昨年6月、英国オックススフォードシャーのチャドリントン自宅近くの木で、首を吊って自殺を遂げた15歳の少女がいました。
彼女の母親によりますと、彼女は常日頃からひどい頭痛、疲労感、膀胱疾患を患っており、これは電磁波過敏症(electro-hypersensitivity ,EHS)によって引き起こされていたと言います。
そしてこうした事態は、彼女の通う学校に設置されたWi-Fiのせいだとしました。
2012年の11月に、彼女が兆候を見せはじめてから、家族は自宅からWi-Fiを排除しましたが、学校ではそういうわけにいかなかったのです。
母親は「彼女だけでなく、私の体調も悪くなっていました。調べてみたんですけれど、Wi-Fiがどれだけ身体に悪影響を与えるかわかりました。家からは排除しました」と話しています。
少女の体調は、学内の特定エリアで悪化。母親は何度も学校に直訴しましたが、Wi-Fiの悪影響と同じくらい、いい影響もあると言われて具体的対策は採られませんでした。
現在少女の両親は、子どもを自殺で亡くしてから、技術の進歩には反対するつもりは毛頭ないが、「敏感性を有する子どもには配慮するべきだ」として、教育機関からWi-Fiを排除する運動を展開。政府にEHSの研究を進めるよう要請しています。
少女の死の原因ですが、検死官によりますと、問題は少女がEHSに苦しんでいたという医療履歴などがまったくないので、証明は難しいだろうことです。
Wi-Fi、大丈夫なのか。
少女が患っていたEHSを”Wi-Fiアレルギー”などとする向きもありますが、医師によりますとそのような言葉はないそうです。
代わりに、”電磁場に起因する特発性環境不耐症( idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields [IEI-EMF] )”というものがあります。
「特発性」(idiopathic)とあります通り、現在のところは原因不明の疾病とされています。
原因として、電磁場(electromagnetic fields)というものができ、その特定のエリアにいる人はかかる可能性があるとされていますが、ロンドン大学キングスカレッジのジェームズ・ルービン博士は「電磁場と呼ばれるものなど実際にはない」と言います。
しかし、EMFの患者には疲労、疲労感、集中力不足、めまい、動悸、吐き気、消化器障害、皮膚の炎症、疼き、灼熱感などが出ることを世界保健機関が報告しています。これらが電磁場から発生していることはおそらく確かでしょう。
ルービン博士は言います。
これまで同種の症状に対する調査が、世界各国で50回以上行われてきており、人々は上に挙げたような症状を実際に体験していることがわかっています。
でも、重要なことは、そうした人々の状態認識が思い込みに依拠している可能性があることです。
「思い込み」=ノセボ効果とは
ルービン博士はノセボ効果ということばで表しています。
ノセボ効果とは、全く効果のない薬でも思い込みによって副作用が出てしまう効果のことです。
ちなみに、副作用でなく、思い込みで期待された効果が出ることをプラセボ効果といいます。
ノセボ効果は、「薬を飲めば、必ず副作用が出てしまう」、「副作用による健康被害が心配だ」などと心配しすぎるあまり、必要以上に薬の悪い作用が増強されてしまうことを指します。
これと同じで、電磁場が悪い悪いと思い込むことによって実際に体に異変をきたすのです。
少女の死は本当に痛ましいことです。
しかし、今のところ、正式な原因はわかっていない疾病の一つであるEHSやEMF。あまりにWi-Fiを責めすぎるのは技術の革新を遅らせてしまう、のかもしれませんね。
《参照》
- Schoolgirl found hanging from tree after suffering from ‘rare allergic reaction to WiFi’
- Experts Say ‘Wi-Fi Allergy’ Isn’t Real — But The Symptoms Can Be
- ノセボ効果(ノーシーボ効果)-役に立つ薬の情報専門薬学
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