NHK高校講座 地理「ここに注目!ヨーロッパ」(1) 2016.01.15


第二次世界大戦後国力が衰えたイギリスはインドの独立を承認。
歴史と伝統の地…40余りの国におよそ6億人が暮らしています。
その中にはロンドンパリローマなど皆さんの知っている町がいっぱい。
どの町も個性的。
そしてどこへ行っても人類の刻んできた歴史や文化が圧倒的な存在感を放っています。
しかし皆さんヨーロッパの見どころはそれだけではありません。
ヨーロッパは大きく変わりつつあるのです。
EU欧州連合によって…。
中田敦彦です。
ドミニクです。
さあ世界のさまざまな地域に注目していますが今回と次回はヨーロッパです。
ヨーロッパ。
ドミちゃん簡単な質問ですがこの地図で…それは分かりますよ。
ここら辺ですよね。
それは簡単だと思うんですがでは第2問そのうち…えっ…あ〜思いますよね。
そう思いますよね。
ただねそんなもんじゃないんですよ。
こちらご覧下さい。
どん!えっ…えっ!?なんとですね2014年現在28か国も加盟してるんです。
28…すごいヨーロッパがもう1つの国みたいになっちゃってますね。
確かにそうですよね。
今回はですねどんな姿のヨーロッパができつつあるのか見ていこうと思います。
まずはEUの成り立ちから振り返ってみましょう。
原料の調達や製品を売るための市場として植民地を支配し経済を発展させたのです。
更に18世紀後半イギリスから始まった産業革命によって工業化が進み世界をリードする存在となりました。
しかし20世紀に2度の世界大戦が勃発。
第1次世界大戦ではヨーロッパの国同士が争い第2次世界大戦では世界の国を巻き込んで植民地を奪い合いました。
いずれの大戦でも戦場となったヨーロッパ。
犠牲者は2,500万人にも上り経済的にも大きなダメージを負いました。
その後…ヨーロッパの世界における影響力は弱まっていきました。
当時2大勢力となったのが…ヨーロッパ各国は復興のため両国の支援を受けます。
ところがアメリカの支持する自由主義体制とソ連の支持する社会主義体制では政治や経済などの方向性が異なります。
そのアメリカがヨーロッパの西側とソ連が東側と結びついたためヨーロッパの国々は東西に分かれて対立するようになってしまいます。
この対立は実際の戦闘を伴わない事から冷たい戦争冷戦と呼ばれました。
そんな中一部の国々が連携を取り始めます。
最初は……の3国でした。
オランダの正式な国名は…ベルギーネーデルランドルクセンブルクの頭文字を取ってこの3国をベネルクスと呼ぶのですがこの3つの国はかつては1つの地域だったため非常に密接な関係にありました。
その3国が1948年に発足させたのが…これは小さな国が集まる事で経済的に自立し政治的発言力を確保するという重要な意味を持っていました。
そしてこの連携が後のEUに結びついていったのです。
…が設立されました。
その後ヨーロッパ共同体が発足。
次第に加盟国を増やし…。
1993年にはEUが誕生しました。
更に冷戦が終わった事で社会主義だった東ヨーロッパの国々も民主化の道を歩みだしEUに参加。
EU域内ではほとんどの国で国境管理が廃止されて人の移動が自由になり通貨も…2014年には加盟国は28か国に達しEUの人口は5億を超えました。
経済力の面でもEUはアメリカとトップを争うようになったのです。
この20年ぐらいでEUってすごく広がったんですね。
そうですね。
ではEUについて先生に詳しく聞いてみましょう。
加賀美雅弘先生です。
よろしくお願いします。
先生EUの加盟国が増えたきっかけって理由があるんですか?そうですね1989年に冷戦が終わりました。
これによって東ヨーロッパの国々が民主化したんですね。
それまで国内産業が停滞していた政治への不満があふれていた。
そういうところをきっかけにして加盟への動きが活発化したんですね。
なるほど。
以前は東西で対立する国もあったのによくまとまりましたよね。
正直なところ言いますとスムーズじゃないんですよ。
ただ根底にはですね…そういった…なるほど。
戦争をもう起こさないとそういう意識が強かったんですね。
そうですね。
