未婚の母、非摘出子(婚外子)への意識が変わる…なら「鈴木先生」の”鈴木裁判”も過去のものになるか? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130904/p3

f:id:gryphon:20130904084539j:image

f:id:gryphon:20130904084537j:image


これらはぜんぶ「個人のライフスタイル」の問題でしょうな。

そんなふうに収斂されて、いくのかもしれない。


言葉としての「不倫関係」が、どこまで寿命を保つのか?

もし上のような論考が浸透していくなら、そもそも既婚者の別の恋愛関係を「不倫」と呼んでいいいのか、という話にもなろう。

そもそもそんなに古くから使われた言葉かな?昔は「不貞」「付議密通」……あ、昔も似たテイストか(笑)。別の言葉が必要かね、「アナザーラブ」とか(笑)??

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160119/p3