1月第3週は、投資家の目が原油価格の急落にくぎ付けになった。無理もない。原油価格は今や1バレル30ドルでしかなく、年初から15%も安くなっている。特に中国の混乱が続いていることなどを受けて、エネルギー市場はさらなる困難の到来を示唆しているのだ。
世界経済にどのような地殻変動が生じているかを示すもう一つの兆候を探すなら、バルチック海運指数(BDI、1985年=1000)に目を向けてみるといい。石炭や金属、肥料といった原材料を全世界に運ぶ外航船の運賃の指標である。
通常であれば、この指数が一般の人々の注目を集めることはない。何しろ、資本の流れ――あるいは最新のデジタル機器――で投資家の頭がいっぱいになっている時代に港やコンテナの単調な詳細に目を向けるというのは、いくぶん懐古趣味のような感じもする。
しかし、足元のBDIは原油価格も顔負けの劇的な動きを見せている。ここ数週間一貫して下げてきた指数は1月13日、1985年の集計開始以来初めて400を割り込んだ。昨年の夏には1000を大幅に上回っており、2010年には4000前後だった。従って、石炭やセメント、石油などを海の向こうに送る願望に駆られている人は、少なくとも過去30年間のどの時点よりも安い運賃で実行できるだろう。
これは現代の技術革命の表れにすぎない、と考えられたらどんなにいいだろうか。しかし、海運運賃がこれほど激しく下げている最大の理由は、現代の貿易と世界の経済成長が今年、西側や新興国の金融市場参加者が予想したようなパターン、あるいは以前の好況期に見られたパターンと異なる動きをしているからだ。
■貿易の拡大ペース、急激に鈍る
過去10年間、ギリシャから中国に至る世界中の海運会社がドライバルク船(ばら積み船)の輸送能力を増強してきた。その理由は、資金を低利で借りられたことに求められる。また西側諸国のプライベート・エクイティ・ファンドなどの新規の投資家も、革新的な資金運用手段を探し求め、海運業に参入した。
好況のもう一つの理由は、世界貿易は拡大を続けるとの見方が広まっていたことにある。この見方はつい最近まで、不合理には思われなかった。実際、2008年以前の10年間で世界貿易は平均で年率7%拡大し、その伸び率は世界全体の国内総生産(GDP)成長率を上回っていた。中国などの国々が好景気に沸く一方で、西側諸国の企業が国境を越えるサプライチェーン(供給網)をクモの巣のように構築していったからだ。
しかし、歴史は予想通りに展開するものではない。世界銀行が先日発表した重々しい報告書で論じているように、世界の貿易の拡大ペースはここ数年急激に鈍っており、年3%前後になっている。これでは、世界全体のGDP成長率とほとんど変わらない。おまけに、この減速傾向は今も続いている。
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