くらむは、ね、
苦しくてたまらなかった。
色んな自分の劣りや至らなさや、
不器用さや愚かさが、あって、
それ自体がとても苦しかった。
そういう自分の弱さを抱え続ける事は、
簡単な事ではなかった。
みんなみたいになりたい、と、
願わない日はなかった。
強く、なりたかったし、
実際強くあろうとして、
分不相応な生き方をしてきた。
混乱している人をよく見る、
そう言うくらむだって、未だに、
それはほんと笑っちゃうくらいに、
混乱している。
なんだかんだ、言っても、結局のところ、
くらむはまだまだ苦しいんだって事は、
言っておきたい。
くらむは強くはない。
でも、最近とても思うよ。
過不足のない人生だ、って。
今まで起こった事、辛かった事、
消えない傷になった事、
これから起こるだろう苦しみ、
忘れられない幸せな記憶、あたたかい気持ち、
楽しかった事、嬉しくて流した涙、
もう起こらない奇跡、
その全部が、
くらむ自身であり、
そのどれもが、
あるべくしてある、という気がする。
過不足なくそのままの、
くらむはくらむという存在。
そんな気が、しています。
くらむは、今、
なんだか、しんとしてる。
はらっぱ、とか。
青い、くるぶし丈の草だけが、
一面に生えている丘で、
見渡す限りの地平線はすべて、
今この場所の延長でしかない、青。
地平線が切れた先の、空は、
雲ひとつなく、
また青。
太陽は見えなくて、でも採光はたしかにある。
青が見える程度に、あかるさを含んだ空気。
丘の上で立ち竦んでいるくらむは、
でも、立ち竦む以外にはどうしようもない。
例えば少し先まで歩いてみるだとか、
その場にしゃがんで手をつくだとか、
そんな選択肢さえなくて、
ただ、しんと、
くらむは立ち竦んでいるのです。
風もないから、青もそよがない。
裸足の裏、下敷きになったままの草。
冷たい土の感触も、皮膚に伝わったまま、
しかし一定。
朝も夜もなくて、
かといって昼とも言えないような、
ここは、
時間の所属から弾かれたせかい。
立ち竦んだくらむの、
呼吸の音だけが聞こえている。
血液だけが廻っていて、
瞼だけが上下する。
くらむは今、からっぽ。
からっぽを、でも、選んだわけじゃない。
選んだわけじゃあ、ないんだよ。
このしんとしたせかいを、
知らないで生きる人の方がきっと、多い。
その方が良い、とも思う。
ここは、辿り着く場所じゃない。
脳の全てが覚醒して、
訳もなく上げる叫び声を止められずに、
身体中がばらばらに動いてしまった後に、
気がついたら、
置き去りにされていた場所。
くらむは、今、瞬きごとに、
このしんとしたせかいと、覚醒とを、
行ったり来たりしている気がする。
それは制御出来るものではないけれど、
もし、委ねられたとしても、
どちらにいたいのかは、分からない。
分からないんだ。
でも、これもまた、
過不足ない、くらむ、なのだと、思うから、
だから、
今はただ、
瞬きを、
切り替えて混乱。
青から、
判別出来ない有象無象へ。
くらむ