三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第317回 日本ほど農業を保護していない国はない(1/3)

現在、参議院で農協改革の審議が進んでいる。余程のことがない限り、当初案のまま進むだろう。結果、我が国は「亡国」へと大きな一歩を踏み出すことになる。
この一歩は、取り返しがつかない「一歩」なのだろうか。分からない。
 分からないが、とりあえず将来の日本国民に、「総てを理解し、警鐘を鳴らしていた国民が存在していた」という事実を知って欲しいのだ。筆者は「日本国」が大好きなので、亡国への道を突き進む状況にあっても、日本国を守るべく「言論」の世界で孤軍奮闘(とはいえ、意外に仲間は多いのだが)した日本国民がいたことを、将来世代に知って欲しいと考えるわけである。
 TPPという「亡国の固定化政策」を当初から推進していた宗像直子が、総理大臣秘書官に任命された。要するに、安倍政権とは「そういう政権」という話だ。
 政権、政治家、官僚、経済界、学界、そしてマスコミという「権力者」たちがこぞって亡国路線を突き進む中、唯一、農協だけが真っ当な「抵抗」を示している。

『2015年7月27日 日本経済新聞「JA全中など、TPPで政府に粘り強い交渉求める」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H1H_X20C15A7EE8000/
 全国農業協同組合中央会(JA全中)など農林水産業の関係5団体は27日、コメをはじめ農産物の重要5項目の保護を訴える緊急集会を都内で開いた。28日から環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加12カ国による閣僚会合が米ハワイで開かれるのを前に、政府に対して粘り強い交渉を求めた。』

先日、某講演会(大々的な講演会)で、講師である筆者のアテンドをされた方が、
「それでも、日本の農業は保護され過ぎだから。結局は、農協解体しかないですよ」
 と、仰り、ショックを受けた。その人物は日頃は「マスコミの中国贔屓は許されない!」などと気勢を上げている方なのだが、こと農業関係については見事にマスコミに「洗脳」されている。
 何しろ、我が国の農業ほど「保護されていない農業」は、主要先進国の中には存在しないというのが事実なのだ。

【農業に対する政府支出の国際比較】
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出典:情報ソース:「よくわかるTPP48のまちがい」(鈴木宣弘・木下順子:著「農丈協2011.12)のデータから抽出し作成

 図の通り、日本の農業の所得に対する「直接支払(税金)」の割合はわずか15.6%。主要国最低だ。
欧州の農家の所得に占める直接支払の割合は、軒並み90%を超えており、アメリカにしても26.4%。しかも、アメリカの穀物系は50%前後に達している。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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