【萬物相】病院での被ばく

【萬物相】病院での被ばく

 乳腺疾患を専門とする外科や放射線科の医師たちが驚くことがある。20-30代の女性会社員たちが毎年、乳房X線検査(マンモグラフィー)を受けてきたと申告したときだ。この検査は乳房を引き伸ばし、圧迫してX線撮影を行い、乳がんなどの有無を調べる。乳房の組織が放射線に弱いことから、40歳以下の女性にはこの検査を勧めていない。何年かに1回受けたり、代わりに超音波検査を受けたりしてもよい。だが問題は、多くの若い女性会社員が、職場の健康診断で毎年この検査を受けていることだ。

 交通事故の被害者たちによくみられる現象がある。検査費用を加害者の加入する損害保険会社から支払うため、少しでもけがをすればX線検査やCT(コンピュータ断層撮影法)検査をためらいなく受けている。まるで放射線でシャワーを浴びているようなものだ。一部の検査機関は、超精密で高価なサービスだとして、陽電子放出断層撮影(PET-CT)を受けるよう勧めているケースもある。一種の全身CTだ。何ら症状のない人が、がん検診を受けたいとして、PET-CTを受けている。外国の医師たちにこのことを話すと、一様に驚かれる。それだけ多くの放射線を浴びているのだ。

 医師たちはX線写真が動画のように表示される透視装置を見ながら診察を行う。この分野で名高い麻酔科医がテレビに出演し、カメの甲羅のようにひび割れた肌や、黒ずんで硬くなった手を見せた。患者の診察に追われる中で生じた放射線皮膚炎だという。本人にとっては勲章のように思えるかもしれないが、医学的には、放射線から身を守る装備を身に付けず診察を行うという愚かな行為の代償だ。医療従事者が放射線に対し生半可な認識を持っている中、患者たちもまた放射線にさらされることになる。

 ソウル医療院の研究班が、全国の健康診断機関296カ所の放射線被ばく線量を調査したところ、1回の検診につき11年分の放射線を浴びることもあるとの計算結果が出た。国際放射線防護委員会(ICRP)は、1年間の被ばく線量を1ミリシーベルト(mSv)以下とするよう推奨しているが、ソウル医療院の調査では、最大40mSvに達したケースもあった。120年前、ビルヘルム・レントゲンがX線を発見して以来、正確な診断や治療により、数多くの患者の命を救ってきた。だが、過度な放射線への被ばくは、がんを発症する危険性を高めることになる。

 放射線は体内に残ることはないが、被ばくの程度が大きく、回数も多ければ、遺伝子が損傷し、後にがんを発症する危険性が高まる。たばこを吸っている期間が長く、本数も多ければ、肺がんを発症する確率が高まるのと同じだ。レントゲンの母国ドイツでは、放射線検査の際、患者が被ばく量を尋ね、医療従事者が詳しく説明することが医療文化として定着している。韓国でも今や、放射線への被ばくを、自動車の排気ガス規制と同じように重要視し、全ての病院が感染症対策と同程度に被ばく対策を講じなければならない。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者兼論説委員
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