国民生活審議会


第2章 個別約款の適正化 III 冠婚葬祭互助会約款

第2章 個別約款の適正化


III 冠婚葬祭互助会約款

1 冠婚葬祭互助会の現状

冠婚葬祭互助会(以下「互助会」という。)は,会員から一定期間(通常5か年程度)毎月一定金額(2,000円から5,000円が中心)を徴収し,会員が婚礼や葬儀を必要とするようになった場合に,契約に定める役務等を提供することを業としている。

我が国においては,無尽講,頼母子講と呼ばれる相互扶助制度が存在してきたが,互助会もそうした相互扶助理念のもとに戦後の所得水準が低くかつ物資も乏しい時代に,冠婚,葬祭という不時の出費に備え加入者が月掛金を拠出し,衣裳や祭壇等を共同で購入し,利用することを目的として始まったものである。その後,営利企業として会社組織をもって互助会事業を行うものが各地に誕生し,現在では約380社を数えるに至っている。

全国の互助会契約口数残高は昭和55年9月末現在では約1,200万口となっており,一世帯当たり平均1.7口という統計値から推定すると加入世帯は約700万世帯,世帯別普及率は20%近くに達するものと見られる。

2 約款の規制

互助会は,昭和48年3月より「前払式特定取引業」として割賦販売法により業規制を受けることとなり,これを業として営むためには,通商産業大臣の許可が必要となった。これによりその約款が割賦販売法施行規則に定める基準に合致していることが許可要件の一つとなり,標準約款も作成された。

しかしながら,この標準約款が依然として相互扶助的な考え方を反映したものである一方,営利を目的とする互助会の誕生に伴い相互扶助意識を持たない加入者が増加してきたため,解約,施行役務内容等に関する消費者苦情の顕著な発生を見た。このような情勢の変化に対応し,昭和52年12月に,[1]クーリング・オフ制度の導入,[2]追加金(超過費用)徴収の明定,[3]解約制限条項の一定の緩和,[4]解約手数料の引き上げ,の4点を中心とした標準約款の改正が行われ昭和53年4月以降は各社とも新約款に準じた約款を使用している。

このほかに,[1]約款は原則としてパンフレットに記入し,加入を勧誘する段階で交付すること(重要部分は,加入者証に抜粋して記載すること),[2]公的機関と紛らわしい「都・道・府・県・市」等の名称を会社名から削除すること,等の行政指導も行われてきている。

3 消費者苦情発生の背景

このように法的規制,行政指導あるいは業界の自主的努カ等によって問題点は逐次改善されてきている。

しかし,「地域に密着した相互扶助団体」への加入という意識を持って互助会に加入する消費者は少なくなってきていることもあり,契約において提供が約束されている役務等を必要としない状況が生じた場合には,当然解約を申し出ることが多くなってきている。他方,約款は相互扶助団体的な考え方に基礎を置いたままになっており,解約は「転居により当社の役務提供を受けることが不可能になったとき,生活保護を受けることになったとき等真に止むを得ぬ事情によるとき」のみできると規定されている。加えて,契約の終期が明らかでないこともあり,現行約款に従えば消費者は意に沿わない契約にいつまでも(利用しなければ永遠に)拘束されることになる。こうした解約条項と消費者意識との乖離が解約に係る消費者苦情発生の原因の一つとなっている。

また,競争関係にある互助会や専業者(結婚式場,貸衣裳業,葬儀屋等)からの「会員買取行為」や強引な解約誘引が行われていることもこうした苦情発生の一因となっている。

更に,消費者が将来受くべき役務の内容についての規定は,明確さやわかりやすさに対する配慮が十分になされているとは言えないため,役務内容に関して,「契約内容と施行内容が違う」,「多額な超過費用を徴収された」とする苦情も発生している。

4 適正化の方向
(1) 解約に関する条項

現行約款には,制限的な解約条項が規定されているが,[1]割賦販売法施行規則においては,「購入者等からの契約の解除ができない旨の特約を記載してはならない」としていること,[2]継続契約においては,消費者からの解約申出は自由に行うことができるとする一般的原則があり,互助会契約はこうした継続契約の一つであること,を考慮すると,消費者は合理的な解約手数料を支払うことにより解約を自由に行うことができるという条項に改める必要がある。

なお,業界内外において過当な競争が存在している現状を考えると解約自由の原則を約款に規定することは,過度な業者間の競争を助長することとなり,結果的には必ずしも消費者の利益とはならないとも考えられるが,これについては,業界の自主的努力等によって解決すべきものであり,これをもって消費者が契約当事者として当然有すべき解約権を制限すべきものではないと考える。

また,解約手数料の額の多寡に関する苦情も多いが,これについては満期前と満期後の解約に差を設けることや,解約事由のいかんにより差を設けること等,消費者の意識に沿った合理的な額を各業者が設定する必要がある。

(2) 提供する役務の表示

契約内容に関する苦情は,[1]提供される役務の内容が不明確なこと,[2]表現方法・用語の不統一,等級品質の表示根拠の不明瞭さ,外務員のオーバートーク等により,消費者が過大な期待を抱きやすいこと,[3]契約してから施行するまでに長期間の時間的経過があり,その間の物価上昇についての経済的評価に消費者が疑問を持つこと,等によって消費者が契約時に期待する役務内容と契約上提供できる役務の範囲又は実際に提供された役務内容との間に乖離が生じていることに起因するものが多い。

互助会の提供する役務は,同一契約であっても,地域,慣習,宗派等の違いによって利用者個々人の受ける役務が異なることがあり,また,時間的な経過によって役務内容が変化する可能性もあるため,この内容を正確に表示することには一定の限界が存在していることも否定できない。しかしながら,提供する役務の表示はできる限り消費者にわかりやすく,かつ,誤解を与えないようにする必要があり,また,将来においても契約時に提供を約束したものと同等の役務が提供されることが保証される必要がある。

これについては,昭和55年7月の通商産業省指導に従って現在業界において適正化の努力が進められているところであるが,その他に,[1]提供する役務を金額で表示しているものがあるが,表示はできる限り具体的な物品等の形で行うこと,[2]展示会等を通じ,契約内容の主要部分については可能な限り事前に開示を行うこと,等についても努カが必要である。

(3) 外務員の資質の向上

外務員の資質向上のため,現在,業界では外務員研修会のほか,「葬祭士」,「婚礼士」等の資格制度を設けているが,今後もこれらの運営を進めるほか,外務員の登録制度についても早急にその実施が行われることが望ましい。

(4) クーリング・オフ制度及び書面交付の義務付け

現在,行政指導等によってほとんどの業者がクーリング・オフ制度や書面の交付を実施しているが,これらについても法的な義務とするよう割賦販売法の改正の際には配慮すべきである。

(5) 前受金保全措置

前受金の保全措置については,その保全内容を正確に消費者が理解するように情報提供する必要がある。

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