

藤平信一です。
何事にも「始まり」があれば必ず「終わり」があります。
「始める」ときは前向きになりやすく、氣を出しやすい。「終える」ときは後ろ向きになりやすく、氣を引きやすい。「始める」より「終える」方が難しいものです。
特に、リーダーにおいて難しいのは「引き際の見極め」です。例えば、リーダーの役割から退くのは自らの引き際です。或いは、既存事業からの撤退は会社としての引き際です。
氣を引いていると正しい判断をすることが出来ませんから、退くときこそ、氣が出ていることが重要なのです。
藤平光一宗主は、これを戦地で会得しました。
進軍するときは氣を出しやすい。氣を出しているから、危険を察知して回避することが出来る。
撤退するときは氣を引きやすい。氣を引いているから、危険を察知出来ずに大きな被害が出る。
これを身をもって知った宗主は、退くときこそ氣を出すこと、「後ろに下がる」のではなく「後ろに進む」ことを徹底して、幾度となく危険な状況を回避出来たそうです。
心身統一合氣道の稽古では、宗主はこのように指導されました。
二人の人間が道場の壁に向いて横並びで立ち、そこから顔の向きとは反対方向(後方)に全力で走ります。
一人は氣を出して走ります。このとき、周囲のことを良く感じられる状態で走っていますので、安心して走ることが出来ます。
もう一人は氣を引いて走ります。すると、周囲のことが全く感じられない状態で走っていますので、不安で走れなくなります。
初めて体験する人は、氣の出し方で生じる違いに大変驚かれます。体験してみると「後ろに進む」という実感が得られます。
先の「Kiビジネストークセッション」でも、堀威夫様との対談で、「リーダーとしての引き際」に触れました。
堀様ご自身は、51歳でホリプロの社長を後進に譲られました。当時、芸能プロダクションは一代限りのビジネスと見られていて、ホリプロをパブリックカンパニーにすべく、堀の名字がつかない社長を誕生させることが目的だったそうです。
それでも51歳というご年齢は、一般的には第一線を退くには早く、なぜそれを出来たのかお尋ねしました。
「次の社長にはホリプロがやって来たことを守ってもらい、自分は新しいことをやろうと思ったのです」
退任後、堀様は社長時代には取れないリスクを積極的に取りながら、様々な事業を成功に導かれました。
なるほど、社長を退かれたのは「後ろに下がる」のではなく、「後ろに進んだ」わけで、だからこそのご決断だったのでしょう。
83歳となられた今も進み続けておられます。