きっと人々は本当にうんざりだったんですよね。
戦争がね。
そうでしょうね。
2009年発効の…それから…そのような形でまるで1つの国家のような体制も取ってるんです。
そうですね。
ほかにも例えば…そんなEUに加盟すると便利な利点実はこんなにたくさんあるんです。
…と先生が取り出したのはEUに加盟するとできる事をまとめたもの。
ドイツからですねオランダに行くのにパスポートなしで移動できるんですね。
すごいですね。
国境が自由に通過できて両替がいらないっていうのは大きいですよね。
そうですね。
お金も共通してますし電気製品の電圧なんかも共通になってます。
フランスのポットをドイツ持ってってそれで使えるっていうそういう事になってますね。
結構…そういうのが均一化されていきますね。
あるいはこういう仕事ですね。
イタリアで取った資格を持ってスウェーデンで…病院でですね例えば看護師で働く事ができる。
そんなふうな事ができるようになりました。
どの国で働くかを選ぶチャンスが増えますよね。
そうですね。
EUが生まれた事による生活の変化はほかにもいろいろありそうですね。
いくつかの国の例を見てみましょう。
ここはフランスとドイツの国境地域。
ライン川に架かる橋は検問が廃止されフランスからドイツへと向かう通勤の車で毎朝混雑しています。
国境地域のフランス人の10人に1人がドイツで働いているといいます。
カルメン・フォクトさんも最近ドイツで新たな職場を見つけました。
国境をまたぐ転職にも許可や届け出の必要はありませんでした。
仕事は電気ケーブルの製造。
賃金はフランスでの同じ仕事に比べて3割増しになりました。
EUの中でもドイツの経済は好調なのです。
そのドイツから週末の朝たくさんの方がバスに乗って出かけた先は…。
オランダのフェンロという町。
ドイツと隣り合ってはいるのですがどうしてわざわざ皆さん国境を越えてやって来たのかと言うと…。
目的は…向かった先はコーヒー売り場。
ドイツでは1袋3ユーロのコーヒーがここではなんと2ユーロなんです。
その差はおよそ140円前後。
これまでドイツではマルクオランダではギルダーで値段が付けられていたためいくら違うのか分かりにくかったのです。
ユーロは買い物まで変えてしまいました。
そのオランダのエンスヘデとドイツのグロナウという国境の町同士を結ぶ鉄道。
全長僅か9キロ。
一度は廃線となっていましたがEUのおかげで20年ぶりに復活しました。
これまで国境地域は国の中央から遠いため経済発展が遅れてきました。
その格差を解消しようと…もう一つEUによる町おこしともいえるユニークな取り組みが行われています。
ドイツのルール地方は豊富な石炭によって製鉄業の町として発展してきました。
しかし石油の時代を迎え衰退が目立つようになりました。
そこでEUはルール地方の中心都市エッセンを2010年の欧州文化首都の一つに指定したのです。
まさにEUによる町おこし。
これによってエッセンにもたくさんの観光客がやって来ました。
小さな町の発展にもEUは力を貸しているのです。
あのEUによる町おこしってすごいいいアイデアですよね。
いいアイデアですね。
欧州文化首都。
大きな組織でもああいう気配りができるっていうのは偉いですよね。
ルール工業地帯っていうんですけどもドイツの産業の中心だった訳ですがああいう場所が衰退してきた。
そういう場所に新しい変化という事で町おこしが今活発に行われてますね。
ほかにも実はさまざまな試みがなされてます。
例えば…それを売りにしてるんですね。
そうですね。
ちょっとご覧下さい。
例えばこれなんですけどもフランスとドイツの国境地帯ここにライン川が流れてますけどもこれをまたいで巡っていくようなルートというのが企画されてるんですね。
赤い線が国境で青いのがルートですね。
そうですね。
こうした試みをやっていく事によってですねそれまではドイツ人はドイツそれからフランス人はフランスといった形で…そんな事が期待されてるんですね。
じゃあつまり…ヨーロッパ愛。
でもそれって意地悪な見方をするとEUがそうしないと国同士仲良くなれないっていう側面もあるんですか?そうですね。
