滝口信之 金子元希
2016年1月19日07時09分
「原告らの請求を棄却する」。判決が読み上げられる間、スラジュさんの日本人の妻(54)は遺影を手に、時折目をつむるなどして耳を傾けた。滝沢泉裁判長は最後に、「スラジュさんがこのようにお亡くなりになったのは大変お気の毒ですが、以上の通り判断しました」と語った。
判決後、東京都内で記者会見に臨んだ妻は「失望しました。残念です」と声を振り絞った。
スラジュさんは1988年に来日し、翌年から同居した。妻の影響を受けて絵を描くようになり、よく絵画や好きな音楽の話をしたという。2006年9月、スラジュさんは出入国管理法違反(旅券不携帯)容疑で逮捕され、収容された。婚姻届を出したが、在留特別許可は認められなかった。
10年3月の強制送還中にスラジュさんが急死。「二度と同じことが繰り返されないように」との思いで妻は裁判に取り組んできた。
高裁判決では、スラジュさんは前かがみの姿勢になる前に心停止や意識喪失の状態にあり、救護措置をしても死亡を回避できたとはいえない、と結論づけた。妻は「間に合う間に合わないではない。物のように扱われ、死んでいった」と話し、「無念」という言葉を繰り返した。(滝口信之)
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朝日新聞社会部
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