rebuild.fm昨年末の@naoya_ito氏の回を聞きました。
podcastはランニング中に1.5倍速で流して聞けるのが便利なんですが、メモがとれず終わった後にちょっと整理する時間を取らないと「要旨はなんだったのか」が曖昧になり自分に残らない感があるのが悩ましいですね。
例えに使われていたFate/Zero 11話「聖杯問答」が秀逸で、主題はその例と上手く掛け
エンジニアのマネジメントにおける通説
へ疑問符を投げかける内容を展開。
ちなみに「聖杯問答」は超端的に言うと、世代を超えた3人の王が統治の仕方を論じ、民や臣に厚いタイプの王が大いなる野望を追いかけるタイプの王に負ける、という話。
趣旨:サーバント・リーダーの是非
放送を通じた主張が、近年日本のみならずUSも含めた開発現場で良しとされがちな「サーバント・リーダーの是非」。Product Manager論に通ずる話だなと聞いていたが、トータル以下の3点で整理できるかなと思う。
主張(1):
- リーダーシップをとれといわれたとき、人が求めるのはサーバント型な時が多いけど、
- 人事的な問題、とくに人が辞めたい時に彼らができることは少ないよ
主張(2):
- チームが開発に集中するために雑用を引き受け、徳で人を治めるサーバント型リーダーが良いとされているけど、
- 長期的に見るとビジョンを示すリーダータイプのほうが必要とされているよ。
主張(3):
- サーバント型はエンジニアがコーディングに集中できるよう、その他の雑務を引き受けるので仕事をしているように思えるかもしれないが、
- ビジョンを作ることは実はもっとエネルギーのいることだよ。
主張を補佐する語句について見てみよう。
サーバント・リーダーとは
そもそもサーバント・リーダーとは聞き慣れない言葉かもしれない。放送内では以下の様な存在として定義されていた。
- 召使型のリーダー
- プロダクトに自身がコミットするより、開発メンバーのキャリアを導いたり雑務を引き受けてサポートすることをメインとする
- それはマネージャーでは?という声も
- メンバーとの関係も良好に保つことが多く、短期的に良いリーダーと捉えられやすい
- 一方、深刻な「いい兄貴問題」の罠にはまりやすい
良い兄貴問題とは
サーバント・リーダーは結果的に雑務を引受けプロダクトにコミットする時間が少なくなることにより、「メンバーから見ると相談のしやすい兄貴分」にはなれるがプロダクトを長期的な成功に導く上で陥りやすい罠がある。
- 日々目に見えているメンバーの課題を解くことで「仕事している感」が出てしまい、ビジョンを持ちにくい
- メンバーが解決できないような上段の課題に面した時、例えばアーキテクトをどうすればよいか、のような問題に対して解が出せない
- 結果的にメンバーがリーダーにするビジョンの欠落が、長期的な期待値のズレを産む
- また、「関係が良好だがビジョンへの共感がないメンバー」が退職を伝えてきた時、やれることが少ないという問題も。
ビジョンを示すことと細かいタスク、どっちが楽か?
- ビジョンを創ることはエネルギーが必要。たとえばプロダクトが進むべき未来を、制約がない中で決断していくことがProduct Managerには求められるが、これはとてもエネルギーの必要なこと。
- サーバント・リーダーは自己犠牲で見えている課題をやっつける→仕事した気になる→抜け出しにくいというループを抱えやすい。
役割が違う論
- サーバント・リーダーとビジョン型リーダーは役割の違いだから、と分けて考えることも出来る。
- たしかにCTOとVP of Engineeringの関係はビジョン対サーバントという分けになりやすい。
- しかしサーバント・リーダーのような雑務の引受役を、マネジメントにあがろうとするエンジニアが「やりたいと思うか?」。これは重要な問いである。
リーダーにサーバントであることを求めてしまう大衆
- こういった問題をはらみながらも、多くのメンバーというのはリーダーに対し、臣に熱く雑務を引き受けてくれるサーバント型を求めがちといういわばマーケットの要求問題もある。
まとめ
個人的に整理した主張はどれも賛同でき、また自分がそう振る舞おうと考えているポイントに近かった。先日上げた
とは対象的な内容。
これまで「サーバント性はフェーズによって(PMにとって)必要性が変わる」と考えていたが、そうではなく「役割として整理する」という方が個人的にしっくり来る。
とりわけビジョンを創り示すという行為は、そのプロダクトにとっての「未来の当たり前の姿」を定義するということであり、いくら知識を仕入れても、いくら考えても決め切ることの難しい問いだと思っている。その行為のコストは、残念ながら経験者にしか測り判断することが難しい。
にも書いたが、PMは(もちろん妥当性を証明できればそれに越したことがないが)ある点で思い込み・偏執を掲載していく必要があり、その思い込みがビジョンを創る。サーバント・リーダーはある種マネージャーの巨像ではないかと考えている。もちろん必要な人材だと思うのだが、自らの役割がビジョンなのかサーバントなのかを意識する必要がある。
- 作者: ロバート・K・グリーンリーフ,ラリー・C・スピアーズ,金井壽宏,金井真弓
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2008/12/24
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 62回
- この商品を含むブログ (22件) を見る