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北大・東北大・比政府が共同開発の超小型衛星完成
1月13日 17時54分

北大・東北大・比政府が共同開発の超小型衛星完成
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人工衛星の小型化と高性能化が進むなか、北海道大学と東北大学がフィリピン政府と共同で開発した大きさが50センチほどの「超小型衛星」が完成し、茨城県にあるJAXA筑波宇宙センターで公開されました。フィリピンにとっては初めて開発に携わった衛星で、国土の管理や災害の把握などに活用されることになっています。
公開されたのは大きさがおよそ50センチ、重さがおよそ50キロの超小型衛星で、北海道大学と東北大学がフィリピン政府と共同で開発しました。
この衛星は地上の3メートルの大きさのものを見分ける性能があり、観測した光を詳しく分析することで、そこにどんな植物があるのかまで調べることができます。ことし3月にアメリカのロケットで、高度400キロ付近を飛行している国際宇宙ステーションまで運ばれ早ければ、ことし4月にも日本の実験棟「きぼう」から宇宙空間に放されて、地球を回る軌道に入る予定です。
フィリピンにとっては初めて開発に携わった衛星で、農地の利用状況など国土の管理や、台風や集中豪雨など災害時の被害の把握に活用されることになっています。今回の1号機に続いて、来年には2号機も予定され、開発費用のおよそ8億円は全額をフィリピン政府が負担し、フィリピン大学の大学院の学生ら9人が北海道大学と東北大学に留学して開発を進めてきました。
記者会見した北海道大学の高橋幸弘教授は「発展途上国は、宇宙開発への参加を強く求めていて、超小型衛星ならば手が届く。そうした国々に日本の技術で協力していきたい」と述べました。また、フィリピン科学技術省のロウェナ・ゲバラ事務次官は「超小型衛星を、国として持つことができ、今後宇宙機関も設立する予定で、ことしは画期的な年になる。フィリピンは毎年20以上の台風がくる災害の多い国なので、衛星を防災に活用したい」と述べました。

北大と東北大 計50機打ち上げる構想

北海道大学と東北大学はフィリピンだけでなく、ベトナムやマレーシアなどアジアの8つの国に呼びかけて、合わせて50機の超小型衛星を打ち上げる構想を掲げています。北海道大学と東北大学では、地球を周回する50機の超小型衛星を一緒に運用することで、地球上のあらゆる場所をいつでも撮影できる態勢をつくり、それぞれの国で、国土の管理や災害の監視などに活用してもらおうとしています。

途上国の宇宙開発参加の手段として注目

超小型衛星は以前は性能が低く、大学などによる実験用の打ち上げにとどまっていましたが、最近では電子部品の小型化や高性能化で、十分に実用的な能力を発揮するようになっています。コストが安く開発期間も短いことから、発展途上国が宇宙開発に参加できる手段として注目されています。
超小型衛星の研究をしている九州工業大学によりますと、世界で打ち上げられた重さが50キロ以下の超小型衛星は2012年に22機だったのが、2014年には160機と、7倍以上に増えています。また、50キロ以下の超小型衛星を打ち上げた国や地域は2012年に26だったのが2014年には45に増え、超小型衛星を使った宇宙開発への参加が広がっています。

世界中でビジネスへの活用に注目

超小型衛星を巡ってはコストの安さから世界中でビジネスへの活用に注目が集まり、競争が激しくなっています。超小型衛星で新たなビジネスを立ち上げようという動きはアメリカで最も進んでいて、IT企業「グーグル」は超小型衛星を手がけるベンチャー企業を600億円で買収し、超小型衛星20機余りを打ち上げて、地球上のあらゆる地点を衛星画像で確認できる「グーグルアース」を強化する方針です。
さらに「グーグル」は投資会社とともに「スペースX社」におよそ1200億円を出資し、超小型衛星およそ4000機を打ち上げる計画を支援していて、実現すれば、地球上のあらゆる場所で衛星を使った高速通信の提供ができるようになります。
また、日本でも東京大学から生まれたベンチャー企業の「アクセルスペース」が超小型衛星50機を来年から6年かけて打ち上げる計画で、地球上の多くの場所を定点観測できるようにすることで、例えば農作物の管理システムや物資の輸送の管理システムなど新たなビジネスを起こそうとしています。

課題は宇宙ゴミ

超小型衛星に世界中の注目が集まり、数多くの打ち上げが計画されていることについて、宇宙開発の専門家は国際的なルールがないまま打ち上げが続けば、宇宙ゴミがさらに増え続けることになると課題を指摘しています。
JAXAの衛星開発の元責任者で、日本宇宙フォーラムの常務理事の吉冨進さんは「超小型衛星の寿命は5年から7年ほどで、多数の衛星による態勢を維持しつづけようとすれば、次々に打ち上げなければならなくなる。いま、およそ2万あると言われている“スペースデブリ”=宇宙ゴミがさらに増え続けてしまう。そうなれば、通常の人工衛星を打ち上げる際にも宇宙ゴミに衝突する危険性が増すなど、いろいろと問題がおきるおそれがある」と指摘しています。その上で「地球上の環境問題と同じように世界全体で衛星の打ち上げを規制するような何らかのルールを作る必要がある。ゴミになった衛星の回収をビジネスにしたいという動きもあるが、こうしたビジネスが成り立つようにするためにも統一のルールが必要だ」と話しています。

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