実は…それぞれが…けんかになったら大変ですね。
という訳でいわゆる…内輪になろうよと…。
そういえばあの…えっ…そうですね。
それまでは個人ですからね。
評価されたと?そういう事ですね。
さて続いてはそんなEUによって産業や経済はどう変わったのかある乗り物の例をご覧下さい。
フランス南部の古都…ここで今何が発展しているのかと言うと…。
こちらのエアバス社がその代表。
実はこの町ヨーロッパの航空機産業の拠点なんです。
エアバス社の旅客機は現在…世界のシェアをアメリカのボーイング社と二分しているんです。
しかし1970年の創立当時世界の空はアメリカ製の飛行機に独占されていました。
それに危機感を強めた…EUの中なら物の移動に関税がかからないというメリットを生かして4つの国は機体の製造においても国際分業体制を取っています。
片方だけで長さ15mにもなる主翼。
これはイギリスが担当しています。
垂直尾翼はドイツの垂直尾翼専門の工場で造られフランスに運ばれてきます。
こうして主翼と垂直尾翼が出来ました。
更に水平尾翼はスペイン。
胴体とコックピットはフランスが担当してエアバス社の旅客機は組み立てられるのです。
最後にテスト飛行を繰り返して完成。
こうした国際分業によってアメリカと受注数でトップを争う巨大メーカーが生み出されたのです。
飛行機をいろんな国でバラバラで造ってるとは知らなかったですね。
関税がないから全部組み合わせてヨーロッパで協力して造ってる。
先生これ1つの国で全部やった方が安上がりっていう可能性も考えちゃうんですけどこれはやっぱり国ごとに得意不得意があるんでしょうか?そうですね。
エアバスの場合にはイギリスとドイツそしてスペインフランスそれぞれの企業が得意な部門を作って最後にフランスで組み立てて飛行機という大きな製品にしてるんです。
飛行機ってそれぐらいこう大きなものなんですね。
1社で1つの国でパッて造る…そういう事ではないと。
ないですね。
そんな簡単な話じゃないんですね。
EUにすごい向いてるんじゃないですかね。
そういう事ですね。
これがEUのやろうとしてる事でエアバス社ってのはまさにそれを体現したものだというふうに言っていいと思うんですね。
その連携でヨーロッパは大きく変わった訳ですね。
先生今日はどうもありがとうございました。
さあ次回はEUの中の光と影地域格差について調べていきます。
では次回も世界中のあんな事…。
こんな事…。
(2人)いっぱい知っちゃおう!20世紀ヨーロッパの国々は冷戦によって東西で対立していました。
しかしベネルクス三国が連携を取ったのをきっかけに共同体が生まれEUの誕生に結びつきました。
EUができた事で人々の生活は変わりました。
国境を越えて買い物をするのも働くのも自由。
小さな鉄道も復活しました。
欧州文化首都という町おこしのような取り組みも続いています。
物の移動に関税がかからない事で産業が発展しました。
2016/01/15(金) 14:40〜15:00
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 地理「ここに注目!ヨーロッパ」(1)[字]

人・モノ・情報が地球規模で行き交う現代。国や地域を越え、多様な社会や文化を理解し合うことが不可欠。“世界の今”を読み解く「地理」は、未来を切り開く力となる。

詳細情報
番組内容
それぞれの国や地域ごとに掘り下げて現代世界を考察する。自然環境や民族、文化、産業、経済など、さまざまな視点で学ぼう! 「ここに注目!ヨーロッパ(1)〜EUによる地域統合〜」(1)拡大するEU (2)域内の人々の生活の変化 (3)発展する産業
出演者
【講師】東京学芸大学教授…加賀美雅弘,【出演】中田敦彦,ドミニク,【語り】安元洋貴

ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
バラエティ – その他
趣味/教育 – 大学生・受験

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