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政府はこのほど、低所得のひとり親世帯を対象に支給している「児童扶養手当」について、第2子以降の支給額を2倍に増額する予算案を閣議決定した。その一方で、政策の中には「養育費確保の促進」という文言が盛り込まれていて、離婚後の養育費の支払いを徹底したいという国の意向が伺える。
日本における養育費の支払い実態はどのようなものなのか。そしてどうしたら、子どもたちの成長を支える養育費が適正に支払われるのだろうか。弁護士法人ALG&Associatesの片山雅也弁護士と関範子弁護士に伺った。
養育費とは、「子どもを監護・教育するために必要な費用」のことを指す(養育費相談支援センター)。民法では「離婚後の子の監護に関する事項」(766条)として規定。さらに平成15年には母子及び寡婦福祉法においても「養育費支払いの責務」が明記された。
一方で、その受給率は高いとは言えない。厚生労働省の「平成23年度全国母子世帯等調査」によれば、母子世帯のうち、「現在も養育費を受けている」と答えた世帯は19.7%。さらに「養育費を受けたことがない」と答えた人は59.1%にものぼっているのだ。
加えて、養育費の取り決めの状況にも課題があるといわざるを得ない。母子世帯の母では「取り決めをしている」人が37.7%。父子世帯の父では17.5%にとどまり、このうち「文書あり」の取り決めをしている人はそれぞれ70.7%(母)、60.3%(父)であった。取り決めをしていない理由としては、「相手に支払う意思や能力がないと思った」「相手と関わりたくない」が上位に入っている。
相手に支払う意思がない、そもそも支払う能力がなければ、養育費の受給は難しいのではないか……そんな疑問に対して、両氏は「養育費の支払いは、借金がかさんで破産したとしても逃れることができないほどの強い義務」と答えてくれた。家事事件を多く取り扱っている関弁護士によれば、「相手の給料が少なくても、ギャンブルが趣味だったとしても、少しでも支払ってもらえる道はあるので諦めないでほしい」とのことだ。
それでは、離婚を考えたとき、実際に支払ってもらうためにはどのような手続きが必要なのだろうか。これについては、支払いの内容についてお互いに合意ができた場合、合意の内容を「公正証書」にするという方法が有効だという。そして、合意内容を決めるために便利なのが、裁判官が養育費の目安として作成している養育費の算定表だ。東京家庭裁判所のホームページから参照することができる。
自分の収入、相手の収入、それに子どもの数をあてはめると、月々の支払額の目安がわかるようになっている。両氏によれば、具体的な事情によって金額が変わることもあるが、支払額に関して合意ができず、調停や裁判にもつれこんだとしても、おおかたはこの金額に落ち着くという。関弁護士は「『結局この金額を支払わなければならなくなる』と相手に説明すれば、公正証書を作りやすくなる」とアドバイスをくれた。
それでも支払額に関して合意ができず、公正証書がつくれない場合は、調停委員と裁判官が話し合いの場をつくり紛争の解決にあたる「調停」、そして「審判」や「裁判」に進むことになる。
公正証書を作らず、合意内容を記した文書を作成するだけではダメなのか。この点については「お互いに署名・押印をした文書でも合意は成立するが、"執行力"がない」とのこと。相手が養育費を支払わなくなった場合に、裁判所の手続きを経て相手の給料や資産を差し押さえて支払いをさせる「強制執行」ができなくなってしまうという。反対に、公正証書の作成、調停、審判、裁判のいずれかの手法をとれば、強制的に相手に支払いをさせることが可能なのだ。
しかしその際に重要なのが、相手の資産を把握しておくことだという。片山弁護士は「相手の金融機関口座がわかるようにしておいてほしい」と語った。資産の差し押さえをする際に、口座がある金融機関名と支店名が最低限必要となってくるからだ。さらに、給料を差し押さえるためには、勤務先も確認しておく必要がある。
ここまで、離婚を考えている人に向けた養育費の取り決めについてお伝えした。後編では、離婚後であっても養育費の支払いを要求できるのかについて、両弁護士に聞く。
取材協力: 弁護士法人ALG&Associates
50名を超える弁護士を擁する弁護士法人。一般民事・刑事、企業法務、交通事故、医療過誤と幅広い分野を取り扱い、それぞれの部門に専属の弁護士が配置されている。今回協力いただいたのは、同法人代表執行役員の片山雅也弁護士と、家事事件を数多く取り扱う関範子弁護士。